あなたは眠くな〜る眠くな〜る…身体が重くな〜る… 「催眠術」
「催眠術」 あるいは単に 「催眠」 とは、人や動物に対して暗示をかけて精神的な変化や肉体的な変化を促すこと、さらにその状態から別の暗示にもかかりやすい特別な精神状態にすることです。 催眠 (眠りに誘う) というように、対象を半眠半覚・夢うつつの状態にして操りやすくするわけですね。 一般的に催眠術をかける人を術者や施術者、かけられる人を被験者や被術者と呼びますが、両者が一体化した自己暗示のように、自分自身に向けて個人的に行われるものもあります。
よくある方法では、錘や五円玉を糸で吊った振り子状の道具やローソク・ライターの火などを用意し、被験者の目の前でそれを振って意識を集中させ、暗示にかかりやすい特殊な意識・精神状態に導きます。 あるいは被験者に術者が寄り添い、身体をゆっくり揺らすなどしてリラックスさせます。 その後術者が 「あなたは眠くなる」「〇〇したくなる」 といった指示を与え、被験者はその指示通りの行動を取るようになります。 その際、本人の意識がない (無意識) あるいは極端に薄れている中で指示に従うこともあれば、意識が 覚醒 していて指示に抗うつもりでもあるのに意識とは裏腹に体がそのように動いたり、意識そのものも変化させられることがあります。 術の解除は 「手を叩いたら目が覚めます」 との掛け声とともにパンと叩いて終わりです。
これらを用いて被験者の普段は隠れている無意識の中の意識、心の奥底の深層心理や心理的な悩みを発見したり改善したり、あるいは術者の意のままに操ることができるとされます。 うち前者の深層心理に働きかけるものは催眠療法、その原因が過去にある場合は心の中の時間を遡って行う退行催眠、ある種の エンタメ や興行として行う後者のそれを舞台催眠などと呼んだりします。
で、催眠術ってほんとにあるの?
人の心理と云ったものはまだ解明されておらず、何をしたらどうなるのかもさほどつまびらかになっていません。 エンタメとしての舞台催眠などはヤラセやインチキが疑われますし、一般的にはいわゆる催眠術と呼ばれるものの大半が、心理学的には偽物だと否定されているといって良いでしょう。 テレビ番組などでは定期的に催眠術ブームも起こりますが、本物だと支持する専門家は多くありません。
とはいえ他人にかけるにせよ自分で自己暗示や瞑想にふけるにせよ、ストレスで心が疲弊している時、精神的に不安定な時期にちょっとしたきっかけで心理状態が変化する経験は多くの人が持っていますし、「睡眠術ってやっぱあるんだ」 と感じられるようなケースもなくはありません。 寝起きが悪い人の寝ぼけた状態とか医療現場における麻酔術中のせん妄状態、あるいは集団で行う こっくりさんなどもそうですが、正常な判断ができない状態での暗示や思い込みなどが人の心理に及ぼす影響は個人差があるうえに未知数なので、実在するにせよしないにせよ、遊び半分に行ったり誰かに勧めるのは絶対にやめましょう。
ちなみに 筆者 は、催眠術を信じている人に対してはプラセボ効果程度の効果はあるのかなとは思いますが、テレビでやっているようなオカルトじみた催眠術は全く信用していません。 一方で人の心など状況次第でどうにでもなってしまう恐ろしさは感じていて、時間をかけて暗示を刷り込んで行動をコントロールしたり、極度の疲労やら精神的ストレスを利用して一時的に操ることもできそうだとは感じています。 とくに施術者と被験者の間に強い信頼関係があったり、被験者側に何らかの知的・認知的 な特性があった場合は、その可能性は高まるでしょう。 単にテレビの催眠術ショーのように、掛け声で一瞬にして催眠状態になったり解除されたりがないと思っているだけです。
薬物による人格破壊や電気ショックによるマインドコントロール、洗脳などは過去の事件や研究結果などから存在しているのは間違いなく、催眠術と暗示、洗脳や自己啓発 (もっというと教育とか 呪い とか) との厳密な区別もつけづらいでしょう。 親から毎日毎日 「お前は〇〇だ」 と云われ続けた子供が本当にそのような人になることだってあります。 人を操ろうとする人が何をゲートウェイ (入り口) に利用してどのように近づいてくるかがわからない以上、催眠にせよ自己啓発にせよ瞑想やヨガにせよ、心のあれこれを医療関係者以外の人に委ねるのは避けた方が良いと思います。 自分だけでなく家族や周囲の人全てを不幸にしてしまいます。
創作物における催眠術や、誰でも他人の意識を操れる催眠アプリとかも
現実の催眠術はともかく、マンガ や アニメ、ゲーム といった創作物においては、ある種の超能力や魔力、他人を言いなりにできる便利な 設定 としてもよく使われるでしょう。 とくに エロ な ジャンル では、異性を言いなりにしたい、性的に好き勝手に扱いたいといった願望を満たすものとして、媚薬や惚れ薬 と同様によく使われるものでもあります。
また純粋な催眠術ではなく、意識を外部コントロールする機械や道具といった形で催眠を扱うこともあります。 機械ならスマホの形で提示される 催眠アプリ みたいな形になったり、道具なら人を操れる魔力の宿った道具などがありがちです。 うち催眠アプリについては、携帯電話やスマホ (スマートフォン) の普及により、それだけで一つのジャンルになるほどの存在感を持っています。 また意識を操るだけでなく、記憶を操る、時間を操るといった他のバリエーションや、その組み合わせなどもあります。





