同人用語の基礎知識

死亡フラグ

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死亡フラグが立ったら、もはや逃げられません…! ><

 「死亡フラグ」 とは、アニメマンガゲーム やドラマ、映画などの物語で、近い将来に登場人物の死亡 (死んでしまう、あるいは失敗・敗北する) を連想させる不吉な 「予兆」(凶兆)、「伏線」 のことです。 対義語は一般的に 生存フラグ ですが、ニュアンス は若干異なります。

 フラグ (Flag) とは、日本語に訳すとそのままですが 「旗」 という意味で、「フラッグ」 と呼ばず 「フラグ」 と呼ぶ場合には、ゲームなどでその先のストーリー展開やゲーム内の状況が大きく変わる節目、分岐点になる 「目印」 のようなものを示します。 本来は伏線やシグナルという意味はないのですが、ゲームなどの 攻略 の際の目印として意味が混濁。 その中でも飛びぬけて 「分かりやすい」 フラグである 「死亡フラグ」 が、類型化の分析や 「あるあるネタ」 の発掘のような形でまとめられ、広がることになりました。

 転じて、実生活でも非常に不利な状況に陥る、ピンチに陥る予兆を、こう呼ぶ場合もあります。

俺…この戦争が終わったら結婚するんだ…

 死亡フラグには様々なものがありますが、登場人物が喋るセリフや行動が、その代表でしょうか。

 例えば 「俺…この戦争が終わったら 結婚 するんだ…」 などと呟きながら、婚約者の写真が入ったペンダントを見るとか、ホラー映画で 「ばかばかしい! そんなことがあるものか!」「こんなところにいるのは嫌だ! わたし一人だけで出て行く!」 と、仲間の制止を振り切って一人で部屋の外に出るとか、敵の悪者が、「くくく…ただ殺すのはもったいない…楽しませてもらうぞ…」 なんて余裕を出したりするのが代表的です。

 こういうセリフを口にした キャラ は、その後たいてい、死にます。 またセリフの内容に関わらず、それまであまり目立つことがなかったキャラが突然クローズアップされるのも、ロウソクの最後の煌めき を感じさせ暗い未来を予感させます。 逆にその時に対峙していた相手には、「生存フラグ」 が立つことになります。

 なお実際に死亡した場合には、「フラグ回収」「フラグ消化」 などと呼びます。

ホラー映画で 「もうすぐくるよ」

 当初こうした 概念 は、1970年代、やたら人が死ぬB級ホラー映画、スプラッタームービーなどの馬鹿馬鹿しい筋書き、あからさまな伏線、「お約束の展開」「予定調和」 への揶揄、突っ込み のような形で触れられ形作られました。 ビデオなどで友達と一緒にホラー映画を楽しむ人が、「そろそろ来るよ」「来るよ来るよ!」「来たー!」 などとテレビの画面を見ながら展開を先読みし、突っ込みを入れつつ楽しむ時の掛け声のようなものだったんですね。

 その頃は 「死亡フラグ」 とは呼ばれていなかったようですが、その後1980年代となりファミコンなどの発売によるテレビゲームのブームが到来。 ゲーム攻略の際にストーリー分岐の 「フラグ」 の様々なタイプが分類される中で、「死亡フラグ」 という言葉が おたく界隈 で作られ徐々に使われるように。 直接の言いだしっぺ、造語の主がいるのかも知れませんが、詳細は不明です。

 その後こうした 「言葉遊び」 はリアル世界でも使われるようになり、デスマ (デスマーチ/ いつ終わるとも知れない、残業だらけの過酷な職場や仕事) の最中に 「この仕事が終わったら彼女と結婚するんだ…」 などとしゃべって、「もうすぐダウン」 を冗談めかして表したり、「ここは俺に任せてお前は逃げるんだ!」 なんて使ったり、掲示板ヤバイ 話をしている時に、「おや、誰か来たようだ」 なんて書き込んだりもします。

「MFD」 などと呼ばれることも

 こうした概念は 「死を暗示する予兆、伏線」 としてストーリー作りや作品鑑賞の おかず として欠かせないもののようで、英語などでも 「Marked For Death」(MFD/ 死神に取り付かれた、死神に見初められた) といった感じで使われる言葉となっています。

 日本でも人気の高いアメリカのアクション俳優、スティーブン・セガール (Steven Seagal/ 1951年4月10日〜) 主演で、麻薬取締捜査官の活躍を描くアクション映画に 「Marked For Death」(邦題/ 死の標的/ 1990年10月5日公開/ 日本公開/ 1991年6月) というものがありますが、これを 「死亡フラグ」 の英訳としているようです。

なぜお年寄りは台風が近づくと田んぼの様子を見に行って行方不明になるのか…

 また逆に、リアル世界でよく聞くセリフや行動を 「死亡フラグ」 として扱う場合もあります。 例えば台風の前に 「雨が酷いから」 と 「ちょっと田んぼの様子を見てくる」「用水路の弁を確認してくる」 なんてのが代表的ですね。 これは毎年のようにその時期になると繰り返されることから、風物詩ならぬ 風物死 と呼ばれることもあります。 また これはだめかもわからんね という 1985年8月12日に発生した 日本航空 123便ジャンボ機墜落事故で機長が語ったセリフを由来とする 「もうだめかもわからんね」 という言葉もあります。

 ただし もうだめぽ まで行くと、もはや 「死亡フラグ」 ではなく死亡寸前、断末魔の声として、意味が変わってきます。 すでに死んでしまった場合には、あぼーん とか ティウンティウン になります。

 なお、完全無欠な 「死亡フラグ」 を出しておきながら、それを裏切ってキャラが生存する…なんて意表をついた使われ方も多いようです。 ただしその物語の 「主人公」 だけは、どれだけ死亡フラグが立っても、「最終回」 までは死ぬことはないようです。

 またその後の経過が二転三転する場合に、誰の死亡フラグにするか、どう受け取るかによって意味が変わる場合もあります。 例えば日本の歴史物で 「本能寺の変」 前後には様々なフラグがありますが、信長が光秀にいう 「家康の接待役申し付ける」 や、愛宕山連歌の会で光秀が発句した 「時は今 天が下知る 五月哉」 などは、信長が謀反に遭い討ち死にする信長の死亡フラグであると同時に、本能寺の変を起こした光秀が秀吉軍に破れ農民に襲われて落命する死亡フラグの始まりでもあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年8月25日)
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