究極的には 「反女性」 とも呼べる罵倒語 「スイーツ(笑)」
「スイーツ(笑)」 とは、狭義には、テレビ番組や女性週刊誌などの流行情報、グルメ情報や、女性をターゲットにした企業や広告代理店の広告宣伝にいいように振り回される 「流行にばかり目が行く薄っぺらくて中身のない女性」 を、批判的・侮蔑的にあらわす罵倒語です。 「スイーツ(笑)女子」「スイーツ女」 などとも呼びます。
またそうした女性がもっぱら興味を持っているだろうと思われる 「ファッション(おしゃれ)」「グルメ」「芸能ゴシップ」「恋愛」 を浮ついた些細なこと、どうでも良いくだらないものとして蔑視的に見たり、こうしたことに興味があったり敏感だったりする女性をことさらにおだてて持ち上げるマスコミや世の中の風潮を、「軽薄だ」 として批判したり嘲笑する言葉でもあります。
内容的に重複する部分もあるのか、しばしば ゆとり とか、メディア・リテラシー がない、との意味で使われるようにもなった 情弱 などとも、複合して扱われます。 またこうした傾向を持つ人の特性を スイーツ脳 としてさらに明確化したり、他の言葉に接頭して形容詞として使う場合もあります (例えば若い女性の起こす交通事故を スイーツアタック などと呼びます)。
女性週刊誌などの 「スイーツ特集」 を嘲笑する中で…「スイーツ(笑)」
スイーツ(笑)って訳ではありません… |
言葉としての 元ネタ は、女性週刊誌などで頻繁に 「スイーツ特集」 などが組まれ、やれどこのホテルのケーキが美味しいだの、やれどこの洋菓子店のお菓子が人気だのが、さも重要で大切な情報かのごとく取り扱われていたことに始まります。
「お菓子」 は 「お菓子」 のままでいいし、「和菓子」 や 「甘味」「デザート」 は 「和菓子」「甘味」「デザート」 のままでよいのに、ことさらに 「スイーツ」 などと目新しい言葉で呼ぶのを哂うような ニュアンス があり、こうした広告代理店などの戦略にまんまと乗せられ、ヤラセの情報やニュースをありがたがる一部の女性を、ネット の 掲示板 上などで 「スイーツ」 ではなく、「スイーツ(笑)」 と、(笑) を語尾につけて表記するようになりました。
この 「(笑)」 は、「プッ」 と吹き出してしまうような、冷ややかな笑いの表現となっています。 またキーボードの打ち間違いをわざとやって、「スイーツ()笑」 なんて書いたりもします。
流行のキーワードの語尾などに 「(笑)」 をつけて揶揄するような使い方はかなり昔からあり、パソコン通信 の時代から存在します。 「(笑)」 という表現は、雑誌のインタビューなどで発言者が笑いながらしゃべるさまを表すものが基本的にルーツですので (ドリフなどのお笑い番組で、ギャグの時に流れる笑い声を模したものもあり、語源の説が2つあるのではなく、語源そのものが2つある感じです)、前後の文脈を踏まえれば、これは正しい使い方とも云えます。
2002年頃から、一部掲示板などで 「スイーツ(笑)」 が散発的に登場
これを、「スイーツ」 と最初に組み合わせたのは誰なのか…は、ちょっと不明ですが、2001年から2002年頃には散発的に方々で出始め、2003年には一部ネットユーザの間で 「今日はスイーツ(笑)を食べてみました」 といった、本来の意味を踏まえた上で、さらに使い方をアレンジまでしたバージョンがすでにあちこちで広く使われるようになっています。
その後もジワジワとネットを中心に広まり、2006年頃に 「ロハス」 とか 「セレブ」「自分へのご褒美」「愛され上手」「夏色コスメ」「ふわモテカール」「小悪魔メイク」「キラキラ小物」「和スイーツ」 などといった類似の 「広告代理店が購買意欲を煽るために造語した若い女性向けの陳腐なキーワード、キャッチフレーズ」 をまとめて揶揄する空気の中で、一気に ネットスラング として 認知 されて行きました。
同時に、これら 「女性向け消費活動喚起」 のためと思われる他の流行キーワードにも、末尾に 「(笑)」 をつけて嘲笑するような使い方が広まることになりました。
「ガッシ!ボカッ!スイーツ(笑)」 携帯小説を模した文章で 「スイーツ(笑)」 がブレイク
とりわけ 「携帯小説」 の陳腐なストーリーや文体を模したコピペ素材が 2007年に登場、流行し、その末尾にある 「ガシッ!ボカッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)」 がこの言葉を初めて見た人の印象に強く残ることとなり、大ブレイク。 2007年10月27日に掲示板 2ちゃんねる のガイドライン板に 「スイーツ(笑)のガイドライン」 スレッド も立ち、改変バージョンが次々登場。 一躍大流行語となりました。
同年12月14日には、「ネット流行語大賞2007」 の 「銀賞」 に選出されています。
大ブレイクの発端となった携帯小説風コピペ素材文章
───アタシの名前はアイ。心に傷を負った女子高生。モテカワスリムで恋愛体質の愛されガール♪
アタシがつるんでる友達は 援助交際 をやってるミキ、学校にナイショで
キャバクラで働いてるユウカ。訳あって不良グループの一員になってるアキナ。
友達がいてもやっぱり学校はタイクツ。今日もミキとちょっとしたことで口喧嘩になった。
女のコ同士だとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆そんな時アタシは一人で繁華街を歩くことにしている。
がんばった自分へのご褒美ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」・・。そんなことをつぶやきながらしつこいキャッチを軽くあしらう。
「カノジョー、ちょっと話聞いてくれない?」どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
キャッチの男はカッコイイけどなんか薄っぺらくてキライだ。もっと等身大のアタシを見て欲しい。
「すいません・・。」・・・またか、とセレブなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、
チラっとキャッチの男の顔を見た。
「・・!!」
・・・チガウ・・・今までの男とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを
駆け巡った・・。「・・(カッコイイ・・!!・・これって運命・・?)」
男はホストだった。連れていかれてレイプされた。「キャーやめて!」ドラッグをきめた。
「ガシッ!ボカッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)
…で、「スイーツ(笑)」 って、実在するの?
スイーツ(笑)って訳ではありません… |
流行語としてメディアなどマスコミがこの言葉を紹介する場合には、こうした言葉をネット上で面白がって使っているのは、おおむね女性と縁のない男性 (いわゆる 非モテ) ということになっているようです。
女性と恋愛をしたことがなかったり、その経験が少ない、あるいはこっぴどく振られた、避けられている、童貞 です…といったモテない男性が、いつしか女性そのものを憎悪、敵視するようになり、マスコミから持てはやされる流行に敏感な若い女性をことさらに侮蔑対象とし、攻撃している…といった図式です。
中には 「女性を中身のない薄っぺらい無価値なものにすることで、女性から相手にされない自分を 「相手が悪いのだ」 として正当化している」「恋愛弱者のやり場のない憎悪、「ルサンチマン」(Ressentiment/ 弱者が強者に対して覚える嫉妬や怨念) の発露だ」「単なる 「ミソジニー(Misogyny/ 女性嫌悪) だ」 などと、したり顔・どや顔 で分析してみせる評論家や自称 リア充 の人もいます。
こうした分析は、ちょっと皮相的にすぎる感じがします。 マスコミがありもしない流行とやらを、メディアの力を使って無理やり流行に仕立て上げるなんてのは、ちょっとでも健全な懐疑心のある大人ならわかっている事ですし、テレビやら雑誌やらに群がる 「スイーツ(笑)」 とやらの女性の多くが、取材用に用意されたマスコミの 「仕込み」 であるのも、予想されていると思います (中には、スイーツや流行に敏感なステキな私を演出したい人もいるでしょうが)。
また掲示板などのネットの世界では、発言している人の性別が男なのか女なのか、本当のところは分からないものです (まぁさすがに 「スイーツ(笑)」 を使っているのは男性が多いとは思いますが)。
マスコミなどの広告宣伝を見透かして、あえて 「スイーツ(笑)」 を哂う
スイーツ(笑)イメージ |
もちろん 「スイーツ(笑)」 という言葉を使っているのが女性とコミュニケーションをとる機会がない男性で、テレビや雑誌などのメディアに登場し、マスコミの誘導する方向へと流れる女性を、「世の中の女はあんなやつらばかりなんだ」 と逆の意味でマスコミに誘導され、本気で思っているなんてケースも中にはあるかも知れません。
しかし多くの人は、マスコミの幼稚で使い古された広告宣伝戦略を見透かして、冷ややかに見ているケースが多いのではないでしょうか。 インターネット の時代となり、ネットユーザの半数以上が女性ですし、実際は当の若い女性が、「こんな女、いねーよ」「私はこの人たちとは違う」 と面白がって使っているケースも、意外に多いのではないかと推察しています。
ともあれ、「スイーツ(笑)」 を発端にマスコミ造語の流行語などの末尾に 「(笑)」 をつけて嘲笑するパターンは、その後もどんどんキーワードを増やしながら、ネット上の流行として広まっているようです。 とりわけ、「スイーツ」 とは対極にあると思われるオタク系女性 (いわゆる 腐女子) を指す言葉、「オタージョ」(テレビ局が流行らそうとして流行らなかった言葉) や、歴女 (レキジョ/ 戦国武将など歴史上の人物や歴史の好きな女性) などを、「オタージョ(笑)」「レキージョ(笑)」 なんて揶揄するケースもとても増えています。
ところで本来の 「Sweet」 の意味は
ちなみに、英語本来の意味で云うと、「甘い」 という意味の 「Sweet」 をおやつ、デザートの意味で使う場合には、「駄菓子」 といったような意味になり、高級品でおしゃれなケーキやデザートを 「スイーツ」 と呼ぶのは、厳密には誤った使い方になります。 まぁマスコミ主導の和風英語の典型でしょうか。
筆者 個人としては、「コンビニスイーツ」 や 「野菜スイーツ」(ベジスイーツ) くらいはまだ分かりますが、「和スイーツ」 とか 「ホームメイド スイーツ」 は、ちょっとイヤ〜ンな感じです。 「和菓子」「手作りお菓子」 の方が、どう考えても言葉として格式というか高級感があり、かつおいしそうだと思うんですが…。