同人用語の基礎知識

ミリタリー/ Military
軍事ネタ

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歴史研究、模型から、服装、実機見学まで…軍事ネタ全般を指す 「ミリタリー」

 「ミリタリー」(Military) とは、軍や軍隊のこと、転じて軍事に関する ネタ、武器・兵器ネタ、戦争ネタその他、軍事 (Military Affairs) に関すること全般を扱う際に使われる言葉です。 軍にもいろいろありますが、主に陸軍 (Army/ Ground Force) に対して使ったり、陸海空、あるいは近代・現代問わず、軍事全般を広くミリタリーと呼ぶようになっています。

ミリタリーは男の子の憧れ? 軍おたミリおたイカスよね!!
ミリタリーは男の子の憧れ?

 また他の言葉と組み合わせて軍事用、軍隊用といった意味で使う複合語のひとつとしても、ミリタリーは非常によく使用されます。

 例えば軍隊の服装、制服 (軍服や軍装) と同じか近いデザイン、イメージを持つ服装を一般にミリタリールック (ミリタリーファッション) と呼びますし、軍隊用や軍隊風の道具ならミリタリーギアやツール、グッズに、軍事用の食料ならミリメシ (ミリタリー飯)、またそれらの商品を専門に扱うお店はミリタリーショップなどと呼びます。

 なお場合によってはSF作品などに登場するロボットや想像上の兵器などを含めた創作物 (仮想ミリタリー)、仮想戦記ものを含め、数多くの ジャンルカテゴリ を含めて大きなくくりとして使うケースもあります。

 初心者や 一般人 にも通りが良くイメージのわきやすい言葉ですし、もちろん 同人用語 などではなく、広く 普通に 使われる言葉です。

他のオタク趣味とも強く複合するミリタリー

 同人おたく界隈 では軍事ネタを専門に扱う人、コアなミリタリーの ファン、軍事オタクを俗に 「ミリオタ」(ミリタリーオタク/ ミリヲタ) と呼びます。

 ほぼ専業でミリタリーにのみ深く関わっている人もいますが、他のオタク的な趣味、例えば戦争・軍隊ものの歴史物語やそうした要素のある マンガアニメゲームライトノベル が含まれるのはもちろんのこと、カメラや無線、時計、パソコン、オーディオ、美少女、ロボット (メカ)、コスプレ、フィギュア、自転車、バイク、キャンプなどのアウトドアスポーツなどとも親和性が極めて高く、それぞれの趣味人同士の行き来が盛んなのもミリタリーの持つ大きな特徴のひとつでしょう。

 ミリタリーそのものがメインなのかサブ (副業) なのかは人によって異なるでしょうが、鉄道 (鉄っちゃん、鉄男・鉄子) と並び、オタク界隈の最大勢力の一つといってもよいほどの大きな裾野を、質量共に持っています。

軍事以前に 「メカ」 が好き、ミリタリーと男の子

休日は、時間を忘れてプラモ作り
休日は、時間を忘れてプラモ作り

 ミリタリーがこれほど好まれ大きな影響を持っている理由としては、小さい子供の頃からメカニックな兵器 (戦車や戦闘機、軍艦や銃器など) が、多くの男の子の強い興味と関心を惹く対象だからなのでしょう。

 特に兵器類の模型 (ミリタリープラモデル/ スケールモデル) やモデルガンの収集、及びそれらを使った遊び (ブンドド)、友人との戦争ごっこなどは、軍事やミリタリーに特段の興味がない子供でも、男の子なら誰でも一度は通過することの多い遊びのひとつといって良いでしょう。

 複雑で難しい兵器の構造に通じたり、膨大な兵器名や専門用語 (数値が羅列された記号的な物が多い) を暗記して使うのも、友達に一歩リードする大事な要素でもあります。 これらが原体験となり、その道を極めたり、その他の趣味に波及していくのですね。

なぜ男はミリタリーに心惹かれるのか

男なら誰でも憧れる? 戦車
男なら誰でも憧れる? 戦車
大海原を往く軍艦には男のロマンが…
大海原を往く軍艦には男のロマンが…
軍用機、中でも戦闘機は新旧問わず大人気
軍用機、中でも戦闘機は新旧問わず大人気

 ミリタリーという 概念 がこれほどの大きさを持っているのは、さらに源流を辿ると、男性の 「メカ好き」 が、その根本にあるのだと思います。 なぜ男性がメカや機械ものが好きなのかについては様々な説がありますが、一般的には狩猟本能や闘争本能に由来するとされます。

 獲物や敵を打倒するための兵器や武器を扱うミリタリーは、より速く、より遠く、より高く、より大きく、そしてより強くを具現化する、その最たるものとなるのでしょう。 ある研究によると、武器やスポーツカー、高級ブランド品など、自分を強く大きく見せられる物品を手にすると、男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌量の増加も見られるそうです。

 また実用一点張りで飾り気のない無骨・機能重視なデザインにかっこ良さを感じたり、最新技術を結集したとか、試作品の段階で実戦投入のような 「全力を出す」「総力 を尽くす」 という感覚の気持ちよさ、手強い敵を打倒する爽快感が、それら無機質な機械にバックストーリーを与え、感情移入と高揚感を与えるのでしょう。

 さらに実在兵器なら、生死を共にする相棒、歴史を作ってきた影の主役といった感情的、官能的な ロマン や、それと同時に悲しい歴史に翻弄された人や武器への悲劇性も感じられます。

 実物大でほぼ同じ構造を持っているモデルガンや、構造は異なるものの似たような使い方ができるエアガン、刃物類などの手で持つ武器全般 (得物)、実物大は無理でも造形美を忠実に再現したプラモデルなどは、集めたり手にすることにより、そうしたバックストーリーを擬似的に体験させてくれます。

 また古い写真や実際に戦闘が行われた場所、博物館や各種 イベント での実機展示を見るのも、それによって自分が強くなったり、強くなれるかもしれないとの満足感を与えてくれたり、人間のエゴや独善性、理不尽な暴力や、自己犠牲や命の価値などを深く考える契機になったりもします。

 根本的には感覚的なものなので、「好きだから好きなのだ、理由などない」 ということになるのでしょうし、メカや兵器が全く苦手な男性もいれば、それらが大好きな女性もいますから、あまり紋切り型に決めつけるのも乱暴です。 しかし 「自分の好みや欲望に忠実になれる」 のが子供の特権であり、大人の趣味の世界。 そうした世界に生きる男性オタクたちの間でミリタリーが大きな比重を占めるのは、ある意味で当然のことなのかも知れません。

強烈な 「非日常性」 と 「ロマン」…奥行きの深いミリタリー

戦車はWW2ドイツ軍車両が人気
戦車はWW2ドイツ軍車両が人気
中でもタミヤのティーガー戦車 (タイガー戦車)
のプラモデルは、ある意味暴力的な男子吸引力
ミリタリーショップに並ぶモデルガンやエアガン
ミリタリーショップに並ぶモデルガンやエアガン

 ミリタリーに最初に触れるきっかけ、ハマる きっかけには、様々なパターンがあります。 戦車や戦闘機などがかっこよく活躍するマンガやアニメに影響を受けるケースもあれば、町の玩具店で見かけたプラモデルやモデルガンに触れたのを第一歩とする人もいるでしょう。

 鉄道や旅客機、商業 船舶、スーパーカーなどについては、日常生活でも実物を目にする機会が多いものです。 しかし戦車や戦闘機などについては、軍事基地のそばで暮らしているとか近親者に軍事・防衛関係の仕事をしている人でもいない限り、日本ではなかなか目にする機会もないでしょう。

 ましてやそれらが実際に 「仕事をしている」「役割を果たしている」 姿も、ほとんど目にすることはないでしょう。 演習などの姿も、積極的に見ようとしない限り、普通はなかなか見ることはできません。

 その意味ではミリタリーは、その他のオタク的文化、副業に比べると、最初から創作物、空想からの触れ合いが強いカテゴリだといえるかもしれません。 つまり現代日本にとってあまりリアリティを感じないもの、「非日常性」 を強く感じさせるものでもあるのですね。

 一方、日本以外の国、例えば現在進行形で戦争や軍事作戦を遂行している国や、徴兵制のある国、さらに個人で銃火器や戦闘機、戦車までも所有が認められている国では、いささか事情が異なるのは当然でしょう。 この辺りは、プレイヤー 視点で戦場を駆け抜けるシューティングゲーム (FPS) における海外と日本プレイヤーとの一般的な好みの温度差なども含め、かなり明確に創作物に対する感じ方が違うのは覚えておいて良いかも知れません。

 例えば日本においては戦争は遠い過去の物語、あるいはファンタジーであるが故に、実在兵器や近現代軍事的要素が容易に美少女や子供といった キャラ と合致しやすく違和感も覚えづらいものですが、こうした感覚はそれ以外の国では、時代や国によって異なるとはいえ、あまり 共有 できないものといっても良いと思います (ただし船舶や一部兵器などは、擬人化というか女性に擬えるケースを歴史上にしばしば見ますから、隔絶するほど異なるとは云えないでしょう)。

ミリタリーオタク = 戦争好き との誤解を受けないためには…

 実際の兵器や武器、兵装などの多くは、理由はどうあれ最終的には 「人殺しのためのもの」 ですし、それらが活躍する場は 侵略 であれ防衛・自衛であれ、暴力が吹き荒れ人が大勢死ぬ 修羅場 です。

 兵器や軍装を玩具やファッションとして楽しみ、ある意味で戦争を娯楽として楽しむのは、それがいつの時代でも、あるいは世界中の男の子にとって普遍的な興味の対象なのであっても、少々不謹慎なのかもしれません (実際、保護者らによる 悪書追放運動 などでは、作中に何回銃が出てきたかなどをリストアップして悪書認定するなど、度々槍玉に挙がっています)。

休日に博物館を訪れるのも楽しく、また様々な勉強にもなるもの
休日に博物館を訪れるのも楽しく、
また様々な勉強にもなるもの
博物館の展示に見入る人たち
博物館の展示に見入る人たち
各地で開催される展示イベントを、友人らと見て回るのも楽しい
各地で開催される展示イベントを、友人らと
見て回るのも楽しい

 しかし 「戦争の道具や軍隊が好きだというのは、戦争や人殺しを肯定していることと同じだ」 との意見は、あまりに極端で偏った意見でしょう。

 例えば現在、古代ローマ時代や戦国時代の合戦や城郭に興味を持ち研究している人や、剣道や弓道などをスポーツとして楽しんでいる人に、「戦で人を殺すことを肯定しているのか」「実際に人間を殺めたいと思っているのか」 などと問いただす人はいないでしょう。

 また軍服由来や軍服として使われているファッション アイテム (例えば セーラー服 や コート (外套)、ベレー帽、ネクタイ (クラバット) など) を身につけている人に、「歴史を知らないのか」「戦争を賛美するのか」 などと苦情を云うのもナンセンスな話です。 男性のファッションや服飾を語る上で戦争や軍服は不可避ですし、こうした批判は単に無知を 晒す だけの暴論でしょう。

 技術的観点で考えれば、GPSといった分かりやすいもの以外にも、農薬だの各種化学合成物質だの医薬品だの日用品だのの一部は、明確に軍事技術がルーツとなっています。 よく知られているものでは、ティッシュペーパーが元々は第二次大戦中の毒ガス防護マスクのフィルターだったなんて話もあります。 発端は別のものでも、軍事や軍需と関わることで飛躍的に技術的進歩を遂げたものまで含めると、航空機や船舶、乗用車、無線やエネルギー関係、さらには社会システムや安全対策に至るまで数限りなくあります。

 現実に砲弾やミサイルが飛び交っている国や地域は現在も世界中にありますし、日本が関わった戦争に直接参加していた人もまだ生きている時代ですから、近現代のミリタリー趣味については強い拒否反応を示す人もいます。

 しかし当のミリタリーファンにとっては、単純にメカが好き、歴史が好き、人間の生と死をあからさまに表現できる創作上のジャンルとして好んでいるとの素朴な動機が多く、戦争や人殺しそのものを賛美するつもりなど毛頭ない (むしろ戦争中に生じた蛮行や悲劇などを、実体験ではないものの知識としてある程度知っているだけに、現実の戦争は嫌っている場合が多い) のは、批判の前提として押さえておいて欲しいポイントだと思います。 もちろん、戦争や暴力を肯定し愛好している人が一定数いるのは否定しませんが。

 動物が好きだということと肉料理が好きだということが一人の人間の中で両立するように、人間ははなはだあいまいで矛盾にも満ち満ちた存在です。 武器や戦史は大好きだけど戦争そのものは大嫌いな人だって大勢いますし、実際ほとんどの人がそうでしょう。 人間とはそうしたものだとの理解もなく、幼稚で主観的な思い込みを元に藪にらみの 他罰的 な批判を浴びせて正義感に酔う人たちの方こそ、「いつか来た道」 に近いのでは?とすら思います。

マナーを設けたり、それを守る動きも盛ん

 一方で、ミリタリー趣味に興味のない人からの無理解や誤解を受けないためにも、ミリタリーファンが守るべきマナーのようなものは、時代時代にあわせて提唱され、趣味の集まりや雑誌、ネット のコミュニティなどでも、情報の共有が行われています。 戦争や兵器を テーマ にしたゲームやレジャー (サバイバルゲーム/ サバゲー)、コスプレにおける軍装などは、趣味として他人に迷惑や不快感を与えないのはもちろん、無用な誤解を招くことのないよう様々な配慮を心がけることが大切なのでしょう。

 なお現実の戦争、もしくは暴力は、一方的に善悪などが簡単に評価できるものでもないですし、状況によっては人殺しでさえも絶対悪とは言い切れない部分もあります。 非暴力・無抵抗 の考えを持つ人もいますし、筆者 も人に暴力を振るったり振るわれたりはごめんですが、ガンジーもキング牧師もジョン・レノンも最終的には殺されました。

 彼らは自分の信念に殉じたものとして納得ずくで亡くなったのかも知れませんが、銃口が自分でなく自分の家族、親や子に向けられた時にも、同じように無抵抗でいられたかは分かりません。 また彼らが不服従や言論や音楽で立ち向かったのは、イギリスやアメリカなどの、ある程度 表現の自由 があり選挙もある西側の民主国家とその軍に対してであり、一党独裁や一人の独裁者が国民の生殺与奪を勝手気ままに決められるような国家に対してのものではありませんでした。

 筆者は多分、自分が死に相手を殺しても、大切な人は守りたいと思うでしょうが、しかし一方で、いざ戦場で敵と遭遇すると、殺すより殺されるほうを選ぶ人が圧倒的だとも言います。 こうしたギリギリの判断をしなくて済むのは、運よく平和な時代に平和な国に生まれてこれたからで、そのありがたみは海外の悲惨な戦争の報道を目にするたびに感じます。 また、それらをひっくるめて戦争や人殺しが仮に絶対悪なのだとしても、それを頭の中で考える、創作物として描いたり受け取ったりは、実際の行為が伴っていない以上は 「全くの別物」 です。 ミリタリー = 戦争賛美という認識が偏ったものにしろそうでないにしろ、そうした根本的な部分も、やはりきちんと押さえておいて欲しいポイントだと思います。

 「頭の中」 で戦場を駆け巡っても人を殺しても、あるいは嫌いな上司を殴っても透明人間になって友人にいたずらをしても、個々人の倫理や好き嫌いはともかく、当たり前ながらそれらは 「罪」 ではないのです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年11月18日)
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