自称ジャーナリスト、大谷昭宏氏の造語による「フィギュア萌え族(仮)」マスコミによる無責任・やぶにらみの猟奇犯罪 「推理ごっこ」 が占う犯人像とは…
「フィギュア萌え族(仮)」 とは、2004年11月に奈良県で発生した猟奇的な小1女児誘拐殺人事件の報道で、ジャーナリストの大谷昭宏氏が逮捕前の加害者を推理し、命名した犯人像のことです。
初出は11月22日早朝放映のテレビ朝日系ワイドショー 「おはようコールABC」 番組中ですが、その後も他のテレビ番組や新聞紙上やウェブ上 (大谷昭宏事務所/ Webコラム) で繰り返しこの説を披露し、登場当時から、なんら根拠の示されない無茶苦茶な迷推理に対して批判の多い用語でした。
後に犯人が捕まり、それが大谷昭宏氏の占う犯人像とはかけ離れた人物であったこと、過去に大谷昭宏氏自身が 「マスコミによる無責任な推理ごっこのような犯人探しはすべきでない」 とワイドショー的な野次馬報道を戒める発言をしていたことや、さらに、かつて マンガ の原作を多数執筆し、そこで アニメ やアダルトゲームの存在をある程度以上詳しく知っていたであろうことなどもあり、語源となった悲惨な事件とは無関係に、老害 商業 主義エセジャーナリストの売名的な論説や瑕疵を象徴する、ネット の世界での噴飯ネーミングの代表のようになっています。
当初のフィギュア萌え族(仮)の定義
初出時の 「フィギュア萌え族(仮)」 の示す犯人像としては、
・ | 少女フィギュアなどのマニア。 |
・ | 「自分に対する反論」 に対応できず。 他人の心の動きをつかめない未成熟なオトナ。 |
・ | 生きた少女を性愛対象とする、いわゆるロリコンとは違う。 |
と推理。
フィギュア萌え族の必須アイテム? |
すなわち 「実在の少女には興味のない人物で、いわゆるロリコンとは違う」「誘拐後すぐに被害者を殺害していることから、生きた少女ではなく、もの云わぬフィギュアが好きな人物の可能性が高い」 と云うものでした。
しかし同年 12月30日に逮捕された毎日新聞配達員の小林薫(36歳) は過去に何度も女児や少女への性的犯罪やいたずらで検挙された人物であり、美少女フィギュアなどは1つも所持していませんでした。
その後部屋から 「下着をつめた少女大の自作の抱き枕状態のダッチワイフ」 が出てきたとの続報はありましたが、これを大谷昭宏氏は 「そらみろ、やっぱりフィギュアが出た」 と嬉々として伝えていました (布団がフィギュアとは、筆者 は初めて知りました)。
また大谷昭宏氏以外のマスコミもさかんに 「ネット掲示板 と犯人との接点」 や 「18歳未満禁止のロリコン キャラ が出るエロゲームユーザの可能性」 をさも信憑性があるかのような表現で何度も叫んでいながら、実際の犯人は、パソコンもパソコン用の ゲーム も 同人誌 も持っていない、もちろん コミケ にも行ったことのないどこにでもいる普通の男性でした。
なおこの犯人が最初の性犯罪を起こして検挙されたのは1989年。 いわゆる 「宮崎勤事件」 の直後であり、彼がフィギュアやエロゲーやアニメなどではなく、「視聴率さえ取れれば良い」 という商業主義に毒された興味本位でセンセーショナルで膨大・執拗な 「宮崎勤事件ニュース報道」 にこそ触発され犯罪に走ったのは、その後の証言や時期的に考えて、ほぼ間違いないでしょう (本人も過去の検挙時に 「宮崎事件の報道に触発された」 と証言していますし、オタク文化うんぬんより、よほど説得力と根拠があります)。
小林容疑者は1989年 (女児への強制わいせつで送検、執行猶予判決)、さらに1991年 (女児の首を絞め殺人未遂で逮捕、懲役5年) にも同様の犯罪を起こして検挙されていますが、宮崎事件の時と同様、やぶにらみの 「下劣なショーアップがされた低 レベル な犯人探し」「魔女狩り」 で おたく や アニメ、フィギュア に根拠もなく罪を着せ、捜査をかく乱してマスコミ自身の非を隠し恥じない姿勢にはウンザリしますね。
2012年6月には、元暴走族総長のミナミ通り魔事件も 「オタク文化の影響」?
なお大谷昭宏氏は2012年6月10日に大阪・ミナミの繁華街 (東心斎橋) で男女2人を包丁で刺し殺した通り魔事件の犯人に対しても、翌11日のテレビ朝日放送 「スーパーJチャンネル」 において、「オタク文化との連鎖性を精査すべき」 と受け取れる コメント を行い、再び批判を浴びています。
この番組で大谷氏は、犯行 現場 を 「日曜日の繁華街、オタク文化にも近い日本橋とも近い」 とし、過去に起こった附属池田小・児童殺傷事件 (2001年6月8日) 秋葉原通り魔事件 (2008年6月8日) との発生時期の類似性を述べ、彼らが 「ある種、潜在的な (共通の) 意識を持っていないのか」 と強い関連性を提示。 その上で、「これらに連鎖性がないか、司法の中で精査していかなければいけないこっちゃだと思いますね」 とコメント。 司会者 の渡辺宜嗣アナウンサーが 「なるほど」 と相槌を打って、締めくくっています。
心斎橋と オタク街 と呼ばれる日本橋 (いわゆる オタロード) とが云うほど近いかどうかはともかく、逮捕された栃木県出身の36歳の男性は過去に傷害や強姦、薬物使用などで検挙・逮捕歴のある人物で、背中に大きな刺青を持ち、元暴走族の総長という経歴の持ち主でした。 覚せい剤取締法違反罪で収監されていた新潟刑務所を5月24日に出所。 大阪には知人に仕事を求めて犯行前日の9日に訪れ、そのまま知人宅に一泊。 しかし所持金も少なく住む場所も仕事もなく自暴自棄となり、自殺する目的で購入した包丁での凶行でした。 取り調べでは動機として、「人を殺せば死刑になると思った」「誰でも良かった」 と述べています。
これらの状況の一部は大谷氏のコメントに前後して他のメディアが独自取材によって報じたものもありますが、ジャーナリストを名乗りながら、取材は一切しないのでしょうか? また犯行現場の地理的条件のみで 「オタク文化の影響」 を疑う根拠、そしてそれをテレビでジャーナリストとしてコメントする理由、犯人像がある程度具体的にわかった後もまだそうだと思っているのかなど、ぜひお聞かせいただきたいものです。
そもそも 「発生時期の類似」 にもし本当に関連性があるのなら、それは宮崎勤事件報道に触発されたと証言する小林薫と同様、マスコミの報道からの影響の方が、まだ可能性があるでしょう (もちろん、犯人が責任回避のために嘘を言っている可能性もありますが)。 実際にこのミナミ通り魔事件の後にも、模倣犯と思われる事件が起こっています。 また日時が遠い通り魔事件も数えきれないほどあるんですが。
別に暴走族の総長がオタク 趣味 を絶対に持っていないとは云いませんし、池田小や 秋葉原 の犯人も絶対にオタク趣味を持っていなかったとは云いませんが (その可能性は想像を絶するくらい小さいと思いますし、それが事実としても、犯行に影響を与えた可能性など皆無だと思いますが)、何の根拠もないのでは、単なる思いつきのデタラメを垂れ流す嘘つき、ジャーナリストの対極にいるデマゴーグ (民衆扇動家) ではないですか。
何のことはない、犯人を性犯罪の衝動に駆り立てたのはフィギュアなどではなく、
宮崎勤事件の際の興味本位のニュース報道でした。 さらに犯人の職業も新聞関係だったという皮肉
奈良県で小1女児が行方不明に。 その後女児の母親の携帯電話に 「娘は預かった」 との メール が着信。 また少女の 写メール 画像 の送信も確認された。 奈良県警は行方不明事件として捜査を開始。 | |
奈良県、平群町菊美台の側溝で、行方不明の女児が遺体で発見される。 奈良西署と女児の両親が現場で遺体を確認、奈良県警は殺人、死体遺棄容疑事件に容疑を切り替えて捜査を開始。 | |
2ちゃんねる掲示板の 「CCさくら板」 の虐待 ネタ スレッド (「さくらの歯を 抜く」 ほか) や megabbs の 書き込み (「幼い子にレイプをしたことがありますか?」 スレッド) を 「犯人の足跡?」 としてフジテレビのスーパーニュースを皮切りに報道各社が大々的に報道。 | |
奈良県で発生した猟奇的な小1児童誘拐殺人事件の報道で、ジャーナリストの大谷昭宏氏が犯人像を 「フィギュア萌え族(仮)」 と推理。 理由として 「対話も感情もない 「萌え」 はむなしいが、犯人は被害者の楓ちゃんをそういう 「物言わぬフィギュア」 にしたかったのだろう」、生身の女児を狙ういわゆるロリコンとは違い、無機質な欲望から起こした犯罪だと発言。 テレビ朝日系ワイドショー 「おはようコールABC」 番組中や日刊スポーツ紙上、ウェブ上でも繰り返し繰り返し同じ主張を展開した。 | |
連絡網AMI、フィギュア萌え族 (仮) 発言に対して、大谷昭宏氏に公開質問状を送る。 | |
奈良県の幼女誘拐殺人事件の容疑者として毎日新聞配達員の小林薫が逮捕される。 その後の事件経過を含め、小林容疑者が 「オタク趣味」 を持っていたとの報道はなく、フィギュアも所持しておらず、パソコンも持っていなかった。 ジャーナリストの大谷昭宏氏はロリコンとは違うフィギュア萌え族の犯行だと述べていたが、いつのまにかロリコンはフィギュア萌え族のことであり予想通り 「フィギュアおたく」 の犯罪だったと同日放映の ABC テレビの報道特別番組内において断言。 自身の推理が正しかったと胸を張った。 | |
ジャーナリストの大谷昭宏氏、奈良幼女誘拐殺人事件を自身が推理した通りの犯人像であったと再びテレビやネットコラムで表明。 冷笑を浴びる。 | |
大谷昭宏氏、テレビ朝日系列 「ムーブ」 番組中に 「おたくとフィギュアがですね、うじゃうじゃうじゃうじゃ嫌がらせのメールを入れてきてるわけで、こういった連中は度し難い」 と発言、重ねて犯罪者予備軍を生み出すアニメやマンガ、ゲーム、フィギュアなどの法規制をせよと訴える。 | |
「週刊 SPA!」(扶桑社)2月1日号に 「誤解と偏見の 「オタク迫害」 に異議アリ!」 との特集が組まれ、この問題が大きく取り上げられた。 | |
小林被告に求刑通り、死刑の判決が下される。 弁護側は控訴の手続きをしたが、10月10日、被告が自ら控訴を取り下げた。 | |
大阪高裁が、弁護人による控訴取り下げ無効を求める審理開始の申し立てを受理。 | |
最高裁が再審請求を棄却、死刑囚となった。 | |
6月10日に発生した大阪通り魔事件について、事件現場が大阪オタロードに近い (実際は近くなかった) との根拠で、大谷昭宏氏は秋葉原通り魔事件との関連性を挙げ、「オタク文化との連鎖性を精査すべき」 と発言。 実際の犯人はオタクとはかけ離れた人物だった。 | |
谷垣禎一法務大臣によって、小林死刑囚の死刑が執行される。 |
デタラメ報道しても謝罪すらしない大谷氏とマスコミ
それにしても 「フィギュア萌え族(仮)」 ってなネーミングのセンス、人間の死体=フィギュアという発想、筆者も 「おたく」 と呼ばれて長いですが、どれもこれも想像の遥か 斜め上へ行く 着想で、とてもついていけません。 一部には 「おかしみ」 のあるネーミングとして、「僕はフィギュア萌え族です」 とあえて自称している人も出ている始末です。
なお犯人へは厳しい裁きを (2013年2月21日に死刑が執行されました)、そして被害者の少女のご冥福と、ご遺族の方々が少しでも心安らかになれますよう、心より お祈り いたします。