好きならどれだけお金を使っても…「実質無料」
「実質無料」(じっしつむりょう) とは、自分にとってものすごく価値があるので得るためのコストは度外視できる、コストがゼロに感じられるほど対象が大好きだ、といった意味の言葉です。 例えば 「私は〇〇ちゃんが大好きだから、ネトゲ の ガチャ で キャラ をゲットするのに10万円かかったけど実質無料みたいなもん」 といった感じです。
本来の 「実質無料」 とは、企業などが何らかのサービスや商品をユーザーに提供する際に、法令や制度、仕組みなどで無料 (0円) にはできない場合に、様々な方法を使って無料に近い状態にすることです。 例えば文字通り実質無料となるような 「1円」 での販売にしたり、本体の価格は据え置きながら必須の付帯サービスやオプションなどを無料や大幅割引にする、長期契約と割賦払いを前提にそれらの料金を下げるなどして実質的に本体価格が0になるように調整したりします。 一般的には携帯電話やスマホの販売によく見られ、街の携帯ショップや家電量販店の宣伝に使われた手法ですが、これを転用したある種の おたく用語 のひとつとなります。
使い方としては、実質無料の根拠とセットにする パターン が多いのですが、その根拠がほとんど破綻しているのがポイントで、中には明らかに矛盾したものもあります。 例えば 「(ガチャを) 出るまで回せば実質無料」「値段を見ずに買ってるから実質無料」「(しないけど) 返品できるから実質無料」 といった具合です。 また実質無料という言葉こそ使われないものの、ほとんど同じ意味となる 「(特典が素晴らしいので) 有料会員は無料」「3千円払えば無料で10連まわせる」 などもあり、そのインパクトから話題となった言い回しもあります。
なおお笑いコンビ・サンドウィッチマンの伊達みきおさんの ネタ で、「カロリーゼロ理論」 がありますが (例えば 「柿の種は小さいし辛いからカロリーを自然と消費する、よってカロリーゼロ」 など)、これが2017年10月15日放送の 「アメトーーク!」 で初披露されると大きな話題となり、その後はこの理論での言い回しやロジックが実質無料にも当てはめられ、複合したものも見られます。
「好きだ」 のヒステリーじみた形容詞として
言葉の使い方のパターンは前述した通りですが、より好きだという意味を強調するため、それなりに具体的な数値を掲げる場合もあります。 例えば 「〇〇ちゃんの クリアファイル を千円で買ったけど、わたしにとっては1億円の価値があるから実質無料」 といった感じです。 この場合は金額が大きければ大きいほど対象が大好きだとの意味となり、場合によっては9百万億円とか100兆円とか、流行語ともなった 5000兆円 (5000兆円欲しい!) などなど、言葉として破綻した数値や天文学的な数にする場合もあります。 まあ 1000千円とか単位が千円の場合は、そういう仕事してるんだろうな…って感じもしますが。
またここまでネタ、あるいはヒステリー気味の 自分語り の形を取らず、シンプルに 布教 (友人などに自分の好きな コンテンツ や 推し のキャラや カップリング などを薦めること、腐教) の際にも、あれこれ耳障りの良い条件を並べて実質無料だと強弁し、それこそ携帯ショップの店員さんさながらに友人に物品の購入や ゲーム への参加をそそのかす場合もあります。
無料どころか、むしろ得する
好きで好きでたまらない対象がいれば、それに注ぎ込むお金などどうでもよく感じられるのは、熱心な ファン の宿命なのかも知れません。 場合によっては 「心が癒されることによって仕事へのモチベーションが高まり中長期的に見るとむしろ得する」 という意味で、「実質儲かる」「実質利益」 といったような言い回しをすることすらあります。
例えば 「〇〇ちゃんのフィギュアを1万円で買ったけど癒されて残業モチベ上がって2万円稼げたから実質1万円プラス」 みたいな感じです。 この場合は推しである〇〇ちゃんへの 愛 を語ると同時に、残業に駆り出させる社畜ぶりを 自虐 する意図も含まれた言い回しとなります。
「2割3割は当たり前」 激安量販店の威勢のいい掛け声
実質無料と同様に家電量販店などでかつて盛んに使われた 客 寄せ言葉に 「2割3割は当たり前」(ビックカメラ) というのがあります。 これは商品の価格が広く定価 (希望小売価格) で表示されていた時代、その価格をベースに 「2割引き3割引きの安売りは当たり前でやってます」 との意味で使われていた言葉です。 競合する他店も 「2割3割」「4割引き」 などを絶叫・連呼するテレビ CM や店頭での掛け声、販促 POP などを盛んに使っていました。
しかし 「定価があってないような値付けでの販売が常態化している場合、定価表示は不当表示に当たる」 との見解が公正取引委員会から出されるようになり、それを回避する方法 (例えば定価での一定期間の販売実績を作るなど) はあるものの、時代とともに大幅な値引き販売自体に 「客を 騙し ている」「単なる二重価格だ」 といった悪いイメージが広がることに。
1980年代の小売店での POS システムの導入、1990年頃からはメーカー側も定価からオープン価格へと表示を変えるケースも増え、店頭で気軽に何割引きといった表現や掛け声を行うのは難しい状況になります。 そこで 「安値世界一」「日本一」 を標榜し、「他店の価格を教えてくれればそれより安くします」 のような地域 No.1 戦略を行うようになります。
その後大手量販店の値引きからポイント制への切り替え (1989年4月のヨドバシポイントカード (現ゴールドポイントカード) が全業種含めて日本初) を大きなきっかけとして、激安量販店での現金割引はすっかり見かけなくなりました (まぁそれなりの金額の商品を買う場合は、交渉次第ではありますが)。 ビックカメラも 「2割3割は当たり前」 という掛け声は使わなくなり、CMでは単に 「当たり前ー!」 だけを叫ぶという、よくわからない掛け声になったりしましたw
2010年代ともなると、これらの 「当たり前」 掛け声はすっかり過去のものとなり、そもそもネット通販が広がり店頭での買い物自体が減る状態となって、若い人たちの間では何が何やら状態にもなっているようです。
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