末尾につけるだけで良識派進歩的文章に…
「そういえば、◯◯という事実も、多少気になるところだが」 とは、何かの文章の末尾に付け足すだけで、それまでの文章と全く関係のない内容であっても、進歩的良識派の文章に変えることができるという魔法の言葉です。
本来は 「そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが」 という内容であり、若者の右傾化を憂える結びとなります。
元ネタは、2006年9月11日掲載の朝日新聞ファッション記事から
胸元を飾るワンポイントマークや ワッペン |
元ネタ となった文章は、朝日新聞のサイト、asahi.com の文化芸能・ファッション カテゴリ に2006年9月11日に掲載された 「メンズウェアの胸元 ワンポイントおしゃれに復活」 です。
ミラノの07年春夏メンズコレクションで、それまで 「中年男性のゴルフウェア」 などで見かけるだけになりつつあったブランドロゴやワンポイントマークが、若者向けメンズ服に刺繍やワッペンの形で復活している点に注目し、その事情を1960〜1970年代のファッション史なども交え、詳しく紹介。
最後の段落になり、「それにしても、マークやエンブレムは本来、軍隊や国家、学校や会社など、何かに帰属することを表す」 とそのルーツを述べた上で、「そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが。」 と、ファッションの話題を離れ世相を ちくり と皮肉るような内容となっていました。
これが掲載されると、ネット 掲示板、とくに 2ちゃんねる などでは、「考察が結論ありきで文章も前後でまともにつながってない」「ワンポイントマークがファッションショーでいくつか出ただけで世界の右傾化を心配しなきゃ朝日の記者はやれないのか」「軍装・ミリタリー 由来のコートやジャンパー、ネクタイ や ランドセル も右傾化、軍国化につながるから禁止だな」「ファッションの次はグルメ情報でも右傾化や 軍靴の音 の心配しないといけなくなりそう」 などと話題に。
その後は、どうでもよい文章の末尾に 「そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが」 を付け足して揶揄したり、「自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えている」 の部分を他のものにアレンジするなど、ある種の ネットスラング としても使われるようになりました。
右傾化する世界の若者…その中に、中国や韓国や北朝鮮の若者は入っているの?
メンズウェアの胸元 ワンポイントおしゃれに復活 |
それにしてもこうした文章を見て思うのは、朝日新聞をはじめとした進歩的で良識的を自認? するマスコミの 「やぶにらみ」 でしょうか。
君が代や日の丸はもちろん、ファッションのワンポイントにすら反応して 「右傾化が」 などと憂慮を示すのに、中国や韓国、北朝鮮などのいわゆる 特定アジア が国も国民もあげて民族主義を 煽り、他国の国旗を踏みにじっても暴徒と化しても無視、あるいは 「批判される方にも問題がある」 と擁護したり、喧嘩両成敗・どっちもどっち扱い。
今回の記事では、あくまで 「世界の若者」 という扱いで、「日本の若者」 ではありませんが、常日頃の朝日の論調を見たら、日本やEU、アメリカなどの若者は指していても、中韓北まで含めて憂慮しているわけではないと、多くの 読者 が感じるのも無理からぬところでしょう。 バランスが欠けているというより、「何か裏があるのか」 と疑われても仕方がないくらいの不自然さがあります。
この 「そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが」 もそう感じる人が ネット民 の間に多かったから流行語のように広まったのでしょう。 公平中立・不偏不党をうたう新聞社ならば、全体としてもう少し辻褄の合う論説を行なって欲しいものです。
「朝日」 論説のテンプレートに
かねてから、「だが心配のしすぎではないか」「だがちょっと待って欲しい」 などの朝日新聞独特の文章、言い回しが面白がられてネット上でまとめられていましたが、この 「そういえば、◯◯という事実も、多少気になるところだが」 もその後は様々に改変され、使われるようになっています。