アパートの薄っぺらい壁からあれもこれも聞こえてくる…? 「レオパレス伝説」
「レオパレス伝説」 とは、大手不動産会社 「株式会社レオパレス21」 が展開するアパートの建築請負・賃貸事業で提供されるアパートに入居した住人が体験したという様々な逸話・伝聞・都市伝説を、ネット の場で箇条書きにして一つにまとめた コピペ 用素材のことです。 もっぱら 2ちゃんねる などの 掲示板 で作成・拡散 されており、「良さそうだと思って入居したら大変な目に遭った」 という 「笑える話」 の範疇で使われていました。
内容で最も多いのは、「壁が薄い」 ことによる隣人の生活音・音漏れにまつわる逸話の数々です。 レオパレス21に限らず、アパートなどの共同住宅に住んでいてもっとも不快感や生活上の不便さを感じるポイントの一つがこうした音漏れ問題であり (壁ドン されたり、したくなったり)、またその原因が 「薄い壁 = 安普請や手抜き工事が連想される」 ことから、面白おかしくまとめられながらも、入居者の静かな怒りも感じられる内容となっていました。
また同社が共同住宅市場において大きな シェア を持っていること、著名人や人気タレントを起用した大規模なテレビ CM を展開して知名度が極めて高かったこともあり、掲示板などでは不動産関連のニュースが流れたり、3月4月などの引っ越し・進学・就職シーズンなどになるとこぞってこのコピペが貼られ、また徐々に加筆修正されバージョンアップされる状態となっていました。
これは誰でも一度くらいは名前を聞いたことがある有名企業・有名サービスだという点もさることながら、同社サービスに限らずどんな共同住宅に住まう人にとっても切実で身につまされる問題である遮音性能に関する逸話がウィットに富んだ笑える文章となっている点が、完成度の高い読み物としての魅力を持っていたからでしょう。
こうした有名企業や有名人の逸話をまとめた 「〇〇伝説」 には数多くのものがあり、中には アンチ や ひょっとしたら商売敵と思われる人が恣意的にまとめたり誹謗中傷的な内容を含んだ、風評被害を招きかねない悪質なものもあります。 しかし触れられている内容が単に面白いだけでなく文章や読み物としても レベル が高い場合には、人気・定番 のコピペとなったりガイドラインで集合知により洗練され、その中の一部が独立した ネットスラング として広がるケースもあります。
「レオパレス伝説」 のコピペ文章
※語り継がれ増え続け、事実上会社が一部認めたレオパレス伝説
・エアコンが勝手に切れる
・チャイムを鳴らされたと思って玄関を開けたら、4軒隣の部屋だった
・チャイムが聞こえ今度こそはと思ったけど、やっぱり隣の部屋だった
・チャイムを鳴らしたら住人全員が出てきた
・ティッシュを取る音が聞こえてくるのは当たり前、携帯のポチポチが聞こえることも
・爪切りの音も聞こえる
・納豆をかき混ぜる音も
・壁ドンしたら壁に 穴 が開いた
・というか、穴が開いたあとも開くまえと聞こえてくる音は変わらなかった
・壁に画鋲をさしたら隣の部屋から悲鳴が聞こえた
・隣2部屋を借り、「これで防音ばっちりだ」と思ったが、さらにその向こうの部屋の音が聞こえてきた
・右の隣の部屋の住人が屁をこいたら、左の部屋の住人が壁ドンしてきた
・すかしっ屁の音が聞こえる、というか臭いもする
・地震だと思ったら、隣の住人が部屋の中を歩いてるだけだった
・スピードラーニングを聞いていたらその棟に住んでる人が全員英語ペラペラになった
・訪問販売が来ると全員が居留守を使った
・朝6時に目覚まし時計のアラームを掛けておいたら朝6時に全室住人が起きた
・だけど家賃6万
・業績悪化でさらに壁が薄くなる
・将来的には壁がなくなる可能性も
・屋根裏にあるはずの防火・防音壁は既にない
・隣の部屋でテレビのチャンネルを変えれば自分の部屋も変わってしまう
・床と壁の隙間が大きすぎて、サワガニが入ってきた
施工不備問題の発覚で 「レオパレス伝説」 が大きな注目を集める
冒頭の 「エアコンが勝手に切れる」 については、2002年から地球温暖化対策として3時間自動停止機能を持たせたエアコン設備を実際に取り付けてあり、住んだことのある人なら 「そうだそうだ」 と納得のいくものでした。 しかしそれ以外の内容の多くは真偽不明や明らかな ネタ・都市伝説といった感じで、「一部は本当にありそうだ」(実際レオパレス21に限らず隣の生活音が駄々洩れの安アパートは結構多い) とは思いつつも、そのあまりの内容に 「誇張されすぎ」「盛りすぎ」 との話もありました。
しかしその後、2018年3月29日から4月17日にかけて、アパートのオーナらによる告発によって施工不備問題が発覚。 建築基準法上で定められている、遮音性能や耐火性能にかかわる界壁 (各住戸の間を区切る壁) がないなどの問題が次々とメディアなどでも指摘される騒ぎに。 同社は告発の一部を認め、4月27日には全ての対象物件において確認調査を行なった上で、補修工事を行うと発表しました。 その後 「ガイアの夜明け」(テレビ東京) による2度にわたる特集報道では、同社の経営手法であるサブリース契約への問題提起の他、アパートの構造や施工・品質自体にも大きな問題があるとの指摘が改めてされ、実際に壁がないのとほとんど同様の遮音性能しかなかったケースも紹介されました。
こうした状況を踏まえ、これまではあくまで 「ネタ」「噂」 の範疇を超えていなかった 「レオパレス伝説」 に強い信憑性が与えられたこと、また関連ニュースが報道されるたびにネットで何度も話題となるなど 炎上・祭り の状況となり、「レオパレス伝説」 の存在感が高まることとなりました。





