同人用語の基礎知識

マルチクリエイター

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何をやってもそつなくこなす…神に愛されし者? 「マルチクリエイター」

 「マルチクリエイター」 とは、マルチな (multi/ 複数の) 分野に渡って創作活動 (create) を行っている人のことです。 例えば を描いたり音楽を作ったり映画や ゲーム も創る人、といったイメージとなります。 芸能活動 (タレント活動) も行っている場合、マルチタレントと呼ばれることもあります。 似た言葉にオールラウンダーなどもあります。

 このあたりは、何か特定の創作活動に絞ってやっている人からみると、ただひたすら多芸で様々な分野に才能がある人、神様愛され たあまりに特別な存在に感じられます。 それぞれの分野に特化した専門家が大勢いる中、それらと伍していくつもの分野で存在感があるマルチクリエイターはあまりに眩しい存在です。 しかし本人は 「好きなことをやってるだけ」「気が付いたらいろんなことに手を出していた」「器用貧乏なだけ」 みたいな自然体でいることが多いでしょう。 このあたりの感覚の差も、外から見て 「特別な存在」「天才」「人生何周目だよ」 に見える理由かもしれません。

創作活動は、もともと垣根を越えやすいもの

 創作活動 (のみならず、人が行う営為は全て) は、おおむねクロスオーバーな要素を持っているものです。 形やルールや名前が違うだけで、やることは同じようなものも結構あります。 また一見単独の能力やスキルに見えても、実際はマルチなそれを求められる創作や 趣味 もあります。

 例えば漫画家。 一般的には漫画家はそれだけでひとつの創作活動だと思われがちですが、実際は絵を描くことと 物語ネタ を考えることとはまるで異なる才能や努力、技術を必要とするものです。 またシンガーソングライターなどは、作詞と作曲 (さらに編曲)、加えて歌唱と楽器の演奏までする点で、それ単体でマルチクリエイターだといって良いでしょう。

 しかし一般でわざわざマルチクリエイターと呼ぶ場合は、漫画家で音楽活動もしているとか映画も撮るとか、シンガーソングライターで絵を描いてドラマ出演で演技もするような場合に使われるケースが大半でしょう。 そしてやってみた結果がいまいちな内容だった場合は、「本業の マンガ で調子に乗って音楽や映画にまで手を出した」「本業の歌が売れなくなってきたから歌の知名度を使って絵を描いたり役者デビューしただけ」 などと批判され ネガティブ に受け取る人すらいます。 自分がある分野に絞って活動している場合、他の分野の人間がやってくるのを好ましく感じない人だって大勢います。

 マルチクリエイターを自称する人はあまり多くはありませんが (いるにはいますが)、他人からそう呼ばれる場合はおおむね美称と蔑称とに別れるものなのでしょう。 逆に云えば職業として長年にわたってマルチクリエイターと呼ばれる人は、紛れもない本物ということになるのかも知れません。

ネット時代はマルチクリエイターが当たり前の時代に?

 職業に比べると、趣味の分野では必要に迫られてマルチクリエイターとして活動するしかないという部分はあります。 友人らと グループ やチームを作って役割分担して創作するケースもありますが、仕事と違って趣味の場合、やるかやらないか、どこまでやるかは完全に本人のモチベーション次第なので、その 作品、あるいは創作そのものに対する情熱の違いから空中分解しがちです。 また誰かに頼もうにも ネット のない時代は頼める人を探すだけでも一苦労でした。 もちろん仕事ではないので利益が出ることも少なく、十分な謝礼を支払うのもなかなか難しいでしょう。 そもそも若い頃は自分のやりたいことが定まっていないことも多く、あれもやりたいこれもやりたいで、色々な活動に手を出して自力で何とかしようとしがちです。

 例えば小説の 同人誌 を創るとして、小説や SS を書きつつ同時に 挿絵 を描く、レイアウトや装丁といったデザインもするなどは、結構多くの人がやっています。 またゲームを作るなら、シナリオとグラフィック、BGM や SE の自作、そしてプログラミングと、全てをオールマイティにこなすことが結果的に求められがちになることもあります。 もちろんそれぞれで用いるツール類も違うため、様々なアプリを買いそろえ使いこなせるよう覚える必要もあります。

 これらはネットの時代となり、一部では緩和しています。 知らない人の描いた絵や作った音楽を手軽に知る機会が増えましたし、連絡したり協力を依頼することも昔と比べて格段に容易になりました。 無料や安価の フリー素材 なども出回っています。 しかし趣味が合う合わないはありますし、本当に自分の好きなものを作ろうとしたら、結局は一人でやるのが早いし自分の思いを形にしやすいというのはあまり変わりません。

 ニコニコ動画といった 動画共有サイト が人気となると、様々な動画作品が作られ アップロード されますが、初期の自作音楽系の人気クリエイター (初音ミク を用いるなどした、いわゆるボカロPなど) のマルチクリエイターっぷりは凄まじいものがあります。 作詞作曲してボカロ打ち込みをした上で魅力的な イラスト とクリックしたくなるサムネイル作成などを高レベルで同時にこなすような 「化け物」 が少なくありません (そしてそんな化け物たちですら、ボカロブームがなければ無数に存在するネット上の有象無象の作品群に埋もれて ネット民 から注目されずに消えていた可能性も高そうなのが恐ろしいところ)。

 また Vtuber なども、ガワとなる アバター自作絵 で制作 (セルフ受肉) した上で 実況 しているゲームも上手くてトークも面白く、あげくに自作した自身のキャラクターソングを歌ったり動画の 編集 も自分で行うような人が結構います。 「自分の創りたいものを作る」 という点でそれぞれの活動に違いはありませんが、実際は作業もそれに伴うノウハウもやることなすこと全て違いますから、それらを自由に使いこなせるように覚えるだけでもものすごい情熱が必要です。 あげくマーケティング的な手法を使って広報したり、高いコミュニケーション能力まで持っていたり。

 こうした色々な活動を行う人は、その後 活動者 と呼ぶようにもなっています。 何かひとつの活動に特化しているかしていないかを問わず、何かを創って人に伝えるという活動を網羅的に表現する言葉ですね。

 おたく と呼ばれる人で創作系に手を出すような人は、おおむね器用貧乏みたいな部分がありますし、その多くはあれこれ手を出して結局途中で投げてしまうなどして形にしたものを残すことが難しかったりしますが (マルチクリエイターにとって 「気になったもの何にでも安易に手を出す」 は重要な素質でしょう)、「自分の頭の中にあるものを外に出す」 道具は、選ばないということなのでしょうか。 凡人の 筆者 などは羨ましい限りです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2008年9月5日)
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