思春期の頃に銀英伝にハマると痛い子になるよね… 「卿は嘘をついている」
「卿は嘘をついている」 とは、自分が信じたくないもの、受け入れたくないものを 「嘘」 だと決めつけて、批判するためのフレーズです。 転じて、単に信憑性が薄く信じがたい話、デマっぽいうわさ話や、ちょっとした耳新しい話を聞いた時の合いの手 (「マジで?」 と同じような) として使う場合もあります。
元ネタ は、累計1,500万部を売り上げた人気SF小説 (ライトノベル) および本編だけで110話もの アニメ が制作された 「銀河英雄伝説」(銀英伝/ 田中芳樹/ 1982年11月〜) の作中表現からとなります。
思春期の頃に ハマる と 中二病 をこじらせ 痛い 人になると評判の銀英伝ですが (とはいえ宇宙戦描写の ツッコミどころ満載さ はともかく、思想的な訓練とか多様な物の見方とか発想とか、子供から思春期の頃に触れるべき 作品 としては、ちょっとこれ以上の作品はないような気もしますが)、作中の帝国側描写で頻出する二人称の 卿 (けい) とともに、使いやすいこの 「卿は嘘をついている」 とのフレーズは、ノリ の良い友人を持つ特定年代の おたく や 腐女子 の 界隈 では、一度くらいは聞いたことがあるセリフだといって良いでしょう。
元ネタは銀英伝 第26話 「さらば、遠き日」 から
この言葉が登場したのは 銀英伝 第26話 「さらば、遠き日」 で、銀河帝国側の 主人公 であるラインハルト・フォン・ローエングラムのセリフからとなります。
物語 では、帝国内で敵対するリップシュタット盟約による貴族連合軍を打ち破り、その根拠地であったガイエスブルグ要塞に乗り込んだラインハルトが、捕虜となった連合軍将兵の引見と、すでに 死亡 していた連合軍盟主ブラウンシュヴァイク公の遺体を検分。 その際、ブラウンシュヴァイク公の腹心で、遺体に付き添っていたアンスバッハが、主君の仇を取るためロケットランチャーによりラインハルト暗殺を企てます。
これを阻止するため、ラインハルトの 幼なじみ にして11年来の無二の親友、盟友、腹心でもあるジークフリート・キルヒアイスが身を呈して攻撃を妨害。 しかしその結果、アンスバッハの反撃によって胸と首に深手を負ってしまいます。 ラインハルトは息も絶え絶えのキルヒアイスの手を取り最後の会話を交わしますが、その直後、キルヒアイスは死亡。
呆然としキルヒアイスの名を叫び続けるラインハルトにミッターマイヤーが歩み寄り、「だめです、亡くなりました」「この上は、せめて安らかに…」 と告げたところ、ラインハルトは怒りの表情でミッターマイヤーを睨みつけ 「嘘をつくな、ミッターマイヤー…卿は嘘をついている」「キルヒアイスが、私をおいて先に死ぬわけはないんだ」 と、これをはねつけます。 この 「嘘をつくな、ミッターマイヤー…卿は嘘をついている」 が、直接の元ネタとなります。
キルヒアイスとオーベルシュタイン以外の提督は何をしとるのか!
長い長い銀河英雄伝説のなかでも、このエピソードは序盤最大の見せ場、物語のターニングポイントのもっとも大きなものの一つでしょう。 日頃は傲然としているラインハルトがキルヒアイスの死を受け入れることができずに取り乱す数少ないシーンは印象に強く残り、銀英伝 ファン の間では語り草ともなっています。
ほとんど無意識に身を呈してラインハルトの命を救おうとしたのがキルヒアイスと謀臣のオーベルシュタイン (ラインハルトの前に立ちふさがった) の2人だけだったのも、後々の物語を考えると何やら象徴的ですが、ちょっとキルヒアイスさん早く死にすぎだろという感じがします。 まぁそれはそれとして、こうして同人用語の基礎知識の項目が、また1ページ…。