鉄道写真は楽しいけれど、様々な奇行や迷惑行為ですっかり害悪扱い… 「撮り鉄」
「撮り鉄」 とは、鉄道ファン (鉄オタ) のうち、もっぱら実在の鉄道車両の写真撮影を 趣味 や活動の中心に置いている人たち、鉄道メインの カメラ小僧 のことです。 動画 を撮ってニコニコ動画や Youtube といった 動画サイト に 投稿 する 「動画鉄」 も含める場合があります。 活動の場はもっぱら国内ですが、海外の鉄道まで守備範囲とする人たちもいます。
鉄道趣味には色々な楽しみ方がありますが、なかでも写真撮影は、その中でも比較的大きなウェイトを占める人気の楽しみ方でしょう。 鉄道には車両そのもののかっこよさや機能に基づいた乗り物や機械としての美しさがあります。 蒸気機関車や特急、新幹線といった技術の粋を集めた派手なものから、経済性を求めた 地味 ながら人々の生活に寄り添う在来線用の車両や貨物用車両、特殊な保線用車両やその編成まで種類も豊富で、様々な個性や魅力を持っています。 また走行中の写真撮影は車両そのものの美しさだけでなく、四季折々の海や山などの風景、街の佇まい、鉄道施設との組み合わせなどバラエティに富んだ切り取り方ができ、被写体としてのドラマチックな魅力に溢れています。
おたく っぽい楽しみ方としては、マンガ や アニメ などの創作物に登場した路線や車両を背景ごと再現するように撮影したり、その場所を 特定 するといった楽しみもあります。 また走行中の列車の撮影は技術的にも難しく、ブレやボケがなく、しかも車両の一部が フレーム (画面) からはみ出す (見切れる) ことなく全体をきれいに収めるには場所取りや的確な写真撮影テクニックが必要です。 機材を揃えたり技術を向上させるなどの創意工夫の余地が多く、限られたシャッターチャンスをモノにする撮影行為そのものにも楽しみや達成感があります。 良い写真が撮れたら専門誌へ投稿したり、鉄道フォトのコンテストに応募する楽しみもあります。
鉄道は地域ごとに運行会社や走行車両が異なり、旅先でしか見ることができないもの、その時代のその瞬間しか走っている姿が見られないケースも多いものです。 鉄道写真は自分が訪れた時の記録であると同時に、その時代の鉄道の姿、それを利用する人々の生活の記録としても機能します。 もちろん、遠くに出かけたらその地域の観光やご当地グルメを食べ歩く楽しみもあります。
写真撮影を趣味とする場合、被写体は数多くありますが、家族写真などを除けばもっとも身近な対象のひとつが鉄道であり、カメラが一般に普及した頃から人気の題材として親しまれてきた歴史があります。 一粒で何度でも美味しい、メジャー な趣味としての 王道 の貫禄があります。 だからこそ、日本はもちろん世界中に撮り鉄がいるのでしょう。
もはや社会の敵扱いされる 「撮り鉄」
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旅先の鉄道撮影は楽しいもの (同人する子) |
鉄道ファンは対象があまりに 日常 にありふれたものであり、また ファン としての関わり方も裾野が広すぎるがゆえに、一般人 の目に入りやすく、また理解が追いつかない部分はあります。 いかにも おたくっぽい (あるいは興味のない人からはしばしば子供っぽく見える) 趣味であることから、偏見を持たれやすく差別されてきた過去もあります。
中でも車両の写真撮影を行う 「撮り鉄」 は、1990年代後半からは ネット でも度々迷惑行為が報告され、それに伴う強い揶揄や批判が生じ、2000年代に入ってしばらくすると社会の敵のような扱いさえされてきています。 同じ鉄道ファンの間でも 「あいつらと一緒にされたくない」 と公言する鉄っちゃんは少なくなく、残念 ながら目の敵にされがちです。
その理由はいくつかあります。 まず第一に、多くの撮り鉄は一か所に集まりがちで、場所取りなどで トラブル を起こしがちという点があります。 またトラブルがなくとも、カメラを構えた集団が一か所に黒山の人だかりとなる様子は、はたから見てちょっと異様なイメージを与えてしまいがちです。 オリジナリティがない同じような写真を大勢で一斉に撮るという行為も、ちょっと理解しにくいと感じられることもあるでしょう。
撮り鉄の少なくない人たちは、鉄道会社が 公式 に発表する写真や ポスター などと同じ構図で同じような写真を撮りたがるという傾向があります。 これには 「同じものを同じように撮りたい」 という目的を持って臨んでいる場合もありますが、そもそも鉄道写真におけるある程度 共有 される お約束 やセオリーが守れて、かつその車両や路線がもっとも 「映える」 ような撮影場所が限られているという部分もあります。 鉄道会社が プロモーション のために撮影する場所は、おおむねその車両なり路線なりがもっともよく見える場所を選んでいるわけで、ある程度場所が重なるのはある意味当然だとも云えます。
とはいえこれもやりすぎると様々な問題が生じてしまうものでしょう。 過去にも記念列車などが走行するたび、公道を占拠して車の往来の邪魔になる、私有地や線路内に立ち入るなど、迷惑行為と云うより危険性や違法性の高い行為に至る者も少なくなく、事故の恐れが生じたりせっかくの運行が中止になるなど、鉄道会社や社会に迷惑をかけてきた歴史があります。 公共交通機関の往来妨害や事故は人命に直結する上に影響を及ぼす範囲も広く大きな事件として扱われますから、テレビや新聞でも報道されてしまうのも影響が大きいでしょう。
また撮影ポイントが駅のホームの場合、鉄道ファン以外の一般客も周囲に大勢いて、場所取りで怒鳴るとか、駅構内で使用しては迷惑になる三脚や脚立を立てる、フラッシュやストロボを炊く、カメラを構えた異様な集団の様子などが、容易に部外者の目に入る点もあります。 そもそも鉄道車両の撮影以前に、大きなカメラを構えて写真撮影すること自体がしばしば奇異の目で見られがちなので、そこに鉄成分まで添加されると一層の違和感を一般人に与えてしまうのでしょう。
さらに鉄道移動では到達が難しい駅と駅の間に撮影ポイントがある場合、撮影機材の運搬の手間もあって車での移動が多いこともあります。 鉄道ファンがとくに嫌う部分で、推し である鉄道会社に乗車賃というお金を落とさずに迷惑だけかけてどうするんだという訳です。 さらにアクティブな撮り鉄には子供や若者も多く、大人に比べると経済的に厳しいこともあり、一部ではキセル行為などが広がっている上、それを 露悪的 に イキって 自慢するような人たちすらいます。
そして何よりネット時代に乗り鉄のイメージが悪くなる決定的な原因に、非常識な撮り鉄の姿が 晒され やすかったという点は大きいでしょう。 撮り鉄はカメラを持っていますからすぐに撮影ができる状態ですし、場所取りなどで同じ場にいた別の撮り鉄と争いなども生じやすく、私怨による晒し行為が多かったという状況もあります。 いかにもおたくや 陰キャ っぽい撮り鉄が奇声を上げる姿がこっけいだという部分もあり、しばしば ネット掲示板 などで面白おかしく 拡散 されても来ました。
撮り鉄の晒し行為によってイメージは最悪に
筆者 もおたくの端っこにはいるので、周囲に鉄っちゃんは大勢います。 しかし同じ鉄道ファンの間でもとにかく一部の撮り鉄の評価は散々で、別に鉄っちゃんでも撮り鉄でもない自分としては、何もそこまで云わなくても…と思わないでもないですが、線路内に立ち入るとか私有地に勝手に侵入してとか無許可で木を切るとか、さらに非常停止ボタンを押す、駅員に罵声を浴びせるみたいな非常識で マナー を守らないばかりか犯罪にまで及ぶ様を見ると、さすがに擁護は難しいでしょう。
害悪 や迷惑なのがほんの一部に過ぎないのだとしても、大半の善良もしくは人畜無害な鉄道ファンが彼らと同類だと思われたら迷惑だなと感じるのは理解できます。 コスプレ 撮影における不快な ローアングラー などと同じ扱いですね。 同族嫌悪による強い不快感や蔑視感情ではなく、シンプルに犯罪ですし、それによって鉄道会社や社会が態度を硬化させてあれこれの規制が入り、結果的に鉄道趣味の世界が狭められた過去もあります。
こうした晒しは 写メ がついた携帯電話やスマホの普及でさらに加速するようになっていますが、個人的には晒す方も 盗撮 だし立派な犯罪じゃないかとか、撮り鉄が誰の迷惑にもならない場所で撮影している際にわざと邪魔をする行為にも不快感を覚えます。 しかし積みあがった悪評を払拭するのは容易なことではないのかもしれません。 これは何も鉄道ファンや撮り鉄限った話ではなく、あらゆる趣味や娯楽でも同じですけれど。
自分だって旅先で見たことがない列車がいればついカメラのレンズを向けたくなりますし、好きなアニメや ゲーム の ラッピング がされた列車の運行を知れば 普通 に乗りに行ったり撮りに行きます。 鉄道系の オフ会 に参加したり、鉄趣味の友人の 「鉄分補給」 のお誘いでちょっとした旅や 遠征 に出たことも何度もあります。 鉄趣味を持つ気のいい友人が大勢いますし、旅先で出会う撮り鉄さんとかいい人が多くて、現場 で子供や若者の撮り鉄にマナーの啓蒙をしたり、ローカル線などでは経済的に余裕がある撮り鉄らがお金を出し合って貸し切りを行い、他の撮り鉄に開放していることもあります。 大半の撮り鉄は人に迷惑をかけず趣味を楽しんでいるだけなので、個人的には不当な批判や差別には反論したいし、擁護したい気持ちも強いです。
ただまあそういう人が集まる場で不快な目に遭ったことも少なくないので、外部から見たらあたしだって目糞鼻糞を笑う状態とはいえ、もうちょっと何とかなりませんかとは思ったりもします。 ほんと自分の首を絞めるだけだし、子供がマナー違反やちょっと調子に乗るくらいならまだしも、大の大人が法律を犯すのはさすがにやめて欲しいと思います。
一部の鉄道ファンの間では、迷惑行為によって何らかの規制を網羅的に行うのではなく、迷惑行為をした者の処罰を厳格にすべきとの意見もありますが、そうした考え方も一つの見識でしょう。 鉄道は観光旅行の足でもあり、写真撮影の禁止は現実的ではないものの、行き過ぎて 「駅構内で写真を撮るのはやめましょう」 みたいなマナーが生じたり、かつてのおたくバッシングの時代のように、撮り鉄相手なら何をやってもいいみたいな 雰囲気 にならないことを切に 祈り ます。
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