同人用語の基礎知識

転売屋/ 転売ヤー

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同人界隈ではとにかく忌み嫌われる 「転売屋」

 「転売屋」 とは、小売店の店頭販売など正規の流通ルートに乗った品物を客として購入するなどして手に入れ、再度販売 (転売) する人たちや業者のことです。 通常は自分が購入した代金に利益を上乗せした価格で販売し、その差額を儲ける手段となります。

 再販、リセール とも呼びますが、言葉としての意味やニュアンスは使われるケースでかなり異なり、とくに 「転売」 と 「er」 もしくは 「バイヤー」 を合わせた 「転売ヤー」 や 「転売師」「転売厨」(罵倒語の 厨房 の厨を接尾した呼び方) などと呼ぶ場合は、相当の批判、侮蔑、嫌悪のニュアンスを持ちます。

 こうした行為が 同人おたく の世界で嫌われるのは、彼らがしばしば 同人誌即売会 などで不正な手段 (ダミーサークル による サークルチケット の不正入手、大人数での 徹夜フライング、人海戦術による営利目的の購入代行など) を行い、みんなが欲しいと思っている 大手サークル壁サークル などの 新刊同人誌 を買い占め、法外な値段 (プレミアム価格/ プレ値) で売りに出すからです。

 これらの行為によって、本来なら サークル参加 できたはずの 同人サークルコミケ などの イベント への参加ができなくなりますし、またルール違反によって同人の世界での 雰囲気 を悪化させ、あげくその同人誌を作ったサークルとは無関係のところで暴利を貪ることになります。 こうした世界特有の 嫌儲 の空気もあり、当然ながら非常に嫌われ、また憎まれているといって良いでしょう。

同人ゴロと転売屋、人の作品を右から左に動かしてぼろ儲け?

 実際のところ、不正行為はともかくとして、コミケなどで人気サークルの同人誌を 「商売としてメリットがでる」 程度に買い集めるのはかなり大変ですし、目利きが効かないと骨折り損になる場合もあります。 また新型ゲーム機 (ゲームハード) の発売やおたく、腐女子 向け 限定品 の転売も、競争相手がいて、思ったより儲からない状況もあります。 誰でも簡単にぼろ儲けができる訳ではなく、それなりのリスクもあるのですね。

 それでも、自分で何か新しい価値を生み出す訳ではなく、他人の作った作品や物品を右から左に動かすだけでお金儲けする姿は、それが商売としてありふれた行為なのだとしても、腑に落ちないし見ていて気分が悪くなるものなのでしょうね。

 おたく向けの数量限定のグッズや、人気で元々品薄の商品などでは、ネットオークションなどで欲しいと思っている人の足元を見てこれでもかの値段を吹っかけるので、そうした人たちのターゲットにされたアニメやマンガ、ゲームや特撮関係のグッズを集めている人にとっては、もう明白に 「敵」 のようなイメージになっています。

ネットオークションの登場で、「転売ヤー」 の転売問題も深刻化

 こうした転売行為は、いわゆる 同人ゴロ と呼ばれるグループや、その傾向を引き継いだ一部の同人誌専門ショップなどで、比較的初期からその行為が見かけられてきました。 中でも 「同人バブル」 とも呼ばれた1990年代にはそれが顕著化し、有名なサークルの希少な本などは5万円10万円当たり前な感じの、ありえないプレミア価格がついて取引されていたものです。

 その後同人の世界 (というか、市場) が大きくなると、逆にこうした 「会場 に足を運んでのゲリラ的な活動」 から、むしろ同人サークルと協力関係を持ち、例えば 書店委託 のような、ある程度きちんとした対応が取られるようになりました。 大手サークルの同人誌の 頒布数 も大きく、「イベントで人海戦術で買い集めて高値で売り抜ける」 ような危ない橋を渡らなくても、そこそこの利益で多売ができるようになったからですね (これはこれで、本来は趣味である同人の 商業化 という悪い問題と、良い可能性の両面がありますが)。

 また同人イベントや同人サークル側も対策を次々に講じ、例えば 限定本 を発行しない、1限 (1人1冊のみ販売) などの販売制限を設けるなどして 完売 を防ぐなど、「転売」 の旨みが薄められてきました。

 一方、ネット のオークションなどを通じて誰でもが気軽に商取引が行えるようになると、プロや業者と云うよりは、セミプロ、アマチュアの転売行為がむしろ増加。 サークル側は オークション禁止 などで対抗するものの、実効性に乏しいこともあり、こうした見ていて不愉快な行為がなくならない原因ともなっています。

新型ゲーム機や限定品の販売には、大量の 「並び子」 が

 また同様の行為は一般の店舗やサービスなどでも行われ、新型のコンシューマゲーム機が発売された時とか、マニア向けの限定商品の販売時にもかなり大規模な介入を行っています。 その方法も店頭販売の際に販売の行列に大量の並び子 (列に並ぶアルバイト、中国人やホームレス、老人などが多い) を送って買い占めたり、ネットでの抽選販売の場合は大量の副アカウントを作るなどして抽選券や抽選枠を奪うなど、粗っぽいあからさまな方法となりがちです。

 とくに実店舗の販売列に並び子を送るパターンでは、列の割り込みを行って他の客とトラブルとなる、販売数に達して終了となると並び子が店員に暴言を吐く、暴力行為を働くなどで警察沙汰ともなり、迷惑な上に不快だとの嫌悪を加速させる原因にもなっています。

転売ヤーに対する販売制限や、罠・トラップ作戦も

 批判が高まるにつれ、より積極的な転売ヤーへの制限や反撃がされるケースもあります。 例えば量販店が人気限定商品を販売する際、商品名を正確に口頭でしゃべれなければ販売しないとか、購入の条件に会計後その場でパッケージの一部を切って開封済みにすることへの同意が必要とか (未開封品ではなくなるため高く売れなくなる)、あるいはメーカーによる完全な受注生産として必要な人が必ず入手できる機会を設けるなどです。

 また店舗やメーカーだけでなく一般消費者による通報以外の反撃も起こっています。 オークションやフリマサイトに出品された転売品に捨てアカでいたずら入札を繰り返すなどです。 さらにより辛辣な罠・トラップ作戦もあります。 例えばマニアックで詳しい人でないと価値が分からない ジャンル の不人気商品に対してわざと 「これは転売されそうだ」「もし転売されたら俺たちが買えなくて困る」 などと ツイッター といった SNS煽り立て、それを見た転売ヤーがすっかり信じ込んで買い漁り、転売できずに大損して困り果てるよう仕向けるなどです。

 とくに後者は、日ごろ転売ヤーに煮え湯を飲まされている人たちが阿吽の呼吸や事前の示し合わせによって リツイート (RT) して拡散したり、「転売されそうなら俺も買わなきゃ」「もう転売されてんじゃん、やべー」 などと調子を合わた リプ をする、フリマアプリに捨てアカでその不人気商品の高額出品をダミーで行って 釣る など、手の込んだ仕掛けをする大規模なものもあります。 結果として踊らされた転売ヤーは転売できない在庫の山を抱えて屍累々の状態となり、ちょっとした お祭り になるようなケースもあります。 転売ヤーはろくな商品知識もありませんし、そもそも転売行為はスピード勝負なところがありますから十分な確認もしづらく、こうした罠・トラップ作戦は効果てきめんな部分があります。

 さらに転売ヤーの個人情報を 特定 して 晒し たり、電凸 (いたずら電話や勤め先などへの苦情電話) や スネーク行為 (転売ヤーの周辺を嗅ぎまわる) を繰り返すなどもあり、ここまでくるとやりすぎというか違法行為かそれに近い行為となりますが、「転売ヤーはどれだけ 叩いて も良い」「パブリックエネミー (社会の敵) だ」 との空気になりつつあるのが現状でしょう。

転売は違法なのか?

 ちなみに業として中古の転売を行う場合、警察署に届け出を行い、古物営業法における古物商の許可を得なければいけません。 また業としてネットで 通販 を行う場合、特定商取引法に基づく表示 (販売責任者名や連絡先、販売価格や手数料、返品規約などの表示) をしなくてはなりません。 当然ながら、利益が出れば税務署に申告して納税もしなくてはなりません。 これらの法律に基づき、警察やオークションサイトなどに対し違法業者の通報なども盛んに行われていますが、逆に云うと、これらをしっかり行っている適法業者を転売のみで罪に問うのは無理でしょう。 前述した通り転売それ自体はありふれた商行為であり、別に違法でも何でもないからです。

 一方で、企業がノベルティグッズや限定生産品の商品などを販売する際、その条件として転売を禁止・制限したり、転売する際の価格を指示するなりした場合 (この価格で販売せよ、プレミア価格にするな、など)、逆に指示した方が独占禁止法違反に問われる場合もありますので、法的に転売を禁じるのは現実問題としてはかなり難しいのが実情です。 また転売屋によって買い占められたからといって、一度限定品として販売したものを再販するのも独占禁止法違反であり転売屋から訴えられたら負ける可能性が高いですし、通報されれば消費者庁から再販を中止するよう行政指導される恐れさえあります。

 複雑化する現状に法整備が追い付いていないとは思いますが、そもそも法律で守るべきなのは市場の公平さと自由な競争、および物品売買でしばしば弱者的立場となる消費者の利益です。 身も蓋もない言い方をすると、他の消費者と同じ方法で商品を購入した転売屋こそが法律で守るべき消費者であり、自由な競争に敗れて買えなかった人はそもそも消費者ではないというのが現実となっています。

 ただし前述した 「古物商許可証」「特定商取引法に基づく表示」「納税」 を行っていない場合は明確に違法であり、現実問題として多くの転売ヤーがこれらを行っていないこともあり (特に税金関係は、8割から9割が脱税状態との話もあります)、迷惑で不快な転売ヤーを追い詰めるためには彼らが持っていないであろう倫理を問うよりも、これらを追求するのが実効性が高いかもしれません。

コンサートやライブ・イベントのチケット高値転売は違法へ

 なおコンサートやライブ・イベントの興行チケットなどの転売を前提とした購入や値を釣り上げた販売は 「ダフ屋行為」 として条例などで禁止されているケースが多く、その場合は転売行為そのものが違法となりますが、これもあくまで 「許可なく公道を使って商売している」 から規制の対象となっていただけで (迷惑防止条例や古物営業法による)、高値つり上げの転売そのものを規制するものではありませんでした。 公道を使わず古物営業法に基づく届け出や情報開示を行った上でネットでいくら高値で再販しても、原則として取り締まることはできなかったのですね。

 その後、転売を前提としてチケットを購入することが詐欺に当たるとの判断もあり、それに基づいた取り締まりなども行われましたが、「行くつもりだったけど予定が変わって行けなくなった人」 との区別が難しく、中長期にわたってよほど大量にチケットの転売を繰り返していない限り、ほぼ野放しのような状態が続いていました。 こうした状況もあり、興行の主催者側で、転売されたチケットの無効対応なども可能とはなっていますが、徹底するのは難しい情勢が続いていました。

 2019年6月14日からは、翌2020年開催予定の東京オリンピックを念頭に、いわゆる 「チケット不正転売禁止法」 が施行されました。 これにより、同様の転売行為が法律でも明確に違法となりました。 ネット上でキャンセルチケットの転売を仲介するサイトが広がったことにより、転売を目的にチケットを買いあさるネットダフ屋、いわゆる 「チケットゲッター」 と呼ばれる人たちも増えてきましたが、興行主催者側の転売対策、とくに購入者と入場者の本人確認はますます厳しくなり、徐々にではありますが、本当に欲しい人の手に渡る形になりつつあります。 まぁライブのチケットなどはそもそも絶対数が少ないので、結局ファンの多くが買えなかったりしますが。

 この施策は転売に苦しむ人たちの間でおおむね好意的に捉えられていますが、一方でチケット購入や入場時の本人確認にもっぱら日本国内でのみ有効な手段が用いられているため (身分証明書や国内発行クレカや携帯電話番号など)、海外、とくに中韓台で日本文化に強い関心を持つ人たちを結果的に締め出すことにもなっています。 この法改正の後となる 2020年初め頃から世界的な感染拡大を引き起こした新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) により、訪日外国人観光客は実質的に皆無の時期が続きましたし、各種ライブなども中止が相次ぎ、その影響は限定的でした。  しかしコロナが収まった頃に、これはこれで問題が深刻化するかもしれません。 何しろ海外のファンが日本の声優ライブなどに参加するのは、実質的にほぼ不可能になってますので。 これでは観光立国へとの掛け声もインバウンド需要も台無しです。

2020年には新型コロナ関連で 「マスク」 などの転売も一時禁止に

 また新型コロナ関係で注目を集めた転売問題に、需要 が急増して市場から消えてしまった マスク (サージカルマスク) があります。 世界的にもマスク不足が叫ばれる中、国民生活安定緊急措置法の政令改訂 (3月10日決定、15日から施行) により、購入価格より高い価格での転売行為が禁じられることとなりました。 違反者には懲役または罰金が科せられるようになり、6月には逮捕者も出ています (その後解除)。

 新型コロナ関連ではこのほか、トイレットペーパーや消毒液なども買い占めや転売行為にさらされ、テレビなどでも連日報道。 迷惑な 「転売屋」 という存在が、世間一般にも負のイメージとして極めて強く 認知 されるきっかけともなりました。

悪いところばかりの転売ヤーの社会的意義は?

 法的問題はともかく、イメージ的には全く取り柄無し、悪いところばかりな感じがする転売ヤーですが、二次流通それ自体には問題はありませんし、メリットというか存在する社会的意義のようなものもないわけではありません。

 例えばほとんどの人が無価値だと思っていて死蔵あるいは廃棄されているものを市場に引っ張り出し、誰の目にもはっきりわかる 「値段」「金額」 という価値を示して世の中に訴求する点では、古物商、美術商と呼ばれる人たちの活動と同様の社会的意義を持っているでしょう。 大昔の子供向けの玩具や絵本、マンガ誌の類がマニアによって受け継がれ大切に保管されていますが、こうした分野の物品が失われることなく現存しているのは、動機や目的はともあれ結果的に転売行為が果たした役割が決して小さくないでしょう。

 また美術の世界では、一次市場 (プライマリー・マーケット) と二次市場 (セカンダリー・マーケット) がありますが、画家や作家がギャラリーや百貨店の展示即売会を通すなどして直接美術品を販売する一次市場だけでは、作家にあまり経済的な恩恵がありません (とくに実績のない若手の場合は)。 二次市場があってしっかり機能し、優れた作家の作品がオークション等で高値をつけられることによって、その作家の作品に経済的な価値が裏付けられて一次市場も盛り上がり、そのサイクルの中ではじめて正当な評価と十分な経済的恩恵が与えられたりする場合もあるんですね。

 二次流通それ自体は作家に直接お金が回る仕組みではありませんし、単に美術品を投機対象にしているだけだとの批判もあります。 美術や芸術がお金儲けにばかり走っても面白くありませんが、さりとて他に作家の作品に経済的な価値をつける方法は現実問題として極めて少なく、また作家に十分なお金が渡らなければ次の作品も生まれず、新しい才能がその世界に入ってくることもなくなってしまうでしょう。 画廊などを中心とした美術市場はコミュニティとしての性格もあるので、単なる限定品の転売行為とは並べられませんが、この辺りはバランスの問題だったり本音と建て前も含め、なんとも難しい話ではあります。

転売ヤーを減らすためにできることは

 まずは何があっても転売ヤーから物を買わない、すなわち私たちが転売行為への加担をしないのが、転売ヤーを減らす第一歩でしょう。 それと同時に、転売ヤーが利用しているオークションサービスやフリマアプリそのものへの、利用者側からの意思表示やアクションが大切でしょう。 なぜなら手数料や送料などを考えると、転売行為によってもっとも利益を得ているのがフリマアプリの運営企業だというケースが少なくないからです。

 個人が発売されたばかりの人気商品を売価とかけ離れた高値で何度も複数出品しているなどというあからさまなケースなどは、もはや転売行為以外はまず考えられない状況なのですから、規約でお題目を唱えつつ放置しているのは、上場企業の社会的責任を放棄していると見做して良いでしょう。 利用者として、あるいは社会の一員として、彼らの企業倫理は厳しく正されるべきでしょう。

 倫理観も何もない転売ヤーを少しでも減らすには、転売行為の旨味を奪い、周囲から兵糧攻めにするしかないのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2002年8月20日)
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