本来はデジタルデバイドと一緒に語られる言葉、「情報弱者」「情弱」
「情報弱者」(情弱) とは、デジタルデバイド (情報や通信の技術やインフラを、様々な理由により利用できない人や、それによって生じる格差) によって情報を得られない人、得られても質、量、速度的に劣る情報しか得られない人のことです。
またその 「情報格差」 により、「情報を持つもの」 に対して雇用や収入、社会的・文化的なハンデを強いられる 環境、あるいはそれが拡大してしまう人などもそう呼ばれます。 1990年代末から2000年代初頭にかけ、「デジタルデバイド」 の考え方と、それによって生まれる問題として提起され、最初はアメリカから、後には先進国共通の問題として扱われるようになりました。
こういった考え方は、先進国で IT化 が急速に進み、また各種情報・通信インフラが 整え られるにつれ、次第に問題の中心は発展途上国などに 拡散 し、個々人の問題と言うよりは、地域 (離島など) や国 (貧困国など) といった、大きなスケールでの問題となっています。 また途上国では個々人の問題が2000年以降にむしろ深刻化し、その解決の道筋はまだ見えていません。
後に略され、「情弱」 と呼ばれるようになったり、ネタ としての 「情弱判定」 の基準なども話題ともなりました。
「情弱」 と略され、ある種の罵倒語、侮蔑語としての使われ方も
一方で、すでに十分な情報インフラ (インターネット など) が整い、多くの就業者がそれを安価に利用できるようになると、「お前はそんなことも知らないのか、この情報弱者め」 といったある種の 「罵倒語」「侮蔑語」 としても使われるようになりました。
とりわけ安価な高速回線 (ADSLや光通信) などが普及した日本などでは、携帯電話やスマートフォンによる ネット の通信も大半の人が利用可能となり (もちろんネットを使えると一言でいっても、その質は大きく異なりますが)、身体的なハンデキャップを持つ人を除き、「デジタルデバイドはもはや日本に存在しない」「狭義の情報弱者は存在しない」 という状況に限りなく近くなっています。 遅れていた視覚・聴覚などの身体的なハンデへの対応についても、端末のバリアフリー化や、情報類のアクセシビリティの向上などが、継続的に進められています。
と云うわけで、日本は元々識字率が高く、また国民間の格差が諸外国に比べ小さいこともあり、2005年以降は、若者が使う ネットスラング として、「いつの話をしてるんだよ」「そんなことも知らないのかよ」 的な、情報に疎い人、新しい流行に乗り遅れている人を嘲笑するような言葉となっていますね。 とりわけ 「情弱」 などと略される場合は、そういう傾向が強いようです。
ここらは、本来の意味とまったく違った ニュアンス で罵倒語となっている、ニート とか、ゆとり などに近い感じです。 ネット上の 祭り などに乗り遅れ、古い情報を元に意見などを 掲示板 に書き込むと、「情弱かよ」「情報弱者 乙」 といった感じで使われる場合もあります。
また情弱の象徴的な アイテム やネタとして、「ダイソンの掃除機」 とか、「イーモバイルの100円パソコン (100円PC)」 なども取り上げられます。 さらにマスコミや広告代理店などが意図的に作り出す流行に流されるような人、メディア・リテラシー のない人を情報弱者とし、侮蔑的に スイーツ(笑) などと呼ぶ場合もあります。
「デジタルネイティブ」 と 「情弱」
なお 「情報弱者」 の対義語は 情報強者 で、「情弱」 の対義語は 「情強」 となるんでしょうが、2006年頃より、「ネットが存在するのが当たり前の世代」「ネットのない状態が想像すらできない世代」 をあらわすキーワードとして、デジタルネイティブ という言葉も生まれています。 またニュアンスはかなり違うんですが、情報に疎い人を罵倒するような言葉に、2008年頃に微流行した 電通調べ認知度98% なんてのもあります。
ちなみに情弱や情強といった略語がネットで普及する中、その中間に位置する 「情中」 といった 概念 も生まれています。 略語を展開すると情報中者となり意味不明ですが、ニュアンスは伝わるのでそれなりに広まってもいます。