欲しいし貰えると嬉しいけれど、ちょっと怖くもある 「感想」
「感想」 とは、何らかの出来事や体験、作品 に対する個人の思いや意見を表現したものです。 文章にしたものは感想文と呼びます。 主に自分の経験や感情、趣味・嗜好や (時として 性癖) に基づいて、作品の内容を理解し、自分なりの 解釈 を加えることで形つくられます。 批評や評価ではなく感想の場合は、自分の意見や主観に基づくことが大切で、作品をより深く理解したり、自分自身の考えを見つめるためにも重要な手段となります。
感想や感想文というと、学校の読書感想文が真っ先に思い浮かびますが、単に 「面白かった」「いまいちだった」 も感想ですし、一見批評や評価に見える 「優れている」「史上稀に見る傑作」 なども、専門家による客観的な調査や知見に基づくものでなければ、それを書いた人の個人的なフィルターを通した感想と見られることが多いかもしれません (そもそも面白さが主観によらず決められるかどうかはともかく)。
また感想や感想文は、自分が自分のために考えたり書くものもあれば、友人知人との会話で言葉として交わしたり、作品の 作者 本人に届く形で書かれるものもあります。 作品の感想を通じて自己理解を深めたり自己表現をしたり (やりすぎると 自分語り になりがちですが)、他者と感情や意見を 共有 することで、コミュニケーションを行ったり、新たな視点を得ることもできます。
同人における感想と、作者とファンの距離
何らかの ファン としての活動や 同人 の世界の場合、古くはファンレターのような手紙の形で送られたり、ネット の時代では メール や SNS で コメント の形で送られることが多いでしょう。 もちろん相手がファン感謝イベントや 同人イベント に サークル参加 していれば、対面して口頭で述べることができることもあります。
この場合は、作品と感想を通じたコミュニケーションの意味が大きく、「面白かった」「素敵です」 といった一言コメントも、感想というよりは反応や返事に近いものでしょう。 時代を経るごとに、感想を送る対象がプロ作家や有名人ではなく、自分と同じ同人活動をする 一般人 の場合も多くなりますし、対等かそれに近いフラットな関係が多くなった部分もあります。 「いつも素晴らしい作品ありがとう」「書いてくれてありがとう」 との感謝を伝えるツールとしても用いられます。
こうした作品と感想の行き来は、ネットが登場すると一気に加速します。 それまでは手紙や対面でやり取りするしかなく、あとはせいぜい電話番号を知っていれば電話で話をする程度です。 ネットの時代になり、お互いに住所や名前を知らなくても、作品と感想をほぼ リアルタイム で投げ合うことが可能となります。
ただし、感想を送りやすい 環境 になったのと、実際に感想が送られる・貰えるのとではまた問題が別です。 人気や注目度が高ければたくさんの感想が貰えるかもしれませんが、そうでない 地味 な存在、あるいは作品で扱う ジャンル や テーマ が マイナー であれば、まったく感想も反応も貰えないのが当たり前の現実もあります。
とくに SNS 時代は、どのくらい感想や反応を貰えたかが視覚化・数値化され第三者にも分かるようになっていますから、自分があまりに感想がもらえないと、貰えている人への嫉妬や疎外感を覚えて辛くなることもあります。 「どうせ感想がもらえないなら」 と 壁打ち や 感想拒否 を宣言したり、逆に見る人の歓心をかうために人気のあるジャンルや キャラ で 二次創作 したり、友人知人らとお互いに ポジティブ な感想や反応をつけあう (馴れ合い・互助会・駄サイクル) など、悲喜こもごものあれこれがあったりもします。
感想で傷つきたくない…時として厳しいものになることも
掲示板 などでは、感想を貰うための感想掲示板が パソ通 の時代からあります。 そこに自作を公開すればおおむね感想がもらえますし、自分で上手く表現できたと思う部分、逆に至らないと思っている部分を申告すれば、様々な意見やアドバイスが貰えたりします。 中には耳に痛い厳しい意見が飛び出すこともありますが、きちんと機能している板や スレッド であれば、自分では気づかない第三者の目を通した建設的な意見が聞けることが多いでしょう。
一方で、自分の好みだけで下手くそだ面白くないなどと罵詈雑言を浴びせる人もいますし、何らかの私怨に基づく攻撃だったり、荒らし による愉快犯的な単なる暴言が返ってくることもあります。 頑張って描いた作品がこっぴどく批判されたり、そんなもの誰も求めていないと悪しざまにあしらわれると精神面でかなり辛い思いをしますし、作品を発表したり、そもそも作品創りをすること自体が怖くなったり嫌になったりもするかもしれません。
向上心を持って様々な人の意見を聞き、技術を磨いてより優れた作品にするべく努力することは大切です。 一方で、作品を通じたコミュニケーションを重視する人にとっては、聞きたくもない批判など邪魔なだけです。 そもそもその人の批判やアドバイスが正しいかどうかも分かりません。
創作をする者にとって、栄養にも薬にも、時として毒や劇薬にもなるのが感想です。 別にいいことばかりを書くべきとか、褒めるべきだとは思いませんが、縁あって他人の作品に触れて何らかのアクションを起こしたいと思うほどの何かを得たのだとすれば、最初に 「感謝」 の心を持って接したいものです。 また人は良いことよりも悪いことに心を動かされやすいものです。 貶してくる感想は、褒めてくれる感想より心に 刺さって しまいがちですが、「この人はたまたま好みの方向性や 解釈が違う だけだ」 と、あまり深く考えすぎないようにしましょう。 自分にどう活かせるかを考えることが大切だと言えます。