同人とは切っても切れない 「絵」
「絵」(Picture) とは、彩色すること、線や色、明暗などにより描画したもの、視覚的に楽しんだり情報を伝達するための表現、制作物のことです。 図画とも呼びます。
似た言葉に 絵画 もありますが、本来の絵画 (Painting) が絵の具や特定の 画材 によって描画されたもののみを指すのに対し、絵は現代にあってはもっと広い範囲を指す言葉として使われています。 画材や用途によって イラスト (Illustration/ イラストレーション) と呼ぶこともありますが、これも同様に画材や用途で カテゴリ に分けられた絵のひとつになります。
ただし欧米における 「絵」(Picture/ ピクチャー) は、ラテン語の Pictura (彩色) 及びその動詞形 Pingo (彩色する)に由来する言葉なので、同じように彩色する、塗るという意味の絵画 (Painting) との判別は突き詰めるとかなり微妙です。 美術用語としてのカテゴリ分けはあるにせよ、いちいち使い分けている人は今は少ないのかも知れません。
ちなみにイメージ (Image) の場合、これまたラテン語の Imago (実物に似たもの) を源とし、模倣や真似ること、転じて似せて画に描くこととなります。 また写真や単なる図形なども含む言葉となります。
人が集まって楽しむ… 「絵」 っていいですね
一方、漢字の 「絵」 は、偏 (へん) に 「糸」、旁 (つくり) に 「会」 があるように、古代中国で人々が集まって糸をよりあい画や模様を作って遊んでいたのが元になっているので、西洋と東洋 (日本) における厳密な意味での 「絵」 の ニュアンス は、似ているようでもだいぶ違います。 ただしその後は西洋と同じように、彩色すること、それによって画を描くとの意味になっています。
また東洋には書画 (文字と画) という独特の 概念 もあります。 アルファベットと違い漢字などは、物の形をかたどって描かれた文字 (象形文字や絵文字) であり、これらの文字と絵や画を同じ素材として融合させて扱う場合もあります。 いわゆる飾り文字などとも違ったこれらの概念は、類似のものが西洋にもいくつかあるとは云え、西洋東洋の歴史や文化の違いとしてたいへん興味深いものです。
同人 の世界では、同人の会や 同人イベント、さらには ネット のコミュニティなどに人々が集まり、作品を持ち寄って楽しんでいるわけですが、漢字としての 「絵」 の成り立ちにも符合して、なんだか楽しくなってきますね。
人間が作り出し人間だけが使いこなせる表現にはいくつか種類があり、それぞれは日々の些末なことから宇宙に至る広大無限な世界までを表すだけのポテンシャルを持っています。 例えば文学は文字で、数学は方程式で、日常生活のこまごましたことから宇宙の真理まで表現しようとしています。 絵も図画で視覚的にそれらに比肩しうる表現を行うことができますし、他にも造形や音楽や舞踏などもあります。 人によって得意な分野は違っているのでしょうが、それがたまたま絵だったとして、見て楽しむだけでなく表現して楽しむことができれば、人生はきっと豊かになるはずです。
なお言葉としての 「絵」 には、何かの言葉の末尾につけて、描かれている絵の様々なニュアンスを伝える使われ方もできます。 例えば アニメ っぽい絵なら アニメ絵、キャラクター の絵なら キャラ絵、キャラが立って いる姿なら 立ち絵、何人も集まっていたなら 集合絵、お正月やクリスマスといった年中行事に合わせて描いたものなら 行事絵、ハンコで押したように同じようなキャラばかりの絵は ハンコ絵 といった具合です。 たった一文字の 「絵」 で概念があらわせるので、言葉としてとても使いやすいものでしょう。 これは 「文」 や 「曲」 なども全く同じですけれど。
「絵になる」 などの独特な使い方や、絵の上手い下手基準
絵が美しいもの、視覚で鑑賞するものとなっていることから、転じて、美しい風景や光景、人の容姿や動作などが美しかったり立派だったりする時に、「絵になる」 といった表現をすることもあります。 絵という言葉には、絵筆で紙に何かを描くだけでなく、キレイで美しいとか堂々としていて様になる、美術品としての題材になるほど優れているなどの意味もあるのですね。
これに関連するのかしないのか、非常に定義が難しい問題として、「絵の上手さ (巧さ)」 があります。 専門的な訓練を受けた人や一度でも真剣に絵を描いたことがある人と、そうでない人とでは絵の上手さに対する基準がまるで異なるとはよく聞く話です。 一般に絵に興味のない人は自分の好みや表面的な美しさ、写実的かどうかといった部分で絵の上手い下手を論じがちです。 実際はさらっと描いた (ように見える) 簡略化されたデフォルメ絵の方が技巧的に高度で難しく、絵描きから 「上手い」 と評価されることも多いのですが、単に凝った絵作りや表面上キレイなだけの絵の方が評価されがちなのですね。
絵の上手い下手などは見る人によって異なるので、美大受験やら何らかの品評会向けの作品創りをするのでなければ、あまり気にし過ぎても仕方がありません。 あからさまにデッサンが狂った絵はなるべく描きたくないものですし、趣味にせよ職業にせよ高みを目指して研鑽するのは大切ですが、自分の描きたいように描くのがやっぱり一番でしょう。