笑ったり泣いたり感動したり教えられたり 「物語」
「物語」 とは、物を語ること、人の言動や経験、感情、思想などを、時間の流れに沿って順に一部始終を語る形で表現したものです。 ストーリー (Story) やナラティブ (Narrative) の日本語訳でもあり、おおむね同じ意味で用いられますが、区別した使われ方がされることもあります。 一般的な物語は、主人公 や 脇役 といった登場人物とその周囲の情景や 環境、出来事や事件を織り交ぜながら、それを語る (創る) 作者 のメッセージや テーマ を伝えるためのものでしょう。
マンガ や アニメ、小説や ラノベ などのそれが真っ先に思い浮かびますが、神話や伝説、叙事詩、童話、説話、あるいは史実や実話と架空の創作話などなど、さまざまな形態を含む幅の広い 概念 であり、それなりに起承転結のあるあらゆる話や話術そのものを含めることもあります。 単に時系列に沿った事実の羅列は記録であっても物語ではないといった認識もされますが、そこに物語を感じる人がいれば、それはもう物語なのかもしれません。
人と物語はある意味で一心同体
物語の起源は古代の伝承にさかのぼり、口承で語り継がれた伝承や神話、預言などが人々の知的好奇心を喚起するとともに、世界観 や文化や価値観を育んできました。 人は自らの経験や感情によってものごとを理解したり深く共感したりするので、誰かの目を通じて描かれる物語を味わいながら 感情移入 し、疑似的 な自分の経験や感情として追体験して 共有 し、自分とは異なる考え方や守られるべき倫理や道徳、人生の教訓や生活の知恵を受け取ったり広める役割を果たします。 例えば子供向けの童話では、善悪の判断や努力の大切さ、友情の 尊さ が描かれることが多く、こうした物語を通じて価値観が教育されます。
一方で物語には、その物語が生まれたり広まった時代や文化を反映する鏡や、それを文字などの形で後世に伝えるタイムカプセルの役割もあります。 異なる地域や民族、時代の物語には、その社会の歴史、習慣、哲学や知恵が織り込まれており、読者 や聴衆はこれを通じて異なる視点や思考法を学ぶことができます。 さらに物語は、人と人とのコミュニケーションの手段としても機能し、共感を生み出すことで人間関係を深める役割があります。
時代が下り物語が コンテンツ として 商業 になると、純粋に娯楽や エンタメ に振り切った物語も登場します。 人々を楽しませるために様々な技巧が生み出され、物語に触れている間は楽しかったり感動できても、その後に何も残らないものもあります。 とはいえどんな物語にも語る側の価値観に基づくメッセージやテーマが必ず含まれ、またそれは作者が物語に込めたものそれだけでなく、見るものの感じ方によって強化されたり逆に全く異なる 解釈 がされたり、新しい何かが創造されたりします。
人は感情の動物とはよく聞く話ですが、単なる偶然、単なる物理現象や記号や数字の羅列であっても、見る人はそこに人間的なものを感じたり、しばしば物語を受け取ったりします。 例えば山崩れが起こって山頂から大小の落石があったとして、人によっては山が怒っていると感じたり、落石の様子から複数の石同士の争いや競争を感じるかもしれません。 擬人化 とは、しばしば物語化でもあります。 物語やストーリー、ナラティブの存在は、人が人である証拠だったり根拠にも等しいものであり、いくつかの類型化された物語の形はあれど、人々の興味や好奇心を刺激し続ける存在である以上、これからもより深く発展していくものなのでしょう。
なお物語に近接する言葉として、「筋書き」(物語の核心となる部分、主要な出来事の流れが要約されたもの)、「シナリオ」(物語の詳細な展開や構成を記したもので、セリフや場面設定なども含むもの、「脚本」 とも)、「プロット」(物語の筋や構想のこと)、「粗筋」(物語の大まかな概要)、「ドラマ」(人の動きから転じた演劇や舞台のこと、さらに転じて人と人とが織りなす物語や葛藤のこと) などがあります。 これらも物語・ストーリー・ナラティブなどと同様、何となく同じような意味で使われることもありますが、創作用語とか演劇用語として厳密に使い分ける人が多い印象です。