言葉は、その人の職業さえも浮き彫りにする 「業界読み」
「業界読み」 とは、特定の業界で使われる漢字や英語の独特な読み方のことです。 同音異義語と区別するためだったり業界内の慣習などを理由に使われ、特定の言葉の読み方で何となくその人が属する業界や職業が分かったりもします。 内容によっては、重箱読みや湯桶読み、説明読みと呼ぶこともあります。
こうした言葉はその業界にいない人にとっては単なる 誤読 にも感じられますが、行政用語や政治的な言葉などは 日常 の生活で耳にしたりメディアで使われることも多く、一般人 の間でもそのまま使われることが結構あります。 「既出」 を 「がいしゅつ」 と読むような、いわゆる ネットスラング と同じようなものですね。
例えば 「科学」 と 「化学」 を口頭で区別するため 「とかがく」「ばけがく」 と読んだり、「私立」 と 「市立」 を 「わたくしりつ」「いちりつ」、「全文」(ぜんぶん) と同じ読み方の 「前文」 を 「まえぶん」 と読むとか、「1」(いち) と 「7」(しち) とを明確に区別するための7の 「なな」 読み、「首長」 と 「市長」 の聞き間違いを防ぐための首長の 「くびちょう」 読みなどがあります。 「舌」 を 「ぜつ」、「頭蓋骨」 を 「とうがいこつ」、「手動」 を 「てどう」 あたりは、完全に使っている人それぞれの職業が分かる感じです。
同人 や 印刷 に近い部分では、内容の 「本文」(ほんぶん) と組版における 「本文組」 の 「本文」 とを区別するため、内容の本文を 「ほんもん」 と読んだりするのがおなじみです。
いずれも文章や文字で見れば区別が容易なものばかりですが、口頭では思い違いや聞き間違いなどが生じやすいものばかりです。 業界読みせずに完全に異なる別称をあてがったり、本来の意味とは違う意味の言葉を当てはめることもありますが、ともあれ医療とか出版関係、あるいは 軍事 や警察などなど、口頭での聞き間違いが大きな トラブル や惨事につながりかねない業界では様々なものが考案され広がっています。
わざわざ部外者に、得意げに業界読みや専門的な業界用語を使って見せるのはあまり褒められたものではありませんが、逆に自分の知らない世界にいる人が、うっかり口癖で自分が知っている読み方と違う読み方や言葉を使ったからと云って、脊髄反射 のように 「誤読だ」 と思い込んだりそう指摘するのも、あまりお行儀のよい振る舞いでもないでしょう。 聞きなれない言葉が出た時は、「この人の背後に自分の知らないルールがあるんだな」 と考えられる想像力くらいは、大人なら持ちたいものです。
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