パソコンを使えなくしたり、他人に迷惑をかけたりの 「ウィルス」
「コンピュータウィルス/ Computer Virus」 とは、コンピュータ (パソコン) やその使用者に様々な悪影響や被害を及ぼす、悪意のある不正なプログラムのことです。 病気 の 「インフルエンザ」 などの生物学的な 「ウィルス」 と同様、他者 (他のプログラム) に寄生し、自己複製をしたり自己増殖をしたりして、そのパソコンを使っている人が意図しない困った悪さをしでかします。
初期のウィルスは牧歌的というか、後の時代から考えると 「ほのぼの」 したものが多く、長時間パソコンを起動したままでいると、「目に悪いからそろそろ休みなさい」 などと云っているかのごとく、画面がブロック崩しのように壊れてしばらくすると元に戻るとか、クリスマスになるとジングルベルが流れるなど、ある種の 「ジョークプログラム」、単なる愉快犯的なイタズラのようなものが中心となっていました。
コンピュータウィルスの原型は、1960年代にアメリカで登場
ウィルスの原型自体は、1960年代にアメリカの開発者や学生がある種の 「ゲームツール」 としてプログラミングされたのが最初のようです。 おのおの自分の作ったプログラムを持ち寄って、コンピュータ上で戦わせて遊んでいたんですね。 相手のプログラムを上書きして、自分が生き残ったら勝ち…のような遊びで、上書きは 「捕食」 とされ、自分と他者を認識したり、相手を攻撃したり自分の身を守ったり、コンピュータプログラムで 「生物」 の定義を研究する、仮想生態系の再現のような研究の一環だったようです。
後に変形し、1970年代頃から無関係な人のパソコンに入り込むようになりますが、これらの初期のウィルスの 作者 の根底には、「複製した違法コピープログラムを使っている人に対するイタズラ」 の意図なんかもあったのでしょう。 1986年に登場した 「Brain」 などは、明確にそれを意図していました。
当時はデータの移動手段も多くの場合、フロッピーディスク などを使ったもので (ネット の回線を使わないネットワークなので、「スニーカーネットワーク」 などと呼ばれていましたが)、いわゆる 「感染力」 も弱く、それほど脅威となるようなものではありませんでした。 話題となったものには、「13日の金曜日」 に突然怖い女の人の顔がでるような、ビックリ系の流行なんてのがありました。
深刻な被害を及ぼす凶悪な 「ウィルス」
しかしその後、パソコンのハードディスクの中身を消してしまったり、BIOS や 設定 を書き換えてパソコンが起動しなくなるような悪質で実質的な被害もかなり深刻な攻撃型の 「ウィルス」 が登場。
さらに パソコン通信、そして インターネット の時代となり、パソコン同士のデータのやり取りが活発化すると、感染力が強く、時として作者の特定の意思 (他人のパソコンのデータを盗むなど) を感染元と連携しながら実行する機能を持ったウィルスも登場 (トロイの木馬/ Trojan horse/ ただし自己増殖しないので、狭義のウィルスとは異なります)。
またウィルスの種類も増え、他のプログラムに寄生しなくても単独で行動できる 「ワーム」 や、他のパソコンからの指示を受けて、特定のウェブサーバなどを手分けして攻撃する ボット (ボットネット) も登場。 個々人のパソコンのみならず、ネット世界、ひいてはパソコンを使った社会全体に攻撃や悪影響を与えるものまで現れるようになりました。 IT 社会となり、コンピュータが日常生活に不可欠となった現代、まさにある種の 「テロ行為」 とも云えます。
パソコンどころか、ユーザの生活をも破壊する 「暴露系ウィルス」
とりわけ凶暴なのは、一部のファイル共有ソフトなどを伝播して感染する (他のルートもある)、暴露系 のウィルスでしょうか。 コンピュータやプログラムを破壊するのではなく、そのパソコンに記録されている個人情報などを無差別にネット上にばら撒き、そのパソコンを使用しているユーザの生活を破壊するようなものもあります (俗にいう、つこうた ってやつですね…)。 企業や役所の情報などを漏洩して、新聞沙汰になるケースも後を絶ちません。
日本の場合、1988年に初期型のウィルス感染が報告されていますが、世間一般にコンピュータウィルスが広く知られるようになったきっかけは、2000年5月頃に全世界で猛威をふるった 「I love you ウィルス」(LOVE LETTER/ アイラブユーウィルス/ ワームの一種) あたりでしょうか。 名だたる大企業や行政機関の端末に猛烈な勢いで繁殖し、日本でも連日テレビニュース報道される騒ぎとなっていました。 FBI が捜査に乗り出し、フィリピンの専門学校生が作者として逮捕されましたが、その後も亜種が大量に発生して問題となりました。
ウィルス駆除ソフトを使って自分の身は自分で守りましょう
ウィルス駆除ソフトを使って自己防衛 |
怪しいサイトも未然にブロック |
こうしたプログラムを人間が発見するのはほぼ不可能で、通常は 「ワクチンソフト」「アンチウイルスソフト」 と呼ばれる、コンピュータウィルス駆除ソフトを使って検疫、駆除します。
多くのソフトがディスクをスキャンしてウィルスを発見、削除したり、パソコン起動中に 常駐 して、メール やネット通信などでウィルスらしきものがパソコンに進入 (受信/ コピー) されるのを未然に防いだり、アップデート (新種のウィルスの情報をリスト (定義ファイル) にして、定期的に更新する) を通じて防御力を高めたり、ウィルス情報をユーザ同士が 共有 して、対処を迅速化したりします。
ただしウィルスの進化や亜種 (ほんのちょっとだけ異なるウィルス、識別しづらい) の登場スピードはとても速く、数も膨大なため、全てに対処するのは難しいのが現実です。 中にはウィルスに寄生するウィルスまであり、既存のウィルスの機能や性質、「アンチウイルスソフト」 の定義逃れを結果的にアシストするようなものもあり、イタチゴッコの状況となっています。
被害者になるだけでなく、加害者にも…無防備は危険です
この種のプログラムが深刻なのは、自分が被害者になるだけでなく、自分の感染したパソコンが 感染源 となり、他のユーザに被害を広げる可能性が高いということでしょうか。 多くのウィルスは 電子メール などを通じて広がりますから、自分がメールを送った人、あるいはメーラーに登録されたメールアドレスの持ち主 (家族や友達、同僚など) に、被害を広げてしまいます。
インフルエンザに感染した社員が マスク もせずに会社に出勤したら、どうなるでしょう。 多くの同僚にうつってしまい、大迷惑をかけてしまうでしょう。 ネットにつないでいる、メールなどを利用しているパソコンユーザにとっては、ウィルス対応ソフトの導入などは、「やって当たり前」 と云えます。 「変な リンク は踏んでない」「おかしなメールは受信してない」「だから大丈夫」 などと甘く考えていると、感染して多くの知り合いが迷惑します。 対応できないならネットにつなぐな…ってのは、厳しいようですが、ネットを使う上での当たり前の前提条件になっているともいえるかも知れません。
なお 「ウィルス」 とは違いますが、似たような 「迷惑なプログラム」 に、「スパイウェア」「マルウェア」 と呼ばれるものもあります。 多くの場合、ブラウザを乗っ取っておかしなアダルトサイトに勝手に飛んだり、あるいはパソコン内の情報を盗もうとしたりします。 それぞれに対処法があるので、ネットなどで調べて対応するようにしましょう。
ネットの世界では、自分の身は自分で守らないといけません。