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ブラインドタッチ

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キーボードを見ずにタイピング、作業効率が上がる 「ブラインドタッチ」

 「ブラインドタッチ」(Blind Touch) とは、パソコンなどでキーボードを使った入力を行う際に、キーボード表面の文字表示を目で見ずに指先の感覚だけで行うことです。

 指先の感覚だけで自由に打鍵できるということはキーボードの配列を体が覚えているということになりますし、通常はホームポジション (「F/ は」 は左手人差し指、「J/ ま」 は右手人差し指といったように、キーボードの決まったキーに決まった指を置くこと) を意識した指の配置となっていることから10本の指全てを使うことができるでしょう。 また当然ながら視線もディスプレイモニタに固定したままで入力結果の確認も同時にできることになります。 これらが相乗し、一般に 「素早く正確な入力ができる方法」 とされています。

 習得は難しくありませんが、パソコンやキーボードに不慣れな人から見ると何やら 「すごいこと」 をしているように見えたりもして、良くも悪くもある種の達人や パソコンの大先生 のようなイメージを持たれるケースもあります。 逆に目で見て入力する方法は、しばしば人差し指の1本だけを使うことから、「一本指打法」(野球で一本足打法によってホームラン世界記録を樹立した王貞治さんに由来) と呼ぶ場合が多かったものです。 こちらは指の動きがたどたどしかったり、視線がキーボードとモニタをせわしなく頻繁に行き来することとなり、何やら初心者っぽいイメージで見られるケースが多いようです。

 ちなみにブラインドタッチという言葉は英語ではなく、いわゆる和製英語の俗語の一つなのですが、「ブラインド」 に 「盲目」 といった ニュアンス があるため、欧米で使われている 「タッチタイピング」(Touch typing) への言い換えが広められたこともあります (後述します)。

ブラインドタッチでなくても、早くて正確ならどんな入力でも大丈夫

 キーボードは入力するための単なる道具なので、「こうしなくてはならない」 という絶対的な決まりがあるわけではありません。 ブラインドタッチでも一本指打法でも、他の方法と比べてより早く正確に入力できればそれがその人にとっての正解です。 一般的にはブラインドタッチが早くて正確な入力に適している人が多いというだけです。

 かな入力とローマ字入力の違いとか、辞書変換の最適化や 予測変換 機能の活用の有無、親指シフトなど特殊な入力ができるキーボードの導入などブラインド以外の要素もたくさんあります。 中には手指が不自由で足入力とか 音声入力 しかできない人だっているでしょう。 また一本指打法やその他自己流の方法によって信じられない速度で入力できる人も少なくなく、要は慣れの問題なのでどれが優れていてどれが劣っているわけではない点は、押さえておきたいポイントです。

 そもそも 趣味 でたまにパソコンを利用する程度なら、入力速度がまったく問題にならない場合だってあるでしょうし、携帯電話やスマホの普及によって入力デバイスも多様化し、ポケベル打ち (3タッチ入力) やケータイ打ち (トグル入力)、フリック入力がメインの人だっています。 もちろんそれらの入力方法でテンキーを使い、通常のキーボード打ちと何ら遜色ない速度・精度の人も大勢います。 スマホの音声入力も精度が上がって、日常連絡程度ならそれだけで済ませている人も多いでしょう。

 一方、ブラインドタッチは指の感覚や体が覚えたキー配置に強く依存するため、入力 環境 が変わると途端にやりにくく効率が落ちる傾向もあります。 一般に広く使われているキーボードはフルサイズと呼ばれる決まった大きさでキーの並びが QWERTY配列 のものが多いのですが、それより小さいキーボードや変形したものもありますし、ノートパソコンなどは機種ごとにサイズや細かいキーの配置などが異なります。

キーボードの代表的なキー配列である QWERTY配列 の例
キーボードの代表的なキー配列である QWERTY配列 の例

 また Windows パソコンと Mac パソコンでは一部のキー配置自体が異なりますし、キーボードの構造にも指の感触が異なるメンブレン方式とかメカニカル方式など、いくつかの種類があります。 ただしこうした不慣れな環境への変化に伴う使いにくさはそれ以外の入力方法でもありますから、ブラインドタッチ特有の弱点とまでは云えないでしょう。

 なおほとんどのキー操作をブラインドで行えるけれど、普段あまり使わないキーだけは見ないと打てないという人もいます (例えば数字とか記号とか機能キーとかその人の使い方による)。 その場合は 「なんちゃってブラインドタッチ」 とか 「半ブラインドタッチ」 などと呼ぶ場合もあるようです。

ブラインドタッチの習得方法とは…?

 ブラインドタッチの習得については、さほど 難易度 は高くない印象です。 ただしキーボードを目で見て打つ習慣がつくと、それが癖になってブラインドタッチに移行するのが面倒になるとの話はよく聞きます。 趣味であれ仕事であれブラインドタッチでキーボードを使いたいと思うなら、一本指打法の癖がつく前に覚えてしまうのが早いでしょう。 現在はネット上にタイピング練習用のテキストや素材がたくさんありますから、これらを利用するのが近道でしょう。

 筆者 の体験で云えば、当初ワープロ専用機 (SHARP の書院) でキーボードを見ながら一本指打法で 原稿 などを入力していましたが、指は左右の人差し指の2本だけであまりスピードが上がらずじまいでした。 これでは仕事に使えないと意を決して 「絶対にキーボードを見ない」 と決めてからは2〜3日ほどで目で見ながら入力するのと同等の速度となり、製品についてきたワープロ検定用のテキストなども参考にしつつ、1週間も経つと画面ノールックで全く問題なく扱えるようになりました。

 確かにブラインドタッチに切り替えた直後は、たった一文字入力するだけでも 「間違えて消して間違えて消して」 の繰り返しで恐ろしいほど入力速度が落ちます。 しかしホームポジションを意識して 「A/ ち」「O/ ら」「N/ み」「M/ も」 あるいは 「BS」(Back Space) といった頻繁に使うキーをひとつずつ確実に体に覚えこませ押さえていくことで、打ち間違いも劇的に減って速度が上昇するものです。 気が付けば何の意識もせずに勝手に手が動くようになります。

 その後パソコンを購入し、趣味で パソコン通信 をするようになると、チャット などでの高速入力が求められるようになりました。 さらにその後、他のプレイヤーと文字で意思疎通しながら遊ぶ ネトゲ を始めたり、1990年代にパソコンの普及とともに流行ったいわゆるタイピングゲーム (タイピングの速度を競う ゲーム) で遊んだりと、とても重宝しました。 そもそも文章を書く場合は文面を考える速度に左右されるというか律速されるので、タイピングだけが速くなっても実用上はあまり意味はなかったりもします。

 一般にブラインドタッチができる人は社会人の2〜3割程度という話もありますが、やれば誰でもできるようになりますし、筆者のように 成人済み ではない物覚えが良い子供や若者なら、もっと早く覚えられるかと思います。 キー部分を目で追うといつまで経っても体が覚えないので (習得に時間がかかる人はだいたいこういう人が多い)、マスターしたい方は気軽にチャレンジしてみたらどうでしょうか。

「ブラインドタッチ」 と 「タッチタイピング」

 前述したとおりブラインドタッチは和製英語であり、この言葉が使われるようになる前は、それ以前から普及していたタイプライターの言葉が転用され、目で見て打鍵することを 「視鍵法」 手指の感覚だけで打鍵することを 「触鍵法」 と呼んでいました。 タイプライターにも英文タイプやカナ文字タイプ、和文タイプなどがありますが、特殊な機種を除きほとんどの和文タイプ (邦文タイプライター) はキーボードタイプのものではなく (膨大な文字一覧から必要な文字を選ぶタイプ)、もっぱら英文・カナ文字タイプの打鍵法として使われていたものでした (ちなみに筆者は子供の頃、和文タイプが死ぬほど欲しかったです…)。

 その後ワープロ専用機やパソコンの時代となり、広く一般にキーボードが使われるようになると、堅苦しい 「触鍵法」 という呼び方から横文字の言い回しが好まれるようになり、視覚を利用していない目隠しの打鍵方法としてブラインドという呼称が定着したようです。 これは部屋の窓で目隠しや日差しの遮蔽・採光調整に使われるブラインドカーテンや、先の見通しが悪いカーブ (曲道) を表すブラインドコーナー (カーブ) などと同じ使い方です。

 この言葉は俗称ながら広く普及しましたが、その後 「ブラインドには 「盲目」「めくら」 の意味があって差別的だ」 との意見が出るようになり、欧米で通常使われている 「タッチタイピング」 に言い換えようとの話があちこちで聞かれるようになりました。

 日本でブラインドという言葉は単なる 「目隠し」 の意味で使われるケースが多く、「盲目」「めくら」 といった差別的なニュアンスで使うケースはほとんどないと云って良いでしょう。 前述した日本でもおなじみのブラインドカーテンも、1946年にアメリカのハンター・ダグラス社が 開発・発売した 「べネシャンブラインド」(横型スラット (ルーバー) 式ブラインド) が原型となっていますし、主に企業や商業施設で見られるバーチカルブラインド (縦型ブラインド) もあり、それぞれ海外でも同じようにブラインドと呼ばれています。

 そもそも英語表現には 「Blind spot」(死角) や 「Blind corridor」(行き止まり)「Blind flying」(航空機が夜間などで目視によらず計器で飛行すること) といった言葉もあり、また 「見る目がない」「無計画」「目的がない」「目がくらむ」 といった言い回しでも頻繁に使われる言葉です。 確かに負のニュアンスを持つ言い回しが少なくありませんし、それは差別的な言い回しなのかも知れませんが、ことキーボードの使い方に対してのみ 「タッチタイピングに言い換えよう」 という主張がなぜ出てくるのか、背景や問題のありようについて注意が必要でしょう。

 とはいえその後は事実上の放送禁止用語扱いとなるなど大手メディアで使われるケースも減り、現在は少しずつタッチタイピングが広まり始めているといった状況でしょうか。 それ以外では、もっぱらスポーツの世界で使うようなノールックという言い回しも、使う人は使うかもといった感じです。

タイプライターは目の不自由な友人のために発明されたもの?

 ちなみに文字キーボードや文字タイピングはタイプライターの誕生とともに生まれましたが、タイプライターそのものは様々なタイプのものがあり、タイプライターに必須のカーボン紙ともども、誰が発明者なのかについては諸説あります。

 その中でもそれらしい逸話込みで比較的知られているのは、18世紀から19世紀にかけて活動したイタリアの発明家、ペッレグリーノ・トゥッリ (Pellegrino Turr) のものでしょうか。 逸話によるとこのペッレグリーノさんは、盲目の友人が手紙を書けるよう、タイプライターやカーボン紙を発明したと伝わります。 この逸話にはバージョン違いもあり、著名な詩人の甥が盲目の のために発明した機械をペッレグリーノさんが改良したとの話になっていたり、友人や知人の妹ではなく恋人のためだったとされているものもあります。

 肝心のタイプライターそのものは現存していないものの、友人がタイプライターで作った手紙やタイプライターの使い方を教えるやり取りの痕跡は残っており、タイプライターの定義や話そのものの真偽は不明ながら、後年この逸話を元にした小説なども書かれています。 日本でも 「ちょっといい話」「感動秘話」 といった の話としてネットを中心にいくらか広がっており、「ブラインドタッチは差別」 との主張に対し、この話をベースに 「そもそも目の不自由な人が使うための機械だったのだから差別も何もない」「歴史の修正だ」 との反応が出る場合もあります。

 現在広く使われている手動式タイプライターの原型となり、またパソコン時代にも引き継がれるキーボードのQWERTY配列を生み出したのはアメリカの発明家や印刷業者、機械工らのグループであり、クリストファー・レイサム・ショールズが設計し、その後アメリカのレミントン社が権利を買い取り、ショールズ・アンド・グリデン・タイプライターとして1874年に売り出したものとなっています。 タイプライターという言葉も、この時から使われるようになりました。

 前述の通りタイプライターの起源や発明者については諸説あるものの、少なくとも現行型タイプライターの直接的な発明者については、議論の余地なくこの説が定説だと云って良いでしょう。 またカーボン紙についても、1806年にイギリスの発明家ラルフ・ウェッジウッドの発明によるというのが一般的ではないかと思います。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2006年11月22日)
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