脳の血管がプッツン! キレちまったよ… 「キレる」
「キレる」 とは、怒ることです。 マジ (本気) でキレるのは 「マジギレ」、とくに激しい怒りの場合は強調表現として 「ブチギレ」 と呼びます。 1990年前後から使われるようになった若者言葉のひとつで、当初は不良やヤンキーが使う言葉として 認知 されていましたが、猛烈に広がるとともに一般化してすっかり定着し、その後は新しい日本語になっているといってよいでしょう。
元ネタ というか語源としては、怒りのあまり浮き出た血管が切れるに由来しますが、その前にお笑い芸人の片岡鶴太郎さんが1986年に流行らせた言葉 「ブッツン」(プッチン) の強い影響もあります。 これは元々は脳の血管が切れて頭がおかしくなって奇行に走る、追い詰められて緊張の糸が切れて突飛なことをしでかすといった意味で使われていましたが、その後脳の血管から浮き出た血管に変化しそれが切れて怒りを表すように意味や ニュアンス が変容 (プッツンする = 怒る) しています。 その後プッツン (あるいはプッチーン) という言い回しが廃れる中で、キレるが残った形で定着したものと云えます。 ちなみに 「ブチギレ」 も、血管がブチッと切れる、ブチブチと何本も切れる様からきています (ブッチ (ぶっちぎる) からきているとの説もたまに聞きますが、時系列的にちょっとないかなと思ってます)。
怒りで額に血管が浮き出るといった表現はそれ以前から マンガ などではおなじみですし、それが切れて出血するさまを 「ブチッ」 と表現することもありましたので、プッツンとこれら既存表現とがどう絡みあってキレるにまとまったは不明です。 お笑い芸人の流行語やマンガは若者が好むものですし、当時は現在でも使われている様々な若者言葉が作られてテレビや雑誌を通じて全国に広がっていましたから、どのような相互作用があったのかを厳密に調べるのは難しいかも知れません。
なお 「堪忍袋の緒が切れる」 からきているという説もあります。 これはプッツンとかキレるという言葉が広がり始めた頃に、主に大手メディアなどで若者言葉を解説する中で触れているものもありました。 しかし当時この言葉が広がり始めた頃の 筆者 の感触で云えば、マンガ表現や片岡鶴太郎さんのプッツンからきている印象が強いです。
プッツンは一部で脳の血管が切れて頭がおかしくなったという表現が不謹慎だみたいな意見もあり (当時は犯罪者や変な人を 「プッツン〇〇」 みたいに揶揄する表現がかなりありました)、メディアでも広く使われる中で緊張の糸とか堪忍袋の緒みたいな後付けの理由がつけられた可能性もあります。 そもそも鶴太郎さんがプッツンするリアクションでは頭というか額の端っこあたりに指を当てて表現することもありましたし、あくまで発端は脳や頭の血管が切れるからきているのでしょう。 まぁ筆者のうろ覚えの感触なので、あまり当てにはならないかもしれませんがw
なお派生語はいろいろあり、自分が悪いのにそれを他人に指摘されると謝罪や反省ではなくキレてしまうことを逆ギレ (逆上の意)、キレそうな状態ならキレ気味と呼びます。 気の弱そうな おたく が激怒することは おたギレ と呼びます。 こちらは 発狂 とか ファビョる と呼ぶこともあります。 怒りの感情と頭がおかしい (あたおか) とか錯乱、乱心とが、見る立場によって同じように見えたり密接な関係にあるのが改めて分かりますね。 またお笑いの ネタ としてキレることはキレ芸と呼びます。
「屋上へ行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…」 とは?
キレるに関わる有名なフレーズに 「屋上へ行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…」 があります。 これはマンガ 「サラリーマン金太郎」 の 主人公 金太郎のセリフからきています。 一方、この 作品 の パロデイ である 漫★画太郎さんの 「珍入社員金太郎」 にもこのシーンがあり、この作品自体がたった4話で打ち切りとなったことから、元ネタである 「サラリーマン金太郎」 の 作者 本宮ひろ志さんが激怒して連載中止に追い込んだからだなど、真偽不明の伝説が色々あります。