意図的にやっているのか、それとも不可抗力か…「品薄商法」
「品薄商法」 とは、メーカーや企業などが生産・出荷・販売する製品の数を意図的に少なくして売り切れなどを故意に発生させ、消費者に対し品薄のムードを作って人気があるように見せかけ演出したり、製品に対する希少性を 煽って 消費者に欲しいと思わせるような心理的誘導を行う 「あざとい商法」 のことです。
「品薄商法」 の他、「売り切れ商法」「品切れ商法」、あるいは ハングリーマーケティング (Hungry Marketing/ 飢餓感マーケティング) などと呼ぶ場合もあります。
判定が極めて難しい 「品薄商法」
ただし企業側が意図して生産や出荷・販売数を抑えているのか、単に生産が追い付かず、結果的に数が少なくなっているだけなのかは判断がとても付きにくいものです。 また欲しいのに手に入らない人が、思い込みや腹立ち紛れに 「品薄商法だ」 と決めつけ、ことさらに主張する場合もあり、本当にそれが 「品薄商法」 であるのかどうかは、難しい問題といえます。
さらに場合によっては、品薄の製品を作っている企業と競合関係にある同業他社や、その企業や製品を快く思わない アンチ 消費者、クレーマーが、「あの会社は品薄商法をやるような汚い会社なのだ」 などと誹謗中傷しているだけの場合もあります。
なお、あらかじめ少量生産であるのを宣言していたり、限定品 であるのを発表しているような販売方法 (いわゆる 「限定品商法」) も、場合によっては 「品薄商法」 と呼ぶ場合があります。 ただしこちらの場合は、あくまで生産数量の 完売 が目的で、事前にアナウンスもしているので、ハングリーマーケティングの一種ではありますが、全く同じ商法という訳ではありません。
「品薄商法」 はバイラル・マーケティングの一種?
この手の商法は、販売方法と云うより広告宣伝の一種と考えられ、例えば飲食店にサクラを動員し、長い行列を作るなどの 「やらせ広告」、姑息な広報活動の一環ともなっています。 こうした宣伝方法は、バイラル・マーケティング とも呼ばれます。 また 「生産が追い付かずご迷惑をおかけしています」 などと企業の担当者が謝罪するなどして、それがニュースとなり結果的に宣伝となる場合もあります。 意図的にやっているのならば、こういったマーケティングは消費者に対し不誠実な ノイズ・マーケティング でしょう。
こうした宣伝がある程度いきわたると、たいして欲しくもなかった商品が貴重なものに思え、人によっては興味がなかったのに欲しくなったりもしますし、たまたま店頭で見つけたら、買えるうちに買っておこうなんて思わされたりもします。 実際に行われているのなら、企業としては製品の質で消費者にアピールするのではなく、消費者心理に付け込むだけの方法で宣伝を行うと云う、とても不誠実な対応と云えるでしょう。
もっとも、企業と消費者の間には流通業者と小売業者、販売業者がいますし、「売れるものをなぜ作らないのか」 との批判は株主などからも当然でるでしょう。 物余りの時代、小売販売業者はメーカーよりも力を持つ場合も多く、優越的地位から 「売れるのだからもっと作れ、出荷しろ」 との強い圧力をかけられ、むしろ増産のために無理な設備投資をして失敗しているケースの方が多いような状況です。
また品薄で消費者心理に付け込んで購買意欲や話題性をいくら煽ってみても、それがいつまでも続くわけではありませんし、同業他社が類似商品を作ってすぐに追従してきます。 そう思惑通りに簡単に 「品薄商法」 などが行え、易々と成功を収められるような状況ではないと云えます。 消費者の好みが多様化し、同一製品の大量生産よりも多品種の少量生産が増えていること、多くの商品には販売時期の 「旬」 があることを考えると、絶好の販売機会をみすみす手放す 「品薄商法」 は、リスクばかりが高い不効率な宣伝方法、商法のような気もします。
中には意図的にこうした活動を行っている企業も実際にはあるのでしょうが、多くの場合で消費者側の思い込みや邪推が原因となっているような感じがしますが、どうなんでしょうか。
主力商品と戦略的商品、賢い消費者として見抜く目を持つためには?
企業の出す商品には、売上や利益を確保するための主力商品と、直接売り上げや利益は見込めないが、長い目で見た時に企業イメージやブランド価値を高めたり、主力商品の販促として採算度外視で販売する戦略的商品があります。 主力商品でリスクばかりが高い 「品薄商法」 を行うのは難しいけれど、戦略的商品ならばそのリスクを取りやすいという事情もあります。
故意なのか不可抗力なのかはともかく、企業側は自社の持つ商品などを巧みに戦略的に組み合わせ、様々なマーケティング手法を使って販促しているのでしょう。 広告や 商業 メディアなどの流す情報を鵜呑みにすることなく、その商品が自分にとって必要な物、欲しい物なのかをよく吟味して、流されないようにしたいものですね。
筆者 を含め、物欲の権化でもある おたく な人の場合、結構難しかったりもしますが…。