やおいに近いようで実は遠い薔薇…ゲイの世界
「薔薇」(ばら) とは、いわゆる ゲイ (Gay/ カミングアウトした同性愛者) の事です。
ただし 同人 の世界での 「薔薇」 モノと云う場合は、男性作家による男性の 読者 向けの 作品 に、限定 されるケースがかつてはほとんどでした。 女性作家の多くが描き手だったり読み手だったりする やおい などとは、本来は全く違った ジャンル だったといっても良いでしょう (ナマモノ同人系を中心に、ジュネ/ JUNE系も薔薇や さぶ、サムソン系など色々なジャンルや カテゴリ がありますが、とりあえずどれでもOKって人も少なくはないですけど)。
男性作家による レズビアン モノが、百合系 の女性作家や ファン にあまり受け入れられないように、同性愛であるがゆえにか、明確な方向性の性差があるらしいのは興味深いです。 もっとも同じ男性同性愛を表現するとしても、やおい や BL などと比べてひときわ ロマンチック な呼び方ですし、そうしたジャンルの作品に薔薇などが モチーフ として盛んに利用されている状況もあり、後になればなるほど、少なくとも同人の世界では、やおいや BL と意味の混濁がなされるようにもなっています。
花の名前を冠した名称の場合、薔薇=やおい=ゲイ、百合=ビアン=レズってのが分かりやすい分類ですが、個人的には 同人作家 や読者の傾向からすると、薔薇と百合、やおいとビアン、ゲイとレズとの親和性が高いと思います。 重要なのは 「性別」 ではなく、その 「方向性」 や 「行動様式」 なのかな、みたいな。 ただしここいらは作家によってもまるで違っていたりもするので、あんまり当てにならない話ではありますが… (;_;)。
男性同性愛者は薔薇の木の元で愛を確かめ合う…薔薇の語源はロマンチックです
日本における 「薔薇」 の直接的な語源は、1968年11月1日に創刊された三島由紀夫が関っていた伝説的な雑誌 「血と薔薇」、およびギリシャ神話オイディプス王伝説をモチーフに、新宿2丁目とゲイバー 「ジュネ」 を舞台とした映画 「薔薇の葬列」(1969年9月13日/ 脚本・監督/ 松本俊夫) のタイトルからです (主演はピーターこと当時16歳の池畑慎之介さん)。
これら一連の作品に薔薇が使われた由来としては、「古代ギリシャでは、男性同性愛者は薔薇の木の元で互いの愛を確かめ合った」 と云う、とても ロマンチック で甘美なものがありました。 と同時に薔薇は、血や死、傷、刀、倒錯、悲劇などを象徴するにふさわしいモチーフでもあったのでしょう。
この雑誌や映画は、1960年代末の退廃的で混乱した 雰囲気 の中、一部のクリエイターや芸術家たちの間で話題となり支持され、その後有名なゲイ雑誌 「薔薇族/ THE BARAZOKU」(創刊/ 1971年7月/ 編集長/ 伊藤文學氏/ 1932年3月19日〜/ 現ロマンの泉美術館館長) の誌名の元にもなっています。 一般にも薔薇の名称が広まったのは、この 「薔薇族」 の創刊からでした。 これら一連の流れ以外にも、それ以前に薔薇という言葉が使われたこともあるのでしょうが、こんにち日本でいう薔薇名称は、これがルーツといって良いのでしょう。
ちなみに ネット で人気のあるホモマンガに、ウホッ! いい男… やらないか などのセリフで有名な山川純一 (ヤマジュン) さんがいますが、彼の マンガ が掲載されていたのが、他ならぬ雑誌 「薔薇族」(1982年頃より) でした。
なお薔薇の対義語は異性愛 (ストレート/ ノーマル) を示す ノンケ、ヘテロ、もしくはレズを示す 「百合」 となります。 これらはそれぞれに独特の異なる ニュアンス を持っている場合もあります。