ファンタジーカテゴリでは影響を受けたプロ作品、同人作品は数知れず
その名は 『指輪物語』、そして 『アーサー王物語』
「ファンタジー」(Fantasy) とは、幻想的で神秘的で夢溢れる、児童文学を含む全ての 物語 …と云うことになりますが、同人 の世界で 「ファンタジーもの」 と云えば、中世ヨーロッパを舞台とし、魔法や剣や エルフ など異世界の種族の登場する冒険物語をもっぱら指します。
すなわちイギリスの言語学者、J・R・R・トールキン (John Ronald Reuel Tolkien/ 1892-1973) の小説、『指輪物語』 (The Lord of the Rings/ 1954) の描いた世界・登場人物と、また5世紀末のイングランド王伝説、いわゆる 『アーサー王物語』 などの描いた世界・登場人物などを モチーフ とした作品・ジャンル を、直接的に指すと云っても良いでしょう。
これら創作物の他、日本人にはなじみの薄い歴史上の中世ヨーロッパのイメージを形作ったものとして、世界史のテキストや書籍、実際の古城といった史跡の他、1982年に翻訳本が出版された 『中世への旅』 シリーズ (Heinrich Pleticha 著/ 平尾浩三 訳/ 騎士と城・都市と庶民・農民戦争と傭兵) は大きな影響を与えた特筆すべき存在としてその名が挙げられます。
なお旧来の 「御伽噺」「神話」 などを 「ファンタジー」 とし、トールキン などの 世界観 を持つ作品群を 「ハイファンタジー」 と呼称する場合もあります。 他には 「ゲド戦記」 や 「はてしない物語」、近年では 「ハリー・ポッター」 シリーズ なども知名度と影響力を持つ作品となっています。
ゲームから派生した和製ファンタジーの影響
The Lord of the Rings |
ところで日本においては、15年程前からは、これらの世界観に別の要素までをごちゃ混ぜで採り入れたRPGゲームなどから偏った影響を受けた 「和製ファンタジー」(JRPG) 的な側面が非常に強くなり、純粋な意味でのファンタジーものとは似て非なる独特の発展を遂げていますね。
ある程度原典となるファンタジー作品をかじった作家さんの中には、気を使って(?)、わざわざ 「ファンタジー風」 とか 「ライトファンタジー」 と称している場合もあります。
日本におけるファンタジーでは、1985年あたりから90年代にかけて、アメリカやイギリスの作品の日本語版が広がる形で テーブルトークRPG (TRPG) や ゲームブック の大ブームがありましたが、この時主流となった人気作に、「DUNGEONS&DRAGONS」(D&D/ 1974) という、トールキン 『指輪物語』 をモチーフにしたものがありました。
TV ゲームとしての RPG の原型でもあるこの作品の影響は絶大で、こんにち、あまりにトールキン作品らからの孫引き・曾孫引きが続いて種族名やキーワードの恣意的な抽出、断片だけになった作品を、“これぞ正統派ファンタジーだ” と云われるのにちょっとした違和感を受ける人は多いようです。
「トールキンも読まないでファンタジーなんて…」、あるいは 「円卓の騎士も知らないで…」 と、ことさらに強調するのもどうかと思いますが、これほど魅力的で広大な世界を、自分の思うがままに料理したいと思うのは意欲ある 同人作家 のサガ。 無知からくる明白な勘違いは読む方も辛いです
今後も実力のある語り部による、素敵なファンタジー作品の現れるのを期待してしまいますね。
映画化で 「中つ国三部作」 も注目を
ちなみに 『指輪物語』 は、前に 『ホビットの冒険』、後に 『シルマリルの物語』 を加えた いわゆる “中つ国三部作” として広く親しまれています。 流行のファンタジーの古典的名作でありながら、日本では未だ知る人ぞ知る…的な感じですが、2001年には新しい映画も公開されるらしいので (日本公開は2002年3月予定)、もしかしたらこれからググッと広まるかも知れませんね (1978年にも、同名の劇場アニメとして映画化されています)。
2002年最大のヒット作になるのでは…とも呼び声も高く、映画 「The Lord of the Rings」 が我が国でもロードショー公開されました。 スケールの大きな作品の映画化に真正面から取り組んだこの作品は、ファンタジーファンだけでなく一般の観客にも好意的に受け入れられ、原作もまた脚光を浴びているようです。
筆者 はまだ見ていないのですが、劇場公開と同時に見に行った見識に信頼を寄せる知人の話によれば、なかなか見応えのある作品なのだそう。 続編も予定されていますが、いずれビデオか DVD になったら、自宅でゆっくりみようかな…と思っていま
引用した作品は星の数…「アーサー王物語」
剣と魔法、勇者と冒険 |
アーサー・ペンドラゴン (Arthur Pendragon) の活躍を描いた 『アーサー王物語』 に関しては、1981年にアメリカで作られた映画、『エクスカリバー』 があり、日本でも話題になったのでわりとポピュラーとなっています。
真の勇者のみが引き抜き手することの出来る王者の剣・エクスカリバー (Excalibur) の聖剣伝説、最後の晩餐でキリストがワインを飲み、キリスト磔刑の際にはヨセフがその血を受けたとされ、その杯を使ったものには 永遠 の命が与えられると云う聖杯の探索 (ただし伝説の原典では普通のお鍋 (豊穣の象徴) の探索で、また聖杯自体も2つで1つとの説もあります)、あるいはまた、勇者・湖のランスロット (Lancerot de lake) らが活躍する円卓の騎士 (Knights of Round) 伝説などなど…。
なんとも雄大で ロマン 溢れる伝説ばかりですが、「ハリーポッター」 のモチーフともなっている 『アーサー王物語』 は、RPGゲームのみならず世界の文学、芸術、マンガ や アニメ に引用される素材として、恐らく聖書と並んで人類史上最大のものの一つと云えるでしょうね。