同人用語の基礎知識

都合の良い時空

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魔法や超能力があるのに、それ以外の物理現象はそのまま 「都合の良い時空」

 「都合の良い時空」 とは、創作物において、ご都合主義的な 設定 による世界や空間、作品舞台を指す言葉です。 ハイパースペース (Hyperspace) と呼ぶこともあります (後述します)。 作中で細かくそのような空間であるとの説明がされる場合もありますが、一般的には現実世界の細かいあれこれを無意識あるいは意識的に切り捨て、簡略化・単純化した暗黙の了解に基づく世界設定との認識がされることが多いでしょう。

 例えば物理法則や定数に著しく反する魔法や超能力が存在するのに、それ以外の物理現象は私たちの世界の物理法則や定数に従っているとか、300年前のヨーロッパの話なのにそこに住む人たちの価値観や常識の多くが現代日本のそれだったり、わかりやすいけれど現実にはありえない、整合性のない世界設定や 世界観 となります。

 なお ロマン による法則改変が許されるとの意味で 「ロマン時空」 みたいに呼ぶこともあります。 例えば真空の宇宙空間で爆発音がしたり、マントが風になびくような描写がされるなどが代表的です。 また人気サイト 「小説家になろう」 の異世界ものにおいて多用されがちだと見なされ、なろう系世界や時空、あるいは中世ヨーロッパ風のそれをナーロッパといった云い方で区別することもあります。

時間が停止したら全部止まるけれど、自分だけは動けるみたいな世界

 代表的な都合の良い空間描写の例として、「時間停止」 のあれこれがあります。 一般的な時間停止は、ある人物なり キャラ なり以外の時間が停止し、停止の外にいるその人物は自由に動き回れるという状況が多いでしょう。 しかしもし本当に時間が停止した場合は空気や空間も停止して、その人物は呼吸することも体を動かすこともできなくなるはずです。

 また地球は自転していますし、その地球も太陽の周りを回っていますし、その太陽を含む太陽系も、その太陽系を含む銀河も、さらには宇宙全体も猛スピードで動いたり膨張しています。 これらが全て瞬時に停止した場合、地上にあるものはすっ飛んでいきますし、もっと身も蓋もない言い方をすれば、原子や素粒子の動きも止まって物質そのものが崩壊し、ひいては空間もこの世の全ても消えてしまうでしょう。

 時間停止系の話は、このあたりの物理学の法則だの定数だのを完全に無視し、時間というものの存在も独自に 解釈 して、小さな子供が素朴に考える 「自分以外が止まっちゃう」 という空間を許容すべき当たり前のものとして提示します。 まさに都合の良い時空や空間そのものです。 同じようなものは他にもたくさんあります。 例えばタイムマシンやタイムスリップでも、地球や宇宙全体は時と共に移動しているのに、時間を旅してもなぜか地球上の位置が維持されます。 テレポートで移動しても宇宙空間に放り出させることもありません。

 とりわけ魔法や超能力は、それが幻覚や誤解でそう見えているのではなく実際の現象として描かれているのなら、物理法則をはるかに超越しています。 無から物質やエネルギーを生成することはできませんし、呪文で火を放ったり水を湧き出させることもできません。 しかし創作物の多くは、魔法や超能力がありながら、それ以外の物理法則はおおむね現実世界と同じように動いているように描かれます。

 もちろんこんな細かいことを言い出したら、SF や ファンタジー、異世界ものといった ジャンル の多くが成立しなくなってしまいます。 作品の核心部分ではない単なる舞台設定に、いちいち物理学がどうの設定の整合性がどうのと 突っ込む 方が野暮だと考える人の方が多いでしょう。 とはいえ何もかも全部デタラメでは、それはそれでリアリティもなくなってしまいます。 どこまで嘘をついて、どこから現実世界のあれこれを反映し説得力を持たせるか。 リアリティライン架空世界における設定バランス の妙が、作者 に求められるといって良いでしょう。

 なお一か月単位の変化や季節の巡りはありながら、年単位の変化はないような空間 (例えば学園もので連載中にずっと同じ学年を延々繰り返し、キャラが年を取らない マンガアニメ など) の場合は 「サザエさん時空」 と呼ぶことがあります。 こちらも作者や物語の展開上、現実ではありえない都合の良い時空となってはいますが、別にループものとしての描写ではないため、ここでいうそれとは ニュアンス が異なり別物とされることが多いでしょう。

ハイパースペースって便利だよね

 都合の良い空間、あるいはハイパースペースという 概念 や考え方、あるいは 元ネタ は、科学や物理の世界で思考実験を行う際によく用いられるものです。 疑問や課題を仮定の中であれこれ考える際に、細かい部分を簡略化して本質的な部分だけに着目したり、問題の切り分けをする際によく使われます。 例えば 「空気抵抗はないものとする」 みたいなあれです。

 ちなみにハイパースペースという用語は、SF の世界では、宇宙船などが超光速航行する際に一時的に入り込む別次元の空間を指して使うこともあります。 こちらも超光速航法による飛行を可能にするための、文字通り 「都合の良い時空や空間」 だと云えます。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年9月12日)
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