進んだ国・地域から、新しい商売を持ってくる…「タイムマシン商法」
「タイムマシン商法」 とは、自分が商売している国や地域より進んだところで流行っているもの、人気になっているサービスなどを真似して、ビジネスすることです。 時間差商法、タイムラグ 商法などと呼ぶ場合もあります。
例えば豊かな国で自動車が大人気だとすると、今は貧しい国も将来豊かになったら、同じように自動車が人気になると予想できるでしょう。 あるいは ネット が普及した国で特定の webサービスが人気になっていたら、その他の場所でもいずれ同じようなサービスが受け入れられ人気になると予想がつきます。
通常は先行した外国の商品やサービスの仕組みなどをそっくり真似る、あるいはパクるような商売の仕方となり、独創性がない点で批判や揶揄の対象となりがちです。 しかし 「よそから進んでいるもの、優れているものを持ち込む」 というのはある意味で商売の基本でもありますし、あるいはそれなりに目利きが必要だったりもするので、功罪はケースバイケースといったことになるのでしょうか。
まぁ一般的には、「単なるパクリだ」「ビジネス手法を コピペ しているだけ」「クローンビジネスだ」 との ネガティブ なイメージで捉えられていますが。
海外との垣根や情報の伝達速度があがると、タイムマシンも追いつけない…?
こうした呼び方は、日本においてはアメリカなどの先進サービスの模倣版を日本国内で展開するケースを指す場合が多くなっています。 誰しも 「もしタイムマシンがあって5年前に戻れるなら、その後現在までに何が流行ったかがわかっているのだから、商売で成功できるはずだ」 と思うことがあったりしますが、相手国が自国 (あるいはビジネスを立ち上げようと思っている国) に対して5年先を行っているのなら、これを擬似的に実現できることにもなるでしょう。
また逆に、日本で流行っているものを、日本より遅れている国や地域に持ち込めば、海外で成功する可能性も考えられます。 ただし、それぞれの国や地域によって文化や国民性、好みなども異なりますから、単に進んでいるだけ、単に海外で人気を得ただけでは、結果が伴わない場合もあります。
また現在のように海外との人の流れ、情報の流れが早く、かつ大きくなると、「タイムマシン商法の業者同士」 の競争も発生しますし、webサービスなどは真似したサービスが広まる前に本家が日本に乗り込んできて席巻され、まるで勝負にならない場合もあります。
タイムマシンで稼げるリードタイムをどう活用するか…時間差タイムマシン
こうした商法には大きなリスクもあります。 単に 「パクリ」 が知的財産権を犯すとか、それによって悪いイメージを持たれる危惧があるといった副次的なものではなく、この商法 (あるいは経営・事業展開) に密接した本質的で重大なリスクです。
例えば冒頭で述べた自動車の例で云えば、成長している途上国に目をつけいち早く自動車ビジネスを展開すれば、機先を制することは可能でしょう。 しかしこれは逆に云えば、「先進国には当然存在する、自動車に対する市場や様々な 環境」 が、その国にはまだ存在しないということでもあります。 その国の国民の自動車に対する意識を変えるために苦労して素晴らしさを訴え、また法律なり規制なりインフラなりを整備する働きかけを政府に対して行い、新しく市場を作る必要があるわけです。 そして市場ができたところで 「さあ大儲け!」 しようとしたら、本家である先進国の自動車が強大な資金力やブランドをバックに直接乗り込んで来て、「本物と ガチ の競争」 をしないといけなくなってしまったりします。
これがネットの webサービス といった進化と競争が激しい IT の分野では、数年どころか数ヶ月、場合によっては数週間で 「本家商品・サービスの乗り込み」 が起こるケースもあります。 僅かなリードタイム内でユーザーを囲い込むなりブランドを確立するなりできなければ、「儲けるどころか、進んだ地域の業者が乗り込んでくるための環境整備や地ならしを無償でやってあげただけだ」 といった骨折り損のくたびれ儲けになる可能性があります。
「パクられる側」 である先進サービス・商品を展開している大企業が、それを狙って時間差攻撃を意図的に行うケースもありますし、さらにタイムマシン商法を行う企業や人たちの中にも、時間差タイムマシン商法 (時間差時間差商法/ あえて最初にビジネスを展開せず、2番手、3番手の後追いタイムマシン展開をする) とでも呼べる戦法を取る場合もあります。 ビジネスの世界は出し抜いたり出しぬかれたりは当たり前とは云え、そう簡単にお金儲けができる商法もないということなのでしょう。