同人用語の基礎知識

有害図書

トップ 同人用語 項目一覧 有害図書

本だけでなく、コンピュータソフトその他も含まれます

 「有害図書」 とは、18禁 本とほぼ同義なのですが、ただしいわゆる 有害コミック のような本やコミックに 限定 した言葉ではなく、写真集や小説などといった一般書籍類の他、ビデオテープやコンピュータソフトなど、一定の要素を含んだほとんど全ての著作物に網羅的に使用可能な 概念・言葉となっているのが 「有害図書」 の考え方です。 「不健全図書」 と呼ぶ場合もあります。

 各地方自治体が定める 青少年健全育成条例 によって規定され、それらの作品に対して青少年の健全育成の為に販売その他の制限を設けることが出来ます。 制限とは、具体的には青少年の目に触れさせてはいけない (販売・配布・閲覧の禁止)…と云う事で、それに対する法的 (強制力を伴う) な命令を行うことも出来ます。

 前提となる 「図書」の具体的規定についてですが、多くの条例では、書籍である図書はもちろん、雑誌、絵画ポスター 類、写真、映画用フイルム、レコード並びに録音録画された磁気テープ、磁気ディスク、光ティスク及び光磁気ディスク並びにこれらに類するもの全てを 「図書」「図書等」と包括的に規定しています。 過去にホラービデオやゲームソフトに対する有害図書指定に関する裁判があり、判決では合憲とされています。

 どのような作品が 「有害図書」 にあたるのかは、各地方自治体によって基準が細かく定められていて、原則的には学識者など第三者によって構成される審議会が作品ごとに該当するか否かを検討し、最終的に決定する事になっています。 基準はおおむね次の通りですが、ただし局部の直接描写は国により規制されていますので (刑法第175条)、それは前提として除かれている場合がほとんどです。

 なお出版社側が自主的に成年向け作品だとして区別している場合は、原則として未成年者へ販売されることがなくなるため、改めて有害図書指定されることはありません。 あくまで一般書籍・全年齢向け作品として販売されている図書の中のふさわしくない図書を、一般・全年齢向け図書から排除するのが目的だからです。

 当初は男性向けのアダルトな作品が指定されることが多かったのですが、その後男性向けエロ漫画雑誌・グラビア誌などは 青年コミックマーク といった 自主規制 により ゾーニング が行われるようになり、ほぼ有害図書指定がされることはなくなりました。 一方でこれらの自主規制措置をほとんど行っていない女性向け成年コミック (BL など) は全年齢向けで販売され続けており、近年有害図書指定される作品の多くが女性向け作品になりつつあります。

有害図書となる表現、及び玩具類の規定

 姿 態 行 為
全裸、半裸又はこれらに近い状態での卑猥な姿態性的な行為
大腿部を開いた姿態自慰の行為
陰部又はでん部を誇示した姿態男女間の性行為
性行為を連想させる姿態同性間の性行為
排せつの姿態強姦その他の陵辱行為
緊縛された姿態変態性欲に基づく行為
 有害玩具
性器の形状又はこれに著しく類似する形状をしている器具類
性器を包み込み、又は性器に挿入する構造を有する器具類

規制する気になれば、何でも規制ができる内容に

 …正直こうして見ると、マンガ なんかはほとんどどれかに引っかかりそうですね… (^-^;)

 だいたい “ 全裸、半裸又はこれらに近い状態での卑猥な姿態” が有害だとするなら、言葉通りに読めば大手のマンガ少年誌・青年誌がこぞって巻頭に掲載しているグラビアアイドルの水着姿の実写写真なんて、もうまったくダメになってしまいます。

健全育成  実際は、上記の要素を複数持っていて、かつ客観的に見て、相当以上性的興味や興奮をかき立てる事を目的としたと思われる作品でなければ、そう簡単に指定や命令を受けるような事はありません。

 しかし過去の指定例・処分例を見ると、ちょっと首を傾げざるを得ない事案もあったりして、規制する側の気まぐれ、運・不運 が大きく作用しそうで、そう安心したり信頼したり出来る条例でもない気がしますね。

 ちなみにこの 「有害図書」、別にその指定を受けたからと云って、一切の 頒布 が認められなくなる訳ではなく、文字通り 「青少年」 にのみ、販売や閲覧を行ってはならない…とされるだけです。

 たいていの条例には 「年齢確認」 や 「過失規定」 の内容があり、それらを満たしていれば、販売や配布、展示、閲覧を行うことが出来ます (具体的には、これらの作品を年齢の確認なしに行ってはならない、またたとえ知らないで販売した場合でも、その不可知性を持って責任の回避は認められない…といった感じの内容です)。

 ただ問題なのは、例えば 同人イベント などのように青少年を含め不特定多数が出入りする催し物に対し、「確実な年齢確認が行えない」 との理由で開催そのものを実質的に拒否 (自治体管理の イベント会場 等の貸し出しを拒否)する場合がある事です。 大きい事例では、コミックマーケット幕張メッセ で開催され、継続して利用しようと契約まで交わして準備していたところ、メッセを管轄する千葉県側から一方的に貸し出しを拒否された…なんてこともありました。

2006年〜2007年にかけ、開催を自粛する同人イベントなども

 また2006年から2007年にかけ、猥褻的 なマンガやコミック、同人誌 に対する締め付け圧力が上昇し、東産貿 (都立産業貿易センター) や 大田区産業プラザ PiO でアダルト同人イベントのいくつかが中止、もしくは 主催者 側の自主規制の形で開催を見合わせるなど、入場制限のかかる 「アダルト限定のイベント」 であっても年々状況は厳しくなっているようです。

 という訳で、「有害図書」 問題も、自作品が一方的に 「有害」 図書呼ばわりされる不名誉さもさる事ながら、会場の貸し出し拒否などではイベントや同人の活動そのものに直接大きく関わる指定事項だけに、かなりデリケートで難しい問題と云えるでしょうね。

 なお青少年健全育成条例は、その項目で詳しく解説しています (こちら です)。 併せてご覧頂けると幸せです。

Twitterこのエントリーをはてなブックマークに追加FacebookLINEGoogle+

関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック

(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年8月22日)
破線
トップページへページの先頭へ

トップ
 旧同人用語メイン
 同人用語辞典 収録語 項目一覧表
 同人おたく年表
 同人関連リンク
 付録・資料
サイトについて
書籍版について
リンク・引用・転載について
閲覧環境
サイトマップ
のんびりやってます
フッター