同人用語の基礎知識

エコーチェンバー/ エコチェン

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狭い人的ネットワークで同じ意見が共鳴… 「エコーチェンバー」

 「エコーチェンバー」 とは、ネット、とくに ツイッター といった SNS を利用する中で、自分と同じような趣味や興味・関心事、思想・信条などを持つ人と フォロー などを通じてつながり、その結果自分と同じような意見や主張ばかりを毎日見続けお互いに評価し合うことによって、それが世の中の多数派から支持される優れたもの、正しいことのように錯覚し、その人の中でその意見や主張がひたすら大きく強化・増幅してしまうことです。

 言葉の由来は、小さな部屋の中で音が四方八方から反響し続けて増幅される現象、エコーチェンバー効果 (Echo chamber) から来ています。 日本語で近い ニュアンス の言葉としては、蛸壺 (たこつぼ) とか村社会、駄サイクル あたりでしょうか。 いずれも外部から孤立し、排他的になり、自分たちの殻の中に閉じこもって煮詰まっていくような状態を指します。 より俗な言い回しでは 「オナニーの見せ合いっこ」 もあります。

元々ネットにはつきものながら、SNS ではより強い影響が

 伝統的な旧来のメディア、例えば新聞や雑誌、テレビといったものは、マス (大衆の集まりや集団) に向けて行うため、様々な情報や考え方がごっちゃ煮で提供されます。 媒体の種類や違いによって多少の傾向はあるものの、自分が興味のない話も流れてきますし、自分の意見や主義主張とは真逆のそれだって流れて、つい目を止めることだってあるでしょう。

 一方ネットの場合、旧来のメディアと異なり、膨大にある様々な媒体や情報の中から、自分で取捨選択して調べる必要があります。 この場合、どうしても自分にとって好ましい情報ばかり選び取り、逆の立場や耳に痛い意見などは無意識に遠ざけてしまう傾向があるでしょう。 さらに一部のネットサービスでは、レコメンドやサジェストといった機能により利用者の利用履歴や他の利用者の傾向から 「おすすめ」 を行うものもあり、ますます 「似たような情報」 が目の前に並び、選びやすくなってしまいます。

 こうした偏った情報収集の形、すなわち 「自分が好きな情報ばかりに触れ続けること」 に対する危険性は、かねてからネットにつきものだとして、「視野が狭くなる」「偏った情報入手手段で情報を受け取り続けることで固定化されてる」 と警鐘が鳴らされていました。 その後 SNS が登場し、自分に近い意見や主張の持ち主とつながる (フォロー)・逆の立場の人を視界から消す (ブロック) が当たり前になると、見える範囲はどんどん狭まり、多様性も失い、ますます強まる結果となりました。

反対意見は見えない存在に

 ツイッター登場と SNS の本格普及以前は、掲示板 2ちゃんねる などといった誰でも 書き込め て特定利用者を排除しづらい匿名系コミュニティの存在が大きかったものです。 同じネットの世界ではありますが、こちらの場合は反対意見も続出し、場合によっては 殺伐 とした誹謗中傷 レベル の反論や バッシング といった別の問題が生じつつも、馴れ合い などによる同調圧力は比較的生じにくい 環境 でした。

 それでも 空気嫁 など有形無形の同調圧力は人が集まる場である以上、当然存在しましたし、板や スレ によってはエコーチェンバーと同じ共鳴・増幅効果 (しばしば 祭り の形で盛り上がります) や意図的な誘導、対立煽りネットde真実 のような思い込みなどもありました。 あまりに目障りなユーザーを NG 扱いにしたり、場合によってはアク禁 (アクセス禁止/ 出禁) にすることもありました。 しかし SNS とスマホの普及以降とはだいぶ異なる空気感があったように思えます。

 ツイッター以降は 「反対論者や意見」 は個々人が丸ごと容易にミュートやブロックができるので、開かれたネットの場にあってもほとんど同質性の利用者だけが集う密室のような状態となり、文字通りいつまでも同じ声がひたすら反響し合う結果が強い空間と云えるかもしれません。 さらに一部の利用者らは 「ブロックすべき アカウント のリスト」 などを作成して 共有 し、「過去に一度も関わった事がない人」 とも先んじて動線が途絶する状態 (先行ブロック) となっています。 プロバイダや国・地域でくくったアクセス制限ならともかく、特定の主義主張のみでくくった数千人から数万人にも及ぶ事前・事後ブロックなど、掲示板時代には見られないものです。

 もちろん罵詈雑言や誹謗中傷の類をいちいち受け取っていては精神が疲弊しますから、あからさまに攻撃的なアカウントを排除するのは精神衛生上も必要な措置でしょう。 しかし穏当な意見や誤りに対する反論や忠告などを、中身も見ずに特定のキーワードだけで 精髄反射的 に判断してブロックしたり、いわゆる 「効いてないアピール」 のつもりか 「今日は100人ブロックした」「1万人ブロックした」 などと吹聴している人の意見は、ほとんど無価値だと云っても良いでしょう (逆に周囲は、どこまでやったらブロックされるかで遊んだりします (ブロックチャレンジ)。

 人の意見を聞く気のない人の発する意見には何の価値も力もなく、話し合いや相互理解、修正もできませんから相手にするだけ無駄でしょう。 自らの誤りを他人に指摘されても改められない人に、世の中を良くすることもできないでしょう。 異論反論のチェックとして、ブロックせずに生暖かく見る程度で良いのではないかと思います。

語れば語るほど思考や意見は先鋭化し過激に

 また フォロワー の数や 投稿 に対する リツイートファボ といった反応の数が可視化されるため、いきおい過激な意見を発してより注目を集めたいという 承認欲求自己顕示欲 による言論の極端化も起こりやすくなっています。

 掲示板の時代にも 同意禿同 (激しく同意の意味) がつくことでそれらが満たされてはいましたが、2ちゃんねるで スレッド ひとつあたりの コメント 数は 1,000、2ちゃん外の 実況系 の掲示板でもせいぜい 5,000 程度なので、反応が多いといっても1つの レス あたりでつく反応はせいぜい数十個程度です。 祭りや 炎上 ともなれば1つのレスがあちこちに コピペ されて全体では万単位の反応となることもありましたが、ツイッターではより頻繁に本人のレスそのものに 万バズ (万単位の反応が返ってくる) が生じますし、より強烈に承認欲求を満たすものとなるでしょう。

 どっちが良い悪いというよりはそれが時代の流れなのでしょうが、本来なら スルー されてしまうような極端な意見でも大学教授やら政治家やらの権威付けをした上での発信では信憑性が高まりますし、それらの人々が インフルエンサー として情報散布を行うことで、逆の立場の人たちとの間に圧倒的な距離が生じ、掲示板時代とはまた次元の違う社会の分断が目に見えるほど拡大するようになったのは感じます。

エコチェンによって自分の意見が偏ってないか確認することも

 もしかして自分の意見はちょっと偏っているかも…と自分で気づけるかどうかは大きな問題です。 筆者 も含め、人間誰でも自分のことはなかなか自分ではわからなかったりしますが、活発にやり取りしていた古くからの友人たちの反応が減っている、別に生活環境などは変化してないのに以前の自分ならまずしなかった テーマ の話ばかりを最近は毎日やっている…という状況は、わりと分かりやすい赤信号でしょう。

 また他の意見への反応が賛同と否定の両極端になっていたり、反論する際に根拠を示さず相手の 人格を攻撃 するようなものばかりになったり、嘘つきだの消えろだの死ねだの日常生活でまず使わないような攻撃的で 強い言葉 がどんどん出てくるようだと、かなり深刻な状態だとも云えます。

 もしそう感じられる部分があるなら、自分の アカウントログイン しないフラットな状態でツイッター全体の タイムライン を眺めてみたり、自分の1年前、2年前の書き込みを振り返ってみるのも良いかもしれません。 自分のアカウントや今の自分の目からは見えない多様な意見や意外な気付きを得られるかも知れません。

意図的に閉じた場へ誘導するカルト・詐欺団体

 いわゆるエコチェンとは異なりますが、カルト宗教や投資詐欺団体、自己啓発・陰謀論・スピリチュアル・自然派系の怪しげな団体・集団などは、ある意味エコチェン的な効果を最大限発揮している存在だと云えるでしょう。 閉じた場での勧誘や説得、外部との連絡の遮断などは、認知 を歪め正常な判断力を奪い、自分たちの価値観を刷り込むマインドコントロールや洗脳のためのもっともありふれた方法であり、昔から問題視されるものです。

 これはネットの時代においても同様で、対象者を半監禁のような環境に置く、携帯電話やスマホを奪って外部との連絡や情報を断つ、外部に情報を漏らさないようにするといった方法から、近年では特定の情報にのみアクセスができるような特殊なスマホを販売したり、手持ちのスマホにその環境を構築するサポートを行うなどして利用すると云ったケースも増えてきています。

 これらはおおむね android などのオープンソースソフトウェア の OS を独自拡張や改造して市販のスマホに良く分からないアプリなどと一緒にインストールしたもので、仲間同士との緊密な連携を取ると同時に、利用者を監視したり、自分たちにとって都合の悪い情報に触れることが難しくなるような機能を持つなど様々な特徴を持っています。 利用者本人の自主的な情報遮断と同等の環境を外部から作り出して提供するような活動を行っているのですね。

 まともな人間ならこんなものを手にしようとは思わないでしょうが、不幸ごと が重なって心身が耗弱状態にあったり、親しい友人に勧誘されて断り切れないなどで一度足を踏み入れると、ずっぽりとはまり込んでしまうこともあります。 どんなバカげた話でも、毎日毎日その話ばかりされたら、それに抗うのはかなり難しいものです。 「自分は騙されないから」 などと興味半分に見るのも危険ですので、十分に注意するようにしましょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2019年12月12日)
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