同人用語の基礎知識

中古/ 非処女

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俺は新品なのに、彼女が中古なのは許せない…的な 「中古女」

 「中古」 とは、異性と性体験のある女性、すなわち 「非処女」 のことです。

 現実に存在する人物、例えば同じ学校やクラス、ゼミ、職場やアルバイト先のあの子とか、テレビタレント、アイドル、声優や コスプレイヤー などで、男性経験のある人が 「中古女だ」 とされるのはもちろん、アニメマンガゲーム などに登場する創作上の人物でも、男性経験のある キャラクター (その相手が 主人公 の男性の場合は、読者 の代表、分身なので 「自分への行為」 として容認されます) はしばしばこう呼ばれます。

 他には、「傷物」 や 「使用済」「貫通」「貫通済」 などとも呼びます。 また 「他人に食われた」 という意味で、「残飯」 と呼ぶ場合もあります。

永遠に汚れることのない純潔…理屈では割り切れない 「処女信仰」

 一般的に男性は昔から 「処女」 を珍重し、また 「処女信仰」 とでも呼ぶべき処女に高い付加価値を見出す考え方をする人が比較的多いものです。 貞操とか清純、純潔、清楚を 尊い ものとするのも、基本的にはそうした考えと同じものでしょう。 とりわけ近年にあっては、女性経験のない男性、すなわち 童貞 の人たちの間に 「処女」「純真無垢」 を何よりも尊いものとする考えが深く浸透しつつあるようです。

 これは旧来の宗教的、保守的で道徳的な 「純潔主義」「潔癖主義」 と同時に、「俺は新品 (童貞) なのに相手が中古なのは許せない」 という、分かるような分からないような妙に説得力や正当性のあるっぽい考えを元にしているケースもあり、そう主張する人の半分は ノリ やシャレにしても、残り半分くらいは時として結構本気が入っていたりもします。 場所によっては、純潔を教義の一部とする宗教団体の思想を持つ人の影響もあるかもしれません。

 また怪しげな 「テレゴニー」(Telegony/ 先夫遺伝や残存遺伝、感応遺伝などと呼ばれる、「最初の男性の 精液 (精子) がその女性のその後の別の男性との妊娠出産にも影響を与える) 現象を頭では 「非科学的なオカルトだ」 と否定しながらも、どこか心にひっかけている人もいて、「遺伝子的に自分の子だと思っても、どこか昔の彼氏の性質を一部に受け継ぐ可能性があるんじゃないか」「やっぱり初物じゃないと」 なんて思ってる人も多いようです。

 ここらは、自分が性的経験を経て 非童貞 となると 「お互い様」 となって全く気にしなくなったりもするものです。 「処女にこだわるなんて狭量で気持悪い」「膜のあるなし以外をしっかり見るべきではないか」 とする女性もいますが、その女性側だって男性側に 「理想の男性像」 などで無茶で理不尽、分不相応な要求をするわけですし、こちらもお互い様でしょう。

 また 「処女にしろ童貞にしろ、ある程度の年齢になったら、もう新品というより不良在庫だろ」 ってな意見もあったりもするんですが、童貞段階では 「女に気軽に声をかけ、すぐにヤッてしまう ナンパ な男(ヤリチン/ チャラ男)」 に対する嫉妬やねたみ、そうした男に簡単に体を委ねる女性に対する蔑視や 「なぜ俺はだめなんだ」 という憎悪などがない交ぜになって (そうでない人もいますが)、かなり激しい侮蔑・罵倒対象になりがちとなっています。

「アイドル」 などの 「三次女」 に対する怒り

 なお男性経験が多そうな女性、いかにも非処女でしかも見た目がふしだらっぽく見える女性に対しては、公衆便所 とか ビッチ、ヤリマン など、口を極めて罵る場合も少なくありません。 人気アイドルや声優に 「彼氏がいるかも知れない」 なんて疑惑が立つと、握手会にわざわざ参加して、アイドル本人に対して無言で握手を拒絶したりといった直接的な行動をとる場合もあります。

 こうした 「自分の好きなアイドルの熱愛発覚」 などで落胆し、怒りを覚えたり攻撃的になるのは、何も男性 ファン ばかりでなく女性のアイドルファンにも多いのですが、男性の場合は 「ファンを裏切った」「彼女に裏切られた」 と感じるケースが多いような気がするのに対し、女性ファンの場合は、「相手の女に取られた」「ファンからアイドルを盗んだ、奪った」 と感じるケースが多いようです。

 熱愛発覚で男性ファンはそのアイドルに怒りをぶつけ、女性ファンは自分の好きなアイドルが裏切ったとは受け取らず、相手の女性を攻撃する傾向があるように感じます。 まぁ人によって違うのでしょうけれど。

創作物の登場人物に対する 「中古」 の判定

 例えば女性の登場人物のうち、メインとなる ヒロイン が男性の主人公に身をゆだねるのには、あまり抵抗がないケースが多いようです (それも嫌だというファンも大勢いますが)。 これは、主人公が読者である自分自身の分身となっているからで、しかもその間にしっかりとして揺ぎない があれば、問題はありません。 またサブキャラの女性 (サブヒロイン) も、他のサブキャラと 「一途な愛」 の末に結ばれるのなら、それも評価こそされ、一方的に批判されるケースは少ないものです。

 「人妻」 や独り身の 「未亡人」 などをことさらに 「非処女だ」「中古女だ」 と叩くことが少ないのも (むしろ肯定的に扱われる場合が多い)、結婚 して相手と人生を歩もうとしている、亡くなった夫への強い愛が感じられるからでしょう。

 なにより大切なのは 「一途な愛」。 汁がでまくりの 鬼畜系 のエロマンガならともかく、読者がストーリーやキャラの心情に入り込んで見るような作品では、この 「一途な愛」 があるのかないのかが、重要視されるようです。 これは読者側の、「せめて創作の世界では、一途な純愛を見せてくれ」 という、素朴で素直な男性ファンの感情の発露なのかも知れません。 現実の世界のように彼氏をとっかえひっかえしているような女性を、金を払ってまで創作物でわざわざ見たくないわけですね。

 一方、強烈に嫌悪感を喚起してしまうものには、「処女かと思ったら非処女だった」 なんてのが、ストーリーが展開して行く中で見えた場合でしょうか。 それまで 「男の人なんか知りません」 と初々しく恥じらっていたのに、実は元彼氏がいて非処女だった…なんてのが分かり突然目の前に 「大人の恋愛」「肉体関係」 が迫ってくる。 「俺を今まで 騙し ていたのか!」 とばかり、怒りのボルテージもあがるようです。

「下級生2」 の衝撃内容にファンら激昂 「中古じゃないか!」

「下級生2」
斬新すぎるヒロイン像で
2004年に 「中古女問題」 を
巻き起こした「下級生2」

 この種の 「中古女」「非処女」 で大きな話題となったものには、美少女ゲーム 「下級生2」(エルフ/ 2004年8月27日発売) の登場人物、「柴門たまき」 や、マンガ 「かんなぎ」(武梨えり/ Comic REX/ 一迅社刊/ 2006年1月号〜) の 「ナギ」 などがいます。

 どちらもメインヒロインで、プレイヤー や読者の分身である主人公の男がいながら、他に男がいたり、過去に男がいて心を奪われてしまっていたりします。 しかもその相手が イケメンリア充 だったりもします。 さらに最初からそれがわかっているならともかく、物語の途中からそれが発覚するのは、「○○ちゃんに裏切られた」 とショックを受ける熱心なファンも多くなるのでしょう。

 もちろん単に物語を盛り上げるために恋のライバルが現れたり、ヒロインの一時の気の迷いが後の主人公とのハッピーエンドを盛り上げる伏線になっている場合もあり、それだけならばここまでの拒否反応は起こらなかったでしょう。 また 「かんなぎ」 については、直接的な描写はありませんでした。

 しかし多くの熱心なファン (いわゆる おたく な人たち) から見て自分の分身と思えないイケメン男性が、主人公を差し置いてヒロインに慕われるという シチュエーション、何より 「やってしまった」「二度と取り返しのつかない純潔を失った」(あるいはその疑いがある) のが、後戻り不可の厳然とした 設定 としてファンを打ちのめしたのだと思います。 中には 「膜などどうでもよい」 というファンもいますが、その 「膜」 を喪失するに至る描写 (キャラの性格設定や、物語のプロット) に怒りを覚えてはいるようです。

 実在の人物と違い、創作上の人物の過去や性的経験の有無などは、かなりの部分、作者 次第です。 そしてそれを、商品として売っている。 「処女だという触れ込み (触れ込みがなくても、そうだと思うような状況) で商品を売っているくせに、実は中古だった」 というのが、「不良品をだまして売っている」 と感じるファンもいたのでしょう。

 「下級生2」「かんなぎ」 のいずれも、熱心なファンが失望しソフトの入った DVD やマンガの単行本を真っ二つにしたり切り刻んだりし、その様子を写真に撮って ネットアップロード して怒りの表明をしたり、「購入した商品の処女膜が破損しており不良品だから返品します」 などと、発売元メーカーや作者に向けてそれを送りつけるようなこととなり、大きな騒ぎとなりました。

メインヒロインが非処女…ネットで噴出する 「中古問題」

「かんなぎ」
中古問題」噴出の直後、著者の
病気による休載が、いろいろな
憶測を呼んだ 「かんなぎ」

 ストーリーに意外性を持たせるのは悪いことではありませんし、どれもこれも似たような純愛物語では作品の幅も広がりません。

 現実世界の恋愛ではこうした 「知らなかったが、知ってショック」「裏切られた」 なんてシチュエーションはいくらでもありますし、困難を乗り越えて愛を成就する物語に、恋敵の存在は不可欠です (エッチするかしないかはともかく)。

 また 「下級生2」 のようなタイプの恋愛 SLG に関しては、ユーザの側も複数の登場キャラクターを 「同時攻略」 しているので、どっちもどっちといえるかも知れません (同時攻略できないゲームも多いですが)。

 しかしそれを理想の世界、創作上の世界でやる必要はない、「金を払って、なんで不愉快にならなくてはならないのか」「ヒロインの主人公に対する裏切りは、作者の、読者に対する裏切りだ」「最初からそれとわかるような伏線を提示して欲しい…なぜ後だしジャンケンするのか」「生臭い修羅場など見たくもない」「萌え作品にストーリー性など求めてない」「ちくしょう! ぼ…ぼくの真心を裏切ったな!!1」「絶対に許さない、絶対にだ」 との悲痛な声にも、全面的肯定はできないまでも、ある程度理解できる点もあります。

 また創作キャラに対する 「中古問題」 が大騒ぎになるきっかけでもあった 「下級生2」 はとにかく異色だらけの内容、ヒロイン像となっていました (登場するヒロインの半分が非処女で、主人公と 幼なじみ であるメインヒロインの柴門たまきは本人が意識してるかどうかはともかく実質二股をかけていて、それがバレて遊び人風の彼氏に振られ、キープ していた主人公に転がり込むというすさまじさ、しかもこのルートの攻略しかできなかった)。

 この時に 「萌えやそれに近いポジションの創作作品のメインヒロインに、中古はご法度」 のようなムードが、強く作られる原因ともなりました。 それ以前には、マルチエンディング形式のゲームでのバッドエンドならともかく、こうした禁忌を犯した作品はほとんどありませんでした。

ヒロインの多様性と、ヒロインとしての存在価値、プロ意識

 考えて見れば、一昔前のアイドルタレントなどは、プロダクションやファンらに作り上げられたイメージをプロとして全力で守り、俗に 「おしっこもうんこもおならもしない」 なんて云われるように、偶像として理想のアイドル像、理想の異性像を堅持してファンの期待に応えていました。

 それがいつしか 「どこにでもいる普通の女の子っぽいアイドル」「生身のアイドル」「等身大のアイドル」「お泊り恋愛もするアイドル」 なんて感じで、どんどん一般化。 「アイドルだって普通の女の子」 が当たり前になっています。 全てが創作の アニメマンガ などでも、ことさらにリアリティを求めたり、やたらと意表をついたりショッキングな展開を行う作品が増えています。

 景気も悪い、晩婚化で恋愛にも縁がない、そもそも生身の異性に興味がない…なんて人が増えている世の中で、「空想上の世界でくらい、夢を見させてくれよ」「女性のフリーセックスを肯定的に煽るような作品は欲しくない」 ってのは、ある種の悲痛な叫びなのかも知れません。 たかが 「膜」、されど 「膜」 なんでしょう。

 こうした人たちを 「処女厨」 とか 「膜厨」 と罵倒するケースも多いのですが、何かの宗教の教義で 「姦淫するな」 とされているのを盲信している人はともかく、自らの性格や好み、人生・社会経験や周りの親しい人たちから受けた影響などから自然に 「童貞や処女は尊い」 と思うようになるのは、その人の価値観としては全く 「正しい」 でしょう。 その正しさは人によってそれぞれ違いますが、どちらか片方を一方的に 「誤っている」 と考えるのは乱暴というものです。

 意見や考えがもっとも強く衝突し、一方もしくは双方が悩むことになるのは、「童貞や処女と非童貞や非処女との恋愛、あるいは結婚」 なのでしょうが、どちらか片方が一方的に悪くて 「幼い」 わけでも、「汚れている」 わけでもないのは理解して、乗り越える努力は双方がすべきでしょう。

 なお人によっては、「体の処女性より、心の処女性が大切だ」 と考える人もいます。 そうした人にとっては、「自分以外の異性に心を許した」 という過去が巨大な壁となって立ち塞がります。 そうした人にとっては、肉体関係が過去にあったとしても、それがレイプなど本人の心の問題ではない 「事故」 として存在する限りにおいて、何の問題もない、処女は失われていないと考える場合もあります。 無理やりエッチさせられた事実より、本人の意思で行ったキスの方が 「許せない」 となります。

スクウェア3大悪女と云えば

 「ライブ・ア・ライブ」(1994年9月2日発売) の「王女アリシア」「バハムートラグーン」(1996年2月9日発売) の 「王女ヨヨ」「ファイナルファンタジーVIII」(1999年2月11日発売) の 「リノア・ハーティリー/ Rinoa Heartilly」 を、俗にスクウェア3大悪女と呼びます。

 これらは 「中古」 だの 「非処女」 だのとは直接の関係がありませんが、主人公を裏切ったり恋愛問題で自分勝手だったりと、強烈な印象を残すこととなっています。 いずれもストーリーにどんでん返しの面白みがあり、またヒロインとしては異色のキャラ造形に新鮮味があり、評価する声が強い一方、「ヨヨだけは許せん…」 なんてトラウマを持っている人も多いようです。

 まぁ主人公に自分の名前、ヒロインにクラスメイトで片思いの好きな女の子の名前などをつけているプレイヤーですと、その精神ストレスは大きなものがあったのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2007年5月15日)
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