空気感やムードに騙されがち? 「雰囲気」
「雰囲気」(ふんいき) とは、その場に漂う空気や集う人たちが作り出す気分やムード、風情やたたずまいといった意味の言葉です。 元々は地球を取り巻く空気・大気を意味する言葉で、江戸時代に蘭学におけるオランダ語の訳語として日本で使われるようになり、その後明治時代となって、現在のような 「その場の空気」「人が持つたたずまい」 をも指すようになっています。
ネット などでは、「ふんいき」 と 「ふいんき」 を巡る 誤読文字 の代表みたいな扱いもされますが (体育館の 「たいくかん」 のように、読みの音だけ聞くと勘違いしやすい)、言葉の ニュアンス 自体も微妙にスライドしています。
実態にそぐわないムード優先の意味で使われる 「雰囲気」
意味がスライドしたもっとも顕著な例は、「あくまで空気感やムードがそう見せているだけで、実態はそうではない」 という意味が強められた使われ方でしょう。 例えば 「雰囲気イケメン」 と云えば、実際はたいして顔が整っているわけでも イケメン でもないけれど、「全体的なムードがイケメンっぽさを醸し出している」「周囲が何となくイケメンだと 認知 している」 という意味になります。
これはイケメンぶっている勘違い野郎を罵倒する ネガティブ な意味で使うこともあれば、身にまとうムードが良い、容姿に難があってもイケメンポジを狙えるかもとの、肯定的・ポジティブ な使われ方もされることがある、ちょっと独特な言い回しになります (まぁ罵倒・揶揄のニュアンスの方が強いですが)。
他にも 「雰囲気○○」 はアレンジされたものがたくさんあります。 例えば雰囲気イケメンと同じような 「雰囲気美人」 とか 「雰囲気可愛い」、ビジネスとしての実態が薄かったり業績もしょぼいのに市場の期待感だけで盛り上がるベンチャー企業や株式上場 (IPO) などを 「雰囲気スタートアップ」 や 「雰囲気上場」 と呼んだりします。
こうした使われ方はネット以前にもあり、べつに ネットスラング というわけではありません。 しかし何かとその場の空気に流されがちな人が少なくない中、あからさまな批判や罵倒に聞こえないながらも中身のなさを指摘しやすい言葉として、重宝されている部分はありそうです。