昭和の頃は、市場占有率の意味くらいでしか使われなかったよね… 「シェア」
「シェア」(share) とは、分けること、分配すること、共有することです。 それが市場の話ならば市場占有率 (マーケットシェア/ market share) と同じ意味となりますし、誰かと1つのものを共同で持つこと、共有することなどもこう呼びます。
言葉自体は普通の英語ですが、日本においてビジネス用語のカタカナ語として使う場合、一昔前までは 「市場占有率 = シェア」 のような使い方がほとんどとなっていました。 ある製品のシェアが上がったと云えば、市場においてその製品が他社製品に比べ良く売れ、売上高や出荷台数の全体に占める割合が上がったという意味となります。 あとはせいぜい 「売上をシェアする」 といった使い方ですが、英語が苦手な日本人同士の会話で市場占有率以外の意味でわざわざシェアを使うケースは、あまりなかった印象があります。
日本でも 「共有」 の意味で広く頻繁に使われる言葉に
一方、コンピュータのソフトウェアの世界では、「みんなでお金や労力を出し合って作る・使う製品 (ソフトウェアやアプリなど) を指すシェアウェアという考え方が日本でも広まり、パソコンなどの一般への普及に伴い、広く 「費用や負担を分担する」「分け合う」 という意味でシェアが使われるようになりました。
スマホでいつでも情報をシェア |
それ以前にもこうした使い方がなかったわけではもちろんありませんが、一般人 が 「お金を出し合う」「割り勘」 あるいは飲み会で料理を取り分けるなどの シチュエーション でことさらに英語の 「シェア」 を使うようになったのは、この頃 (個人で購入できるパソコンが普及し、パソコン通信 が人気となった1990年代頃) からだといって良いでしょう。
一方、2000年代になると、ブログ の普及によるトラックバックという 概念 の広がり、ソーシャルブックマークサービス (オンライン で ブックマーク ができるサービス)による不特定多数によるwebページの集積と共用、さらに SNS (主に ツイッター) の RT や favorite などによって、自分以外が 投稿 した記事や写真などを引用・紹介・リストアップする 「情報の共有」 にも広く使われるようになっています。 それに伴い、「情報の 拡散 を目的に共有すること」 といった意味でシェアが使われるケースが ネット ではとても多いでしょう。
この他、1つの家や部屋を複数人で使うこと (同居・同棲) をシェアハウスやシェアルームと呼んだり、いずれも海外からの名称や概念・仕組みの導入の形で 「共有」 を行う行為の多くにシェアが広く使われるようになっています。 またこうした活動に供するサービスや社会全体の動きを シェアリング・エコノミー(Sharing Economy) と呼んだりします。
なお SNS などでの情報共有は誰に断ることもなく勝手にやればよいのですが、利用者の年齢層が比較的高いとされる Facebook などでは、誰かの 書き込み をシェアする際に、「弊アカウントでもごシェアさせていただきます」 といった、従来のビジネス用語的な丁寧表現がなされることがあります。 アカウント に 「弊」 を接頭した 「弊アカウント」 もさることながら、この 「ごシェア」 という言い回しが面白いと、一時期流行ったこともあります w
2ちゃんねる発のファイル共有ソフトの名称にも
匿名で様々なファイルをやり取りする ファイル共有ソフト の代表的なものに、掲示板 2ちゃんねる が発祥となる 「Share」(洒落) と呼ばれるものもあります。 アイコン に 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」 の 「笑い男」 を使ったこのソフトは、「Winny」 や 「LimeWire」 といった著名なファイル共有ソフトに次ぐ国内シェアを持ち、高い匿名性と効率の良いファイル交換が可能となっていました。