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ネット・リテラシー
Net Literacy

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「メディア・リテラシー」 と対を成すような言葉 「ネット・リテラシー」

 「ネット・リテラシー」(Net Literacy) とは、ネット を通じた情報の発信や受信が正しく行える技術、ネットを活用する技術、ネット上に存在する 「危険」 から正しく身を守ることができる技術、すなわちリテラシーのことです。 「インターネットリテラシー」 とも呼びます。

 本来は、メディア・リテラシー と呼ばれるようなもの、もしくは ネチケット と呼ばれるようなものと同じものです。 しかし日本では、メディア・リテラシーが 「新聞やテレビなどの既存マスメディアの嘘、偽情報に騙されないようにする技術」 のような意味で使われることが大変多く、またアメリカ IETF が 1995年10月にまとめたネチケットも、あくまで 「ネット上のエチケット、マナー」 のみで捉えられることも多いので、「インターネットリテラシー」 という独立した言葉で、2004年頃から 「ネットを正しく使いこなす能力」 を表現することが広まるようになりました。

 海外でも 「Net-Literacy」 という言葉、表現はありますが、日本のそれとは意味や ニュアンス、使われる割合などがかなり違う感じになってますね。 結果的に日本では、メディア・リテラシーと同様に 「ネット上の嘘情報に騙されない技術、意識」 なんて意味と使われ方がされるケースが多いようです。

「情報弱者」「情報強者」 などと一体化して使われるケースも

 ネット利用 環境 の格差をあらわす デジタルデバイド、その格差の結果生じる、欲しくても情報を満足に受けられない人たちを指す言葉に 情報弱者 (情弱) がありますが、これと 「ネットリテラシーのなさ」 を同一視するような使い方もあります。

 ここらは本来は、貧困や経済格差などがネットや情報インフラの貧しさ、格差につながりさらに格差に拍車をかけるといった意味で 概念 そのものが違うのですが、後には本来の定義や意味からかけ離れて、「ネットリテラシー」 がない人への、単なる罵倒語のような扱い、かなり偏った意味で使われる場合も多くなっています。

ネット上には危険がいっぱい

ネットは難しい… 「ネット・リテラシー」
ネットは難しい… 「ネット・リテラシー」

 さて、インターネット を活用する技術と一言でいっても、その レベル や利用の仕方は利用者によって様々です。

 概念の誕生に至る経緯はともかく、ネチケットの考え方として パソコン通信 の時代から提唱されていた各種マナーや、「正しく自分の意見を相手に発信するための技術」 が、結果的には同じ形で根本にあるのだとは思います。

 しかしメディアリテラシーが 「メディアに騙されないための技術」 と認識されがちなこともあり、「ネットリテラシー」 も 「ネット上にある嘘に騙されないようにする、危険から上手に身を守る」 といった意味で使われるケースが非常に多いといって良いでしょう。

 とりわけ ブログ炎上 したり、暴露ウィルス に感染して個人情報をネットにばら撒いたり、ブラクラ (ブラウザクラッシャー) や マイクラ (精神的クラッシャー) に引っかかって深刻な ダメージ を受ける人が現れたり、掲示板 2ちゃんねるTwitter などの一部の怪しい 書き込み をそのまま信じ込むような人 (ネットde真実) が続出する時代となり、これらを避ける技術、意識が強く喚起されている現実もあります。 また同時に、不必要な個人情報をネットに出さない、誤解を招き後々 トラブル になりそうな情報をネットに書き込まないなども、自分の生活を守るためには大切でしょう。

 「ネットにはいろんな人がいる」(良い人も悪人も、正直者も詐欺師も、意見や価値観が自分とは正反対の人もいる)、「現実の世界とは違う空気がネットの世界には流れている場合もある」 というのをまずきちんと理解すること。 そしてそれを踏まえた上で、「他人の書いたこの意見がどういう意図で書かれたのか」 を吟味し、また 「自分の書いたことが相手にどう読まれ理解されるのか」 に思いをはせる。 難しい テーマ ですが、ネットが日常生活に不可欠となっている今、現代人にとっては心得て当然のコミュニケーションスキル、なくてはならない大切な技術と云えるかも知れません。

 実際はネットに文章なりを書いてアップすると、書いた本人が想像もしない状況に転がるケースもありますし 「パソ通」 の時代と違い、他のネットとの垣根がなくなり、国境すらも越えてしまうので、本当に突き詰めて考えると、何も書けなくなったり何も信じられなくなってしまったりもするんですが。 なかでも Twitter などは、リツイート を通じて瞬く間に情報が 拡散 しますし、それを途中で有効に止める方法もありません。 いやこれ、実に難しいですね。

東日本大震災とネットリテラシー

 その後、ネットリテラシーが大きく注目されるできごとがありました。 2011年3月11日に発生した東日本大震災 (東北地方太平洋沖地震) と、それに伴う東京電力、福島第一原子力発電所の事故です。

 震災直後は固定電話や携帯電話による通話などの既存通信インフラの利用が難しくなる一方、ネットによる情報の 共有 は盛んに行われていました。 こうした傾向は、1995年1月17日の阪神・淡路大震災の際のパソコン通信でも同様でしたが、東日本大震災の時は、ネット利用者数が阪神・淡路大震災の頃とはケタ違いであり、さらにネットでの悪意や情報混乱に無防備な若者や子供なども利用可能だったことから、様々な流言飛語が生じることとなりました。

コスモ石油はデマメールを受け、フリーダイヤルを設置し、個別の問い合わせにも対応
コスモ石油はデマメールを受け、フリーダイヤル
を設置し、個別の問い合わせにも対応
Twitter はデマ・ガセ情報に惑わされないよう、異例の注意喚起を行う
Twitter はデマ・ガセ情報に惑わされないよう、
異例の注意喚起を行う

 初期の頃は、嘘や不確かな救助依頼の情報拡散 (ハッシュタグ による救助依頼の情報共有が自然発生的に行われていた) などにより、救助活動の 現場 に混乱を招いたり、ある種の便乗、悪乗りによる 炎上マーケティング 的なデマの流布なども行われていました (ただし Twitter などによる救助依頼で助かった人も大勢いますから、取り組み自体は大きく評価する意見が多いでしょう)。

 その後は千葉県のコスモ石油の設備に火災が起き大きな火柱が上がったことによる、「有害物質が撒き散っている、雨に濡れないように」 などのデマ・ガセ情報 (コスモ石油二次災害防止情報) の流布や、東京電力福島第一原子力発電所の事故では、政府が事故の状況を正しく伝えず、また健康などへの影響も 直ちに○○はない などとしていたため、事故の状況やそれによる健康被害などについての様々な偽情報がネット上を駆け巡ることとなりました。

 メディア・リテラシーとネット・リテラシーは、表裏一体の関係です。 大災害が起こった時などの緊急事態においては、国や自治体などの行政やマスコミ、大企業などが適切なメディア・リテラシーを発揮し、過不足のない正確な情報を発信する必要があり、それが行き届いていれば、国民や市民は偽情報などに惑わされ踊らされることも少なくなるでしょう。

 コスモ石油のデマ・ガセ二次災害防止情報は、コスモ石油自体が何度も情報発信を行い、不安な市民にはフリーダイヤルで個別対応まで迅速に行い、ほどなくしてデマやガセ情報の流布は止まりました。

原発関連では、危険性だけを訴えるデマや誤情報と、安全性だけを訴えるデマや誤情報が

日本医師会による 「ネット上の書き込み 「白血病患者急増 医学界で高まる不安」 について」(2011年11月29日)
日本医師会による 「ネット上の書き込み
「白血病患者急増 医学界で高まる不安」
について」 の発表 (2011年11月29日)

 一方、福島第一原子力発電所の事故を中心とする原発関連情報については、政府や当事者である東京電力の発表が後手後手に回ったこともあり、震災後数ヶ月を経た段階でも、不正確な情報や悪意に基づくデマの流布が同時多発的に発生。 収束の目処すら立っていません。

 この場合のデマ・ガセ情報は、危険性だけを叫び不安を煽るもの (パニックを起こす恐れがある) だけでなく、安全性だけを唱えて本来必要な身を守る対応が徹底できなかったり、避難のタイミングが遅れる (いわば無防備で危険に身を 晒す 静かなパニック) の両極端な問題が生じる可能性があり、今後の推移によっては将来へ二重三重に禍根を残す惨憺たる状態となっています。

 うち危険性を訴えるものについては、事故後すぐに様々な 「原発事故による放射性物質が原因と思われる健康被害」 などの情報が飛びかい、また福島県民に対する人権侵害の告発などもネットに情報が出ました。 しかしそのほとんどで明確な根拠や証拠、信頼性のある情報ソースの開示がなされたケースはなく、現実的にほぼ全てが 「デマ」 であったと考えて良いでしょう。 とくに子供や一般生活者の間で急性白血病が急増しているとの情報は出ては消え出ては消えしていて、11月には日本医師会がそのような発表をしているとのデマに対し、同会が明確に 「そのような事実はない」 との声明を発表しています。

 一方、安全だと訴えるものについては、事故後、メルトダウンやメルトスルーはないとの情報が 公式 に複数だされましたが (確認されていない…というあいまいなものも多かった)、その後これらは全て誤りであったことがわかっています。 また被災地近辺の農産物の安全性が声高に叫ばれ、不必要な心配による買い控えを 「風評被害だ」 と批判していたものの、産地偽装や虚偽申告、放射性物質の数値の意図的な隠蔽とも思われかねない不作為の情報非開示なども一部に発覚し、問題に。

 その産地なり数値なりが直ちに健康に影響するものではないにせよ、これら情報後出しによる事実関係の追認のような出来事が度重なることにより、国民の公的な情報への信頼性は大きく損なわれ、結果的には誤った発表だったとの評価も避けがたいものでしょう。

 またさらに変化したパターンでは、リテラシーをきちんと持っていて、それがデマだとちゃんと看破しているのにもかかわらず、それが自分の広めたいと思っている主張に都合のよい 「よくできた話」 だった場合、自分も騙されたフリをして悪意を持って広めるパターンすらあります。 いざそれがデマだと第三者から追求されると、「自分も騙された被害者だ」 と開き直ることすらあり、こればかりは本当に騙されたのか悪意を持って拡散していたのか、他人からは容易には判断できないでしょう。

情報を隠す人と、デマ情報を作る人、その間で踊ってしまう人

 国やマスコミの言っていることが信じられないのなら、友人や一般市民の声に耳を傾けなくてはならないと判断する人が出るのも当然でしょう。 国民や個々人は、どこからか回ってきた情報をただネットで再流布させるのではなく、「それが本当に自分の親しい友人や家族に伝えるにふさわしい情報なのか、出所は確かなのか」 をきちんと確認すること、そしてなにより、国やマスコミがより正確で早く、そして多くの情報を、きちんと発信することが大切になるのでしょう。

 ネットリテラシーの第一歩は、国民や市民がそうした情報がきちんと発表されるように声を上げることから始まるのでしょう。 日本の国民の多くはきちんとした情報が開示されれば、それを理解して判断する力をちゃんと持っているのですから。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年12月2日)
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