同人用語の基礎知識

ブレナン神父症候群

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部屋中にアニメポスターを貼って結界を作る… 「ブレナン神父症候群」

 「ブレナン神父症候群」(ブレナン・シンドローム) とは、おたく な人が自分の部屋 (おたく部屋、おたくルーム、コロニー) の壁という壁に アニメキャラクターポスター などをびっしりと敷き詰めるように貼りまくること、さらに関連グッズなどを並べて 祭壇 を作ったり、そうした状態にある部屋やその住人のことです。

 何かの熱心なファンは、自分の好きな対象のポスターや イラスト、写真などを所狭しと敷き詰めて貼るものですし、寝た時にも見れるように天井にポスターを貼る、パソコンの 壁紙 や携帯の待受画面も全部そのキャラに統一するなどの傾向がしばしばみられるものです。 本人にとっては 「少しずつ増えていった」 ものなので、あまり自覚はなかったりもするものですが、他人がその部屋なり部屋の写真なりを見ると、いきなり完成した状態のものを見ることになるので、そのあまりの光景に異様な偏執ぶりを感じたり、恐怖を覚えるなどがあるようです。

 なおずいぶん以前には、こうした状況を 「オーメン症候群」 などと呼んでいましたが、その後は 「ブレナン神父症候群」 と呼ぶようになっています (後述します)。

元ネタは 1976年の恐怖映画、「オーメン」 の 「ブレナン神父」 から

 「ブレナン神父症候群」 の 元ネタ ですが、1976年に製作され日本でも爆発的な大ヒットとなったアメリカの恐怖ホラー映画、「オーメン」(The Omen) に登場する謎めいた人物、ブレナン神父 (Father Brennan/ パトリック・トラフトン/ Patrick Troughton) に由来します。

 後に続編が次々作られ、2006年にはリメイクもされたオーメンシリーズの最初の作品であるこの 「オーメン」 は、6月6日の午前6時に誕生し、頭に 「666」 のアザ (新約聖書ヨハネ黙示録において 「獣の数字」 とされる) を持つ悪魔の子、ダミアンを巡る恐怖の物語となっています。 この作品において、ダミアンの養父となるアメリカ人外交官ロバート・ソーンとダミアンが出会うきっかけを作ったのがブレナン神父 (同じく 666 のアザが足にある) でした。

 このブレナン神父は悪魔の子というわけではなく (足にある 666 のアザは、悪魔の手先として働いた印なのでしょう)、病に冒され、後に悲劇的な最期を遂げますが、ロバートが奇怪な事件を発端にダミアンを調べている際に、このブレナン神父の異様な生活を目撃。 その中に、自分の部屋の壁に隙間なくびっしりとちぎった聖書のページを張り巡らせている (悪魔に怯え、聖書による結界を作ろうとしていた) シーンが登場します。

 その 「部屋の壁に隙間なくびっしり物を貼っている」 さまが、アニメファンなどのポスターを貼り巡らすイメージと重なるため、「ブレナン神父症候群」、もしくは 「ブレナン・シンドローム」 と呼ぶようになりました。

オーメン症候群から、ブレナン神父症候群 へ

 ただし最初期の頃はブレナン神父の名前ではなく、映画タイトルそのままの 「オーメン症候群」 とか 「オーメン・シンドローム」 と呼ばれていました。 その後、悪魔に取り憑かれていると主張する人やその症状を、映画のタイトルにちなんで精神医学の世界で 「オーメン症候群」 と呼ぶようになったので、以降は混同を避けるため、より直接的な 「ブレナン神父症候群」 と呼ぶようになったのでした。

 言葉としては映画が大ヒットし話題となった 1970年代からありましたが、使われるようになったのは1980年前後からです (とくに日本語吹き替え版が1979年2月12日に TBS系 「月曜ロードショー」 で放映されて以降でしょうか)。 発生場所は 筆者 の周りで、その後一部の パソコン通信 などでも局地的に使われるように。 同人サークル ぱらあみ 関係でも使われ、いわゆる ぱらあみ用語 のひとつとなっています。

なぜ おたく は、趣味の品で部屋を埋め尽くすのか

 おたくに限らず、何かのファンは部屋の中にそれに関連するグッズやポスターなどを並べ、「好きなものに取り囲まれている」 という満足感 (場合によっては安心感) を覚える人が多いものです。 人によっては特定作品やキャラではなく、色でそれを行う人もいます (例えばピンク色が好きな人が、身の回りのもの全てをピンクにするなど)。 おたくの場合もそれと基本的には同じです。

 最初は雑誌の付録のポスターなどを1枚貼って 「かわいいなぁ…」 などと満足していますが、そのうちその数が増え、さらにショップや 通販 でアニメイトのポスターを買い集めて貼りだし (もちろん、貼る用と保存用の最低2枚は必ず買います)、フィギュアなどのグッズも並べるようになりエスカレート。 さらにある段階、閾値を超えると (恐らく全面積の半数を超えたあたり)、今度は 「何も貼っていない隙間」 が許せなくなり、隙間を探して塞ぐようにそれこそ隙間なくびっちりと貼るようになってきます。

 さらに半数を超えたあたりから、部屋主としての自分の感情にも変化が現れます。 人間には刷り込み効果がありますから、毎日毎日ず〜っとそのキャラを眺め、また囲まれた生活をしているうちに、自分でも気がつかないうちにどんどんと 「好き」 の感情がより強く激しく燃え盛り、しまいには自分でもそれが止められなくなってきます。 カルト宗教などが行う洗脳を、他でもない自分が自分自身に対して四六時中行っているようなものです。

 筆者の知人でも、あるタレントの熱心なファンがいて、撮影会で撮影した写真をB0ポスターに印刷したり、プリンターでプリントアウトした写真などを隙間なく部屋に貼ってしばらく 引きこもり をしていたら、その世界から帰ってくるのに4年掛かったなんて人もいます (筆者は6年かかりました…)。

 もう一つの要因としては、おたくの多くにとって部屋が 「自分だけのもの」 であるのも大きいでしょう。 普通はある程度の年齢になると友達やら恋人やらが家に訪ねてきたりもしますから、他人の目を意識して 自重 などもするものです。 多くのおたくの場合はそれが少ないので、そうした 「ヤバいもんを隠さないと」 といった判断による セーブ が効きづらいという状況もあります (さらにそうした部屋になっているから友達や彼女を呼びたくない…が負の連鎖でエスカレート)。

オタ部屋晒し…剥き出しの おたく のド迫力に一般人も恐怖

 その後、おたくも多少は一般化し、昔ほどは批判されなくなってきていますし、ネット の普及によって 「オタ部屋 晒し」(自分のおたくっぽい部屋の写真をネットに うp する) なども広まり、「こんな部屋に住んでるのは俺だけじゃなかったんだ…」 との安心感から 「隠す」 という空気は減っています。 しかしそれでも 一般人 が見たら、恐怖のあまり叫びだす レベル にあるのは違いません。

 筆者もブレナン神父症候群の重症患者なので、こうしたプロセスとそこに至る心理状態はわかるので、ここらはいかんともしがたいところです。 なんていうか、視界に入る物全てを好きなもので埋めたくなるんですよね…なんなんでしょう、これ。 気に入ったポスターがあって、それが雑誌の折り込み付録かなんかで折り目付きの小さいサイズだと、アイロンで折り目を伸ばしてスキャンし、拡大プリントして同じの何枚も貼ったり、それでPOPを自作してあちこち立てかけたりしますし。

 思いつきで人間を簡単に分類するような頭の悪い精神医学者なら、「自分が胎児としてお母さんの居心地の良いお腹の中にいた時の幻影を追い求めているだけ、幼稚なオタクの幼児退行」 なんて断言しそうですが (笑)。

 ちなみにこうした部屋そのものは、コロニーと呼ぶ場合もあります。 その場合、例えば部屋に貼ってあるキャラが水野亜美なら、「亜美ちゃんコロニー」、鉄道関係なら 「鉄コロニー」 などとなります。 さらにこれが極端になると、「将来の夢は 博物館」 などと言い出します。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年2月8日)
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