「続きはCMの後で」…すらウザいのに、ましてや最終回が…「あのね商法」
「あのね商法」 とは、テレビ放送されたシリーズの アニメ 番組などの最終話や、最終話近辺の数話のみを意図的に放送せず、DVD 販売などでのみ公開する方式のソフト 供給、商売のことです。 「あのね方式」 とか、「あのね販売方式」 などとも呼ばれます。 つまり 「この続きは、DVDを買って見てね!」 という訳です。
元ネタ としては、2006年1月11日〜2006年3月29日にかけテレビ東京系 (TXN) で放送された全13話のアニメ 「かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜」(月刊コミック電撃大王/ メディアワークス/ かしまし製作委員会/ スタジオ雲雀/ あかほりさとる・桂遊生丸/ 中西伸彰) の第12話での 主人公、大佛はずむの最後のセリフ、「あのね…」 の 「あのね」 に由来します。
全13話のうち、12話のみ放送、そして 「あのね」
第13話が収録された 「かしまし」 〜ガール・ミーツ・ガール〜 7巻 |
このシリーズアニメ 「かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜」 は、全体で13話の物語でしたが、テレビで放映されたのはこの12話までで、最終回となる第13話は放送されず、「OVA」 のDVDを買って見てください…というような販促を行いました。
しかし放送終了と同時に ファン らが 「続きは金出して見ろってか!」 と憤慨。 「あのね」 で引っ張って終わったことから 「あのね商法」 とネーミングされ、掲示板 2ちゃんねる のアニメ関係の板などで ネガティブ な意味で広まることとなりました。
実際は 「未完のまま尻切れトンボ」 で終わった訳ではなく、ストーリー的には一定の結末、それも過去の話の流れから納得の行く結末を見ての放送終了となっていました。 通常なら、これだけをもってそこまで叩かれる状態ではありませんでした。
しかしかねてから 「続きはCMの後で」 的な放送スタイルが視聴者から 「うざい」 と嫌われていたことや、肝心の続きのDVDが発売されるまでにブランクがあったこと (13話収録DVD 「かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜 7」 の発売は2006年10月27日で、実に7ヶ月後)、放送終了時に熱心なファンには続きが非常に気になる終わり方だったこともあり、否定的な言葉として使われるようになりました。 とりわけ同時期放映の 「IGPX」 との 「コラボ 効果」(後述) が逆鱗に触れた原因でもあったようです。
アニメ 「かしまし」×「IGPX」 のコンボで 「あのね商法」 大騒動に
アニメなどの物語途中での終了と云えば、例えば視聴率が振るわなかったり、内容にクレームがつくなどして途中で打ち切りになってしまうケースがあります (最終4話が未放送となった1980年〜1981年の 「伝説巨神イデオン」 など、ただし完結の形はとった)。
この時に、やむなく続きをDVDや映画で発売・発表すると云うのは、ファンにとってはとてもありがたく、またアニメ制作者側の作品に対する自負や心意気、愛情、ファンへの配慮を感じられ嬉しいものです。 また物語がきちんと完結した後に、人気を受けて続編がDVDのみで販売されたり、後日談や番外編や 外伝 などを劇場版などの形で公開するパターンもよく見かけます。
その点で云えば、説明不足や配慮不足はあったものの、形式的には 「あのね商法」 も突出して悪質なものだったとも思えないのですが、ほぼ同じ時期 (2005年10月11日〜2006年3月29日) にテレビ朝日系列で放映されていた 「IGPX」(Immortal Grand Prix/ Production I.G×Cartoon Network) が、同じく全26話のうち24話だけ放映し、最終回を含む残り2話をDVDでのみ公開としていたことで (こっちはかなり中途半端な終わり方でした)、「今後はこんな形の放送が増えるのか」 という危機感が一気に高まり、相乗効果をもたらし騒動となったようです。
また後に、伝聞の形で番組スタッフの 「最初から途中で終わることを 告知 すべきでないかと考えていた」 との声が ネット に伝わったり、「利益第一主義の制作上層がそれを却下した」 との情報も漏れ、ファン不在、作品ないがしろ、金になればよいのか的な反発を招くこととなってしまいました。 セルDVDのみで、レンタルされることがなかったのもイメージを悪化させたようです (「IGPX」 は、後にアニメ専門チャンネル、カートゥーン ネットワークで放送)。
両作品に共通の企業が加わっていたこともあり、名称上は 「あのね」 が付き、直接 「かしまし」 を批判するような言葉となっていますが、一連の騒動や流れを全て含んだ、「こういった形態での コンテンツ 販売」 に対するファンの拒否反応を示す言葉として考えるのが妥当な用語となっています。
年々厳しさを増すアニメ制作環境の問題も
一方で、かつてはテレビ局がスポンサーから広告料を受け取り制作していた多くのアニメが、今は逆にアニメ制作会社がテレビ局にお金を払い放送 枠 を買って 「30分のCM」 のような形でアニメを放送しているという現実もあります。
お布施グッズ と呼ばれる関連商品や、DVDの販売による利益を最初から見込まないと、そもそもアニメの制作費が捻出できないという厳しい現実もあり、どのような形でアニメ制作と番組提供をするのが良いのか、試行錯誤している部分もあります。 あまりにあざとい商売丸出しのやり方もファンとしては納得ができないでしょうが、しかしお金がなければアニメそのものの制作もできなくなってしまいます。
動画共有サイト によって深刻化するコンテンツ保護の問題や、業界内の不明朗なお金の動き、間に入るだけでたくさんのお金を 抜く 代理店などの中間業者の是非を含め、関わる人が知恵を出すべき難しい問題と云えます。
2009年 「仮面ライダーディケイド」 で、「くそ、ディケイドめ…」
2009年1月25日〜8月30日に放映したテレビ朝日の特撮番組、「仮面ライダーディケイド」(DCD) で、最終回の最終決戦の戦闘途中でいきなり番組が終了し、「ライダー大戦は劇場へ」 とのテロップとともに12月に公開される劇場版のディケイド映画への誘導を図る演出が登場。
やり方は 「あのね商法」 と同じですが、視聴者は深夜アニメと違い、多くが子供とその母親。 特異な演出で批判も多いライダーでしたが、特撮オタクだけでなく、鬼女 を敵に回したのは大きかったのか、放送業界で作る第三者機関 「放送倫理・番組向上機構」(BPO) には苦情が殺到。 審議にかけられることとなり、同年10月21日にテレビ朝日側が 「適切でなかった」 と同機構に報告。 また29日の定例記者会見に臨んだテレビ朝日の早河洋社長は、「表現方法として不適切だった」 との謝罪を 公式 に行うこととなりました。