百合と薔薇…その語源と定義
「百合」(ゆり) とは、女性同士の同性愛、いわゆる レズ (ガールズラブ/ GL) の事です。 ただし 同人 の世界で 「百合モノ」 と云えば、基本的に女性作家が女性の為に描いた作品を指す場合にのみ、使われます (本来は)。 それ以外の場合は 普通に 「レズ」「GL」 と呼んでいるようです。
「百合」 そのもののプレーンな意味合い、定義としては、思春期の女性同士の友情とは異なる強い愛情…なんてのが代表的ですが、「レズ」 に比べるといくぶん精神的なつながりを重視すると云うか、もっと直接的に云うと必ずしも肉体的な性的行為を必要とはしないプラトニックな恋愛感情だと考えられているようです。
なお百合作品が好きな人、そうした傾向の作品を描く人は、そのまんまの 「百合」 の他に、とくに 「姫女子」 と呼ぶ場合もあります。
「薔薇」 の対義語として 「百合」 誕生
制服 百合族/ 1982/ 那須博之 |
「百合」 の語源は 「ゲイ」(ホモ/ ボーイズラブ) を示す俗語 薔薇 の対義語として、ゲイ雑誌 「薔薇族」 の編集長、伊藤文學氏 (1932年3月19日〜/ 現ロマンの泉美術館館長) が用いたのが最初とされています (同誌に設けられた女性 読者 向けの 「百合族コーナー」 なる読者投稿欄名称がその発祥)。
なお同雑誌名の語源ともなった 「薔薇」 名称は、「古代ギリシャでは、男性同性愛者は薔薇の木の元で互いの愛を確かめ合った」 との伝承よりネーミングされた映画 「薔薇の葬列」(1969年/ 脚本・監督/ 松本俊夫)、および雑誌 「血と薔薇」(1968年11月1日発行)などのタイトル名から由来します。 「百合」 の場合も 「花の比喩には花の比喩で」 ということなのでしょう。
ポルノ作品として一般に広まる 「百合」
当初は女性同性愛者同士の美しい隠語といった感じの言葉でしたが、その後日活ロマンポルノにて制作された 「制服 百合族」(1982/ 監督: 那須博之/ 脚本: 斎藤博/ 出演: 山本奈津子/ 小田かおる 他)が大ヒット。
これを第一作として 「セーラー服・百合族」「OL百合族19歳」「女教師 百合族」 などの 「百合」 作品が人気シリーズ化され、雑誌などマスコミもこぞって取り上げるようになりました。 一般にも 「百合」「百合族」 との名称が広く 認知 され伝わることになったのは、この頃からです (ちなみに 「百合族」 ってのは、80年代の流行語の1つとも呼ばれています)。
ポルノ映画の登場によって広く知られるようになった百合は、いつしか非プラトニックな肉体関係を伴う同性の性的関係を強く指し示すような言葉になりましたが、エロ百合の言葉として後に現れたレズに取って代わられ、現在はまたプラトニックな言葉として復権しつつあるようです。