21世紀はバーチャルの時代になるのか… 「バーチャル」
「バーチャル」(Virtual) とは 「仮想」 のこと、すなわち、事実ではないけれど仮に存在するかのように考えること、あるいはそう感じられることです。 元々英語にある表現で、事実上の・実質上の・同じような・人工的なといった言葉となりますが、日本での使われ方は、文字通り 「仮定の想像」 といった意味となります。
20世紀前半、「バーチャルリアリティ」(Virtual Reality/ VR) という言葉が登場します。 この言葉自体は1920年代にヨーロッパの前衛芸術として広がったシュルレアリスム運動の中、フランスの詩人アントナン・アルトーが造語したものですが、その後 「VR の父」 と呼ばれるコンピュータ技術者ジャロン・ラニアーによって緩用されコンピュータ用語として定着。 それが日本に入ってくる中で、「バーチャル ≒ 仮想」 といった認識で、おおむね1990年代あたりから使われるようになっています。
ところで SF作品などを通じて、今日の VR 的な存在やコンピュータの 概念 はそのずっと前から知られてはいました。 しかし当初は 「バーチャル」 や 「仮想」 といった言葉は使われておらず、「電子」「電脳」「サイバー」「疑似」「架空」 あるいは 「3D」「立体」「ホログラフィ」 といった言葉で表されていました (それぞれの意味や使い方はかなりバラバラで恣意的なものでしたが)。
「Virtual」 の日本語訳である 「仮想」 それ自体も以前から存在し、例えば外交軍事の世界で 「仮想敵国」 といった使われ方をしていました。 「バーチャル ≒ コンピュータ上の仮想」 といったくくりがされ広く使われるようになったのは個人向けのコンピュータが登場し普及し始めて以降で、コンピュータ時代に初めて使われ、また定着した新しい言葉だと云っても良いでしょう。
コンピュータが身近になり、バーチャルな世界も急接近
なおコンピュータが独立したコンピュータだという認識の元で広く一般の人たちの手に渡ったのは ゲーム の世界からでしたが、とりわけ任天堂から1983年7月15日に発売された家庭用ゲーム機 「ファミリーコンピュータ」(ファミコン/ Family Computer) は大ヒット。 当時は前後して電子楽器やテクノ音楽なども登場し、「遠い未来」 と思われていた 21世紀まであとわずかという空気も手伝って、「もうすぐ未来の世界がやってくる」 ような高揚感、そしてテクノロジーとコンピュータの万能感がありました。 一般人よりわずかに早く、趣味 としてコンピュータというかその前身のようなマイコンを使っていた おたく な人たちの期待感も膨らむ一方でした。
バーチャルや VR という言葉や概念もおおむね好意的、かついずれ実現するのが当たり前のような認識で、「未来を先取りするキーワード」 といった捉え方が、一般の子供から大人まで素朴にされていたと云って良いでしょう。 1990年代にはバーチャルや仮想といった言葉や概念はある種のブームとなり、それを題材にした様々な作品が登場したり、製品として 「バーチャルボーイ」(VIRTUAL BOY/ 任天堂/ 1995年7月21日) といったゲーム機も発売。 ほぼ同時期に パソ通 の普及、その後 インターネット も広がり、仮想空間の世界が一気に広がることになります。