同人用語の基礎知識

精神世界シーン

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何やらよくわからない部屋で自問自答… 「精神世界シーン」

 「精神世界シーン」 あるいは 「精神世界演出」 とは、アニメ漫画 といった創作物において、主人公 やそれに準じる重要な キャラクター が突然異世界のような場所に飛ばされ、光の点滅やら抽象的な映像やらで視覚的に何かを訴えたり、あるいはセリフとして自分自身に語りかけるような形で視聴者や 読者 に訴える独特の演出を指す言葉です。 単に 「精神世界」 と呼ぶこともあります。

 もっぱら物語の最終盤に、物語の核心部分に関わる形で、おおむね当該キャラクターの独白や自分自身との禅問答のような自問自答が行われます。 背景もそれまでの場面で使われていた場所以外の場所、例えば真っ黒な暗闇や真っ白な光の世界、お花畑や海や山、宇宙空間などにトリップする形で行われるでしょう (伏線として、序盤や中盤の折々に同じようなシーンを暗示的に複数回入ることもあります)。

 こうした形の演出は観念的なメッセージを持つ SF やメッセージ性・芸術性が高く、ともすれば 高尚 だとされる作品などにしばしば見られるもので、この演出中にわかりやすくはっきりと結論的な回答あるいはメッセージを出す場合もあれば、漠然としたイメージを提示して視聴者や読者それぞれに結論の 解釈 をゆだねる形をとる場合もあります。

 おたく な世界で誰でもわかる例で云えば、映画 「2001年宇宙の旅」 のラストシーンやアニメ 「新世紀エヴァンゲリオン」 の主人公シンジによる自問自答やフラッシュバック的に過去シーンをコラージュしたシーン (おおむね誰にでも身に覚えがあるような、過去の記憶をつつかれるような日常の風景的なものが多い)、あるいは 「魔法少女まどか マギカ」 の類似シーンなどが有名です。

やりすぎると演出過剰で叩かれることも

 こうした 「精神世界シーン」 は、作品内の他シーンと比べてあまりに特異な演出であり、やりすぎると演出過多で押しつけがましく感じられるものです。 そもそも延々とした独白や対話形式でしゃべったりよくわからない映像コラージュで提示するのではなく、シナリオとキャラの動きで テーマ を伝えるのがアニメではないのかとの意見や、苦し紛れの手抜き・尺稼ぎシーンだと感じられて強い拒否反応が生じる場合もあります。

 一方、禅問答的な自問自答や過去シーンのコラージュなどは、ある程度の年齢の視聴者や読者だったり、その時点で何らかの悩みや心に苦しさを感じている人には 「自分のことを問われている」 ような錯覚を覚えやすく (そうした効果を狙って、あえてあやふやな、誰にでも何かしら思い当たるような漠然としたものにしていたり)、そのツボにはまって自分ゴト化された場合には、自分でも信じられないほど心を揺さぶられ、それが作品の評価に直結して絶賛せずにはいられない心持ちになったりもします。

 「精神世界」 などとやや揶揄するような言い回しをされていることから、ある種 邪道 な演出として見られたり、自己啓発セミナー的な手法だとして批判されがちで、毀誉褒貶が激しい、見る人によって評価がまるで異なる演出方法だといえるかも知れません。 しかし作品テーマによっては、これ以上ないほどの効果を挙げる場合もあります (逆に精神的に疲弊したりメンタルに不安がある場合、何らかの メンヘラ 的な症状の引き金になる場合もあり、とても危険なこともあります)。

 また結論らしい結論を提示しない場合は、それが視聴者や読者の謎解き欲を刺激し、考察や 深読み といった、作品を通じた ファン 同士のコミュニケーションを喚起し、作品の賞味期間を延ばす効果もあるでしょう。

作家の精神世界をうかがい知る核心的な要素との評価も

 一概には云えませんが、作家性が強く評価され、そうアピールもされている作家の作品の場合、その作家の精神世界、内心の葛藤を間接的でありながらある意味直接的にうかがい知る部分になりがちでもあり、考え方や感性の波長が一致するコアな ファン にとっては、作品の核心的な要素、あるいは価値だと評価される場合もあります。

 またファンが作品を評価する軸には、もちろん作品の出来の良し悪しや趣味嗜好の一致もありつつ、それ以外にも様々あります。 「一人の作家を長年追い続けて、作家の成長や精神世界・思想の変化を追う」 のが好きな人もいれば、中には 「作家が精神的に壊れていく様を追う、追体験する」 という、怖いもの見たさや好奇心、一般には悪趣味と思われるような見方をする人もいます。 こうした人によっては、「精神世界シーン」 こそが作品を見る動機になっている場合もあるでしょう。

 作者 が視聴者や読者の感情を (ある意味で楽に) 揺さぶろうと挿入したシーンが、逆に視聴者や読者の目によって意図ごと素っ裸にされ、作者自身が揺さぶられることだってあるでしょう。 その意味では諸刃の剣的な表現なのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年7月12日)
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