パソコン内のデータをネット上にばら撒く 「暴露系ウィルス」
「暴露系ウィルス」「暴露ウィルス」 とは コンピュータウィルス の一種 (トロイの木馬、あるいはトロイの木馬型のワーム) で、感染し実行されるとパソコンのデスクトップ画面をスクリーンキャプチャ (スクリーンショット) して画像掲示板などに アップロード したり、ハードディスク内の個人情報や メール、画像、その他のデータを ネット にばら撒くタイプの、悪意あるソフトウェアです。
当然ながら、プライベートな写真や個人情報などを、ほぼ個人を特定できる状態でネット上に 晒す 場合が多く、感染したパソコンの持ち主に与える社会的、精神的な ダメージ は、単にパソコンを使えなくしたり破壊するような古典的なコンピュータウィルスに比べ圧倒的に深刻なものがあります。
パソコンではなく、利用者の生活と精神を破壊するウィルス
また初期のこの種のウィルス (「ぬるぽワーム」 や 「苺きんたま」 など) は、例えば違法コピーされた音楽や動画、アプリケーションソフトなどのソフトウェアをやり取りするような ファイル共有ソフト (WinMX や Winny (ny)、Share などの 「P2P ソフト」) を主な 感染源 としています。
いわゆる つこうた ってやつですが、しかもそのファイルがしばしば ロリ な画像や動画のファイルを偽装していて、それを開こうとすると感染などをするため、「そんなソフトを使っているからだ」「お前がロリコンなのが悪いのだ」 と、感染者に対し自業自得、因果応報を感じさせる感染原因になっていた点も、特徴的です。
「私は違法コピーソフトを使っています」「私はロリコンです」 と烙印を押されて住所氏名電話番号、勤め先や友人の情報や個人的な写真をネット上にばら撒かれるわけで (とりわけ彼女とエッチしているような画像が混じっていると、いわゆる 祭り になったりします)、そこに企業の内部資料や官公庁の情報などが入っていると新聞沙汰になったりして、考えられないダメージをパソコン利用者が受けることになります。
不用意なファイル共有ソフトの使用で感染率大幅アップ
対応としては、ファイル共有ソフトを使わない、アンチウィルスソフトでこまめにウィルスの検疫と削除を行う、ファイルの拡張子を表示にして、怪しい実行ファイルは実行しない (.exe ファイルなどをダブルクリックしない)、パソコンの挙動に不審な点がある場合は即座にネット回線を遮断する (LANやモデムのケーブルをパソコンから引き 抜く)、仮にファイル共有ソフトを使うのなら、専用のパソコンにしてその他のデータをそのパソコンに保存しない…などがありますが、新しいものが次から次へと登場しますし、法律的にウィルス 作者 を取り締まるのも難しく、イタチゴッコ状態となっています。
一般的には、ファイル共有ソフトに流れているソフトの30%以上に 「ウィルス」 が仕込まれているとも云われています。 とりわけみんなが欲しいと思っている人気ファイルほど危なく、一部のアダルト動画 (援助交際 ものなどの一部の 児童ポルノ や、流出関係の無修正もの) などは、99%が偽装されたウィルスファイルとも云われてます。
結果、アンチウィルスソフトを使うとそれらのファイルが削除されたり、四六時中警告エラーがでまくってしまうので面倒だとあえて使わない人も多く、こうした人たちが、しばしば低い ネットリテラシー の持ち主だったりもして、もうほとんど 「自分から感染しようとしている」 としかいえない状況になっているのが、被害が減らない原因でもあります。
主な暴露系ウィルスの種類一覧
ぬるぽワーム | WORM_ANTINNY.A | 2003年8月〜 | 感染し実行されると、Winny の Cache フォルダ内のデータを消去し、自身は Down フォルダの適当なファイルに偽装して外部のパソコンに ダウンロード されるまで待機。 これを繰り返し Winny 経由で感染を広げる。 |
苺キンタマ | WORM_ANTINNY.G | 2004年9月〜 | 感染し実行されると、8分ごとにデスクトップ画像をキャプチャし、アップローダーにその画像をアップ、さらにその画像への リンク を、掲示板 「2ちゃんねる」 の スレッド に、「私は苺で違法ダウンロードばかりしている犯罪者です」 との ハンドル の名前で自動的な 書き込み する。 その際、コンピュータ名が入っていると、それも書き込む。 |
欄検眼段 | TROJ_ANTINNY.C | 2005年3月〜 | 感染し実行されると、パソコン内のデジカメ撮影画像をデジカメの機種固有のファイル名から判別、収集して、Winny ネットワーク上に公開する。 |
アンティニー/ Antinny キンタマ 仁義なきキンタマ | WORM_ANTINNY.AA | 2005年3月〜 | いわゆる 「キンタマ」 系のトロイ型のワーム。 短期間に亜種が膨大に出現し、後に出てきたものほど、凶悪。 基本的にフォルダのアイコンを偽装しており、これを開こうとすると実行され、様々な悪さをする。 |
WORM_ANTINNY.AC | 2005年3月〜 | フォルダアイコンの形にウィルスの実行ファイルが偽装されたもの。 開こうとすると実行され、ウィルスが起動する。 | |
WORM_ANTINNY.AD | 2005年3月〜 | デスクトップ画面をスクリーンキャプチャして公開、またパソコン内の文書ファイル、Outlook Express の受信メールなどを収集して、Winny ネットワーク上に公開する。 | |
WORM_ANTINNY.AB | 2005年3月〜 | 感染し実行されると、パソコンのデスクトップ画面をスクリーンキャプチャし、またパソコン内の文書ファイル、Outlook Express の受信メールを収集し、Winny ネットワーク上に公開する。 | |
ドクロウイルス | WORM_ANTINNY.AW | 2006年1月〜 | ファイル共有ソフト Share で 拡散。 感染し実行されると、Share でダウンロードしたファイルの1文字目がどくろマークとなり、Share 使用中は一定間隔でパソコンのデスクトップ画面をスクリーンキャプチャしてネット上に公開する。 さらに Share 終了後にはキャッシュを削除。 |
山田ウイルス | TROJ_MELLPON.A | 2005年4月〜 | 感染し実行されたパソコンをウェブサーバ状態にし、パソコン内の全てのドライブ、全ファイルをネット上に公開してしまう。 |
山田オルタナティブ | BKDR_AGENT.BOG | 2006年2月〜 | 感染し実行されたパソコンをウェブサーバ状態にし、パソコン内のデータを外部公開。 さらに掲示板 「2ちゃんねる」 にその IP アドレス を書き込んで、ファイルの拡散を促す。 またアンチウィルスソフト、セキュリティ対策ソフトを強制終了させ、さらに感染したパソコン同士をネットワークで接続させて連携体制を取る。 |
苺きんたま祭りでは、様々な流行語が…
2004年9月22日に登場し話題となった 「苺きんたま」 ウィルスの場合、偽装された実行ファイルの名称が 「(写真集) (ロリータ) 水原友里.exe」「(写真集) (ロリータ) 相田香奈子.exe」「(写真集) (ロリータ) 河瀬菜美.exe」 など ロリコン をイメージするものであり、またパソコンを破壊するなどの実害があまりないことから、「被害者は自業自得」 と騒がれ、大きな話題になりました。
とりわけ異常に気がついたユーザが対処に必死になっている状態がスクリーンキャプチャされ、その画像が8分間おきに2次元半角板などへ 実況 さながらにアップロードされたので、ある種の 祭り、「苺きんたま祭り」 を引き起こすこととなりました。 被害者が必死にネットや Windows のヘルプで対策方法を検索しているさまから、そのキーワードだった 「exe ファイル 捨てたい」「CPU 100% 突然」「(反応なし)について」 なども流行語になっていました。
2005年6月、「つこうた」 が流行語に
また2005年6月には、滋賀県草津市の市議のパソコンが Winny 利用によってコンピュータウイルス 「仁義なきキンタマ」 に感染。 保存されていた300件近くもの個人情報を住所録の形などでネット上に漏洩する事件が発生しています。
その際の市議の釈明のセリフ、「息子に聞いたら 「ウィニーをつこうた」 といっていた」 が話題となり、以降はファイル共有ソフトを使ったり、それによって暴露ウィルスに感染して情報を漏洩したことを 「つこうた」 というようになりました。