コミケに参加せずに参加したふり… 「エアコミケ」
「エアコミケ」 とは、世界最大の マンガ や アニメ、ゲーム など創作系の祭典 コミックマーケット (コミケ) に、実際は 参加 していないのに参加しているフリをすること (エア参加)、とくに ネット で冗談や嘘の参加報告を 書き込む ような人や行為を指す言葉です。
コミケに行きたいけれど事情があって行けない人による単なる ネタ やギャグの場合もあれば、コミケやそこに集う参加者、端的に云えば おたく や 腐女子 らに何らかの反感を持つ人が、でっち上げた話で批判や罵倒をするために行う場合もあります。
前者のネタでいえば、入場のための待機列がすごいことになっているとか、なのは完売 のように人気の ジャンル の 頒布 や販売がすごいことになっているみたいなもの、いかにも創作っぽい奇人変人の目撃談を面白おかしく行うなどがあります。 またありえないけれどありえそうでもあるクスっと笑えるエアコミケネタを、それと分かるような形で 大喜利 として書き込むこともあります。 その場合、釣り などを意図したものでないのなら、「#エアコミケ」 といった形で ハッシュタグ で明示するのが暗黙の お約束 となる場合もあります。
一方後者の批判や罵倒の場合は、ルールや マナー を守らないおたくや腐女子のせいで混乱や トラブル が生じている、事故や事件、何らかの性的被害が生じているとか、周辺住民が迷惑しているといったものが代表的です。 その他、キモイ だの臭いだのウンコ漏らした奴がいるだの云いたい放題です。
いずれも実際に 現場 にいる人からすると嘘がバレバレのケースも少なくなく、とくに事故や事件に関しては何万人もが現場にいて他に目撃例がない、実際に近所に住んでいる人から地域住民がそこで迷惑を感じることはないのではないかなどの客観的な情報を元にした反論などであっさり論破され嘘が発覚したりもします。 しかし同じようにおたくや腐女子に反感を持つ人が面白おかしく嘘情報を 拡散 するなどして、あたかも本当にあったのかのような誤解が広がることもあります。
なお実際にその場にいなかったり自分がやっていないことを 「エア〇〇」 と呼ぶのは エアプレイ (エアプ) が元になっており、若者やネットの世界ではとてもポピュラーな言い回しや表現のひとつです。
コロナ禍の中、ついに公式のエアコミケが開催
一般にエアコミケ自体はネタにしろ悪意のあるデマにしろ自然発生的に生じた ネット民 のお遊びのようなものですが、2020年代になってコミックマーケットを 主催・運営 する準備会 公式 のものとしてネットで開催されたこともあります。
理由としては東京2020オリンピック・パラリンピック開催によっていつもの夏コミの時期に イベント会場 (東京ビッグサイト) が使用できず開催時期を5月にしたところ、2020年に世界中で猛威をふるった新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) による人が集まる イベント の自粛ムード、さらには政府による緊急事態宣言が直撃し、中止を余儀なくされたことです。 予定していたコミックマーケット98 (C98) を開催するはずだった2020年5月2日〜5日を 「開催日当日」、その前日の1日を 「設営日」 として、リアル開催できない中でもせめてネット (主に SNS の ツイッター) の企画として盛り上がろうといったものでした (エアコミケ on Twitter)。
準備会ではエアコミケ専用の アカウント (@comiket_air) を作り、ツイッターで つぶやかれ る面白いエアコミケツイートを リツイート するなどして 共有 し、失われた C98 の気分だけでもネット上で味わうものとなっていました。 その後も新型コロナ禍が続く中、エアコミケ2、エアコミケ3がネット上で行われ、宅コス によるエアコスプレやネット上での 作品 や 同人誌 の公開や頒布、書店委託 を支援する催しなど、様々な企画が実施されることとなりました。
なお中止や延期 (C99) がされていたリアルイベントのコミケは2年間のブランクを経て2021年12月30日〜31日に開催されますが (新C99)、内容はかなり変化しています。 サークル参加 する 同人サークル の縮小 (1日当たり約10,000サークル)、サークルチケット の枚数減 (3枚から2枚へ)、一般参加者のチケット事前予約制の導入や人数制限 (1日当たり55,000人)、参加者のワクチン接種を証明する書類の提示や マスク 着用、検温、消毒用アルコールによる手先消毒の徹底、密 を避ける工夫や 配置、一般入場よりも早く会場に入れるアーリー入場チケットの導入や 見本誌 を集める仕組みの変更など、感染対策に力を入れたこれまでのコミケとはまるで異なる形となりました。 筆者 も 一般で参加 しましたが、スペース を得ながら自粛や止むを得ない事情で参加を見送るサークルもあり、あまりに閑散としたビッグサイトの ホール やコスプレ広場などは、ちょっと現実感のないものでしたね。
コロナ前と後とで日本人の行動様式や意識・文化の一部に変化がありましたが、当然おたく文化にも変化がありました。 これはコミケなどの 同人イベント だけでなく ライブ や演劇の 舞台 などのリアルイベント全般に云えることですが、完全に元に戻るのがいいのか、それがいつになるのかだけでなく、変化した部分に不可逆のものがあったとして、それはそれでまた別の何かを生んで全体としてより良い方向に進むことを願わずにはいられません。 さすがに事態が深刻過ぎて 「禍を転じて福と為すといいよね」 などと軽々しく口にする気分にはなれませんけれど。 個人的には平時であれば導入に大きな反発を受けかねないアーリーチケットについては、迷惑な 徹夜組 がほぼいなくなった点で、メリットが大きいかなと思います。
ちなみに東京オリパラのために建設・運営されていた臨時の施設に青海展示棟があります。 ビッグサイト最寄り駅であるりんかい線の国際展示場駅の隣、東京テレポート駅を出てすぐ左側に位置し、コミケ中は企業 ブース などが入っていました。 本館との行き来には夢の広場や夢の大橋を含む長大なプロムナードを横断する必要がありました。 オリンピックの延期に伴い当初予定より1年間長く稼働したものの、2022年3月までに解体し、その後は駐車場となっています。





