同人用語の基礎知識

直ちに○○に影響がない

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今すぐの影響はない…裏をかえせば…? 「直ちに○○に影響がない」

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一躍時の人? 枝野幸男 AA

 「直ちに○○に影響がない」 とは、短期的に見て今すぐ影響が出ることはないけれど、その先は分からない、長期的な影響はわからないとの意味の言葉です。

 例えば 「直ちに健康状態に影響はない」 なら、「すぐに体調を崩したり 病気 を発症したり、命に関わるようなことはないけれど、数ヵ月後、数年後、数十年後までの影響は詳しくはわからない」 という意味になります。

 全く問題がない、短期的に見ても長期的に見ても問題がないのなら、わざわざ 「直ちに」 などと接頭せずに、「健康に影響はない」「全く影響を与えない」 などと云えば良いのですから、「直ちに」 がついている以上、「急性障害は生じないが、晩発障害にはその可能性がある」 と受け取るのが普通の言語感覚でしょう。

様々な解釈が可能な 「直ちに健康に影響はない」

 考え方としては、

1)このままでも影響はないが、この状態が続くと影響がある(今すぐ別の場所に避難するなどすれば安全)
2)今すぐの影響はないが、いずれ影響がでる(今すぐ別の場所に避難しても後の影響からは逃れられない)

 となりますが、2011年3月からの使い方としては、

3)このままの状態なら問題はないが、状況が変化したら影響が出るようになるかも知れない(今後の展開次第)

「直ちに○○に影響はない」 が頻発した会見
「直ちに○○に影響はない」 が頻発した会見

 も、政府答弁からは導けるかも知れません。

 もちろん 「分からない」(確定できない) と 「影響がある」 とはまた別ですから、現状で影響がないと断言はできないけれど、直ちに影響はないし、長期的に見ても結果的に影響はなかったとなる可能性もあります。 「直ちに影響はない」=「逆に長期的、将来的には必ず全員に重大な影響 (例えば発癌など) がある」 という訳ではありません。

 長期的に見て健康に影響があるとして、与える影響が深刻なものなのか、それとも無視できる程度に軽微なものなのかも、また別の問題となるからです。 これらは医学的、行政的なものの云い方から察すると、確率的に生じるかも知れない (決定的には生じない、健康被害がでる人とでない人とに分かれる) となるのでしょう。

2011年3月、福島第一原子力発電所の大規模な放射線・放射性物質漏れ事故から

 ネット の世界では、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災) に伴う福島第一原子力発電所の大規模な放射線・放射性物質漏れ事故等の状況説明の際、民主党政府の官房長官、枝野幸男氏が記者会見などの席で放射線や放射性物質による住民らの健康被害の可能性について、「ただちに人体に影響はない」「直ちに健康に影響を及ぼす レベル にない」 と繰り返し説明を行ったことで頻繁に触れられるようになりました。

 この言い回し自体は事故直後から繰り返し述べられていて、その後も空間線量、あるいは水や食物などから放射性物質が検出されると、その都度同様の言い回しで 「安心して欲しい」「落ち着いて欲しい」 と説明。 その曖昧で独特な言い回しが話題となっていました。

保安院ではなく不安院? あまりにずさんな原子力安全・保安院の業務や会見の内容に、むしろ不安感が増大
保安院ではなく不安院?
あまりにずさんな原子力安全・保安院の業務や
会見の内容に、むしろ不安感が増大
当事者意識が感じられず、間違いや情報隠しが多かった東京電力本店の会見
当事者意識が感じられず、間違いや情報の
隠蔽が多かった東京電力本店の会見
3月12日の原子炉燃料棒の溶融を認めたのは、
事故から1ヶ月以上も過ぎた4月20日、メルト
ダウンを認めたのは2ヶ月後の5月12日だった
(炉心融解とメルトダウンは違うとの認識)
事故評価レベル7を発表したのは4月11日だった
文部科学省及び米国DOEによる航空機モニタリングの結果
「文部科学省及び米国DOEによる航空機
モニタリングの結果」(別表2/ 2011年4月29日)
赤で示された地域は、1平方メートル当たり
セシウム134、137の地表面への蓄積量が
300万〜3,000万ベクレルという、チェルノブイリの
「強制避難レベル」(148万ベクレル以上) を
はるかに超える高濃度
民主党 川内博史議員のツイート (4月20日)
民主党 川内博史議員のツイート (4月20日)
「直ちに健康に影響が無い」と「健康に影響が
無い」という言葉の意味は同じではない、と
保安院からやっと回答があった。「直ちに有る」
とは、確定的に影響がある、即ち全ての人に
健康被害が出る、ということ。「直ちに無い」とは、
確率的に何人かに一人は癌になるということ。
情報隠蔽や嘘が多いとして、外国人記者が誰も来なくなった日本政府の外国プレス向けブリーフィング (2011年4月25日) 担当者らはほとんど無人の記者席に向かって淡々と通常のブリーフィングを進行した The Briefing On Japan Quake
情報隠蔽や嘘が多いとして、外国人記者が
誰も来なくなった日本政府の外国プレス向け
ブリーフィング (2011年4月25日)
担当者らはほとんど無人の記者席に向かって
淡々と通常のブリーフィングを進行した
The Briefing On Japan Quake

 その後 「直ちに○○に影響がない」 といった言い回しはある種の ネットスラング として定着。 「今すぐどうにかなる訳ではないが、将来は危ない」「即死はしないがジワジワ死ぬ」 といった意味で、掲示板 2ちゃんねる などでの 煽り などに使われるケースが多いようです。 ただし繰り返しになりますが、これはネットスラングとしての意味であって、「長期的には必ず影響がでる」 という訳ではありません。

 なお類似の言い回しに、「直ちに避難する状況ではない」「直ちに禁止すべき状況にない」「ただちに人体に影響はない」 などがあります。

分からないことも多い放射線の影響

 この 「直ちに健康に影響を及ぼすレベルにない」 は、福島の原発放射能事故で初めて使われた言葉ではもちろんなく、政府高官や官僚などが使う 「遺憾」 や 「善処します」 などと同様、ある種の定型句的な 「よくある言い回し」 です。

 古くは水俣病を引き起こした有機水銀の健康被害についても、当初政府は 「因果関係が認められない」 などと共に、こうした 「直ちに健康に影響は与えない」 を 「急性的な影響はない」 との意味で、繰り返し述べていました。

 それはその他の大規模健康被害事例 (蛍光塗料やアスベストや薬害エイズ、ダイオキシンや電磁波、環境ホルモン、各種農薬、食品添加物など) でもおなじみのものです (もっともこれらの中には、オカルトや疑似科学に類するような誤った乱暴な危険論で批判されただけで、後に危険性が否定されたものも多い)。

 福島原発の事故に近い時期のものに限っても、2001年のBSE (狂牛病) 牛肉問題、2008年の事故米の食用転売問題などで、政府や農水省などは、「万が一食べてしまっても、直ちに健康に影響を及ぼす訳ではない」 と繰り返していました。 これは、無用なパニックや無関係なものへの風評被害を押さえる目的があったのでしょう。

 こうした例では、有機水銀やアスベストのように、長期的に見るとほとんどのケースで極めて重大な健康被害を生じるものもあり、「今回の福島原発事故も、それと同じだ」 と危険性を訴える人たちが判断するのには、それなりの根拠もあるのでしょう。

非常に難しい、健康に対する影響の評価

 しかし放射線が人体に与える影響についてはわからないことも多く、「長期的に見たら確実に健康被害を及ぼすと分かっているのに、それを政府は隠している」「国民を 騙し ている」 と結びつけ断定するのも、少々結論が飛躍しているでしょう。

 有機水銀にしろアスベストにしろ放射性物質にしろ、体に入らないのなら入らないにこしたことはないのですが、現実的にそれらをゼロにするのは難しく、通常の生活では不可能です。

 なぜなら事故の有無によらず、すでに生活の中に入り込んでいるものもありますし、自然界にも一定量存在しているものもあるからです。

 また放射性物質に関しては、東西冷戦時代に各国が行った原爆実験で撒き散らされた放射性物質の存在や、さらに青森県の六ヶ所再処理工場などは、通常運用の範囲でも福島の事故で見慣れた単位の放射性物質を恒常的に排出しているという現実もあります。

対応不可能な場合の発表のあり方とは

 原発事故に関しては、避難地域を拡大するのは万が一の場合に対する備えとして大切だと思いますが、数十万人から数百万人、場合によっては2,000万人、3,000万人を超えるような避難地域の 設定 は、現実的に実行不可能という点で、「発表しても仕方ない」「混乱を招くだけで意味がない」 と判断するケースもあるのでしょう。

 どの物質をどの形でどのくらいの量で体に取り込んだらどう危険になるのか。 それが明確に分からない以上、現段階では 「直ちに健康に影響はない」「ただし長期的な影響については調査中である」 もしくは 「現段階のレベルが続くのなら問題はない」 と発表するのが限界だとも云えます。

 ただし現段階の数値でも、明確に健康被害が予想される一部の地域は存在していますから、過去の例や、日本の政府や日本の学者とは違った立場からの海外の反応、「チェルノブイリ周辺で被曝した住民に健康への影響は認められない」 と 公式 に発表する日本政府がそもそも信用できるのかどうかなどを総合的に判断して、自分自身の条件 (住んでいる場所など) を加味して現状を把握する必要はあるでしょう。

 最終的に自分や自分の家族、友人知人を守るのは、それしかないということにもなるのでしょう。

次々に引き上げられる安全基準、その根拠は…?

首相官邸サイト 「チェルノブイリ事故との比較」
首相官邸サイト 「チェルノブイリ事故との比較」
チェルノブイリ周辺で被曝した住民に、
健康への影響は認められず、また福島は
チェルノブイリより影響はさらに低い (4月15日)

 なお事故による放射線・放射性物質に対する安全基準の変更については、通常の安全基準から、暫定的な緊急安全基準 (1mSv → 20mSv/ 年間) に数値が引き上げられましたが、「十分健康に留意した」 と発表する一方、その数値は国際基準からみてずっと高くなっています。

 また3月17日に引き上げられた食品の暫定基準値 (370 Bq → 2000 Bq/ kg) などは、食品安全委員会の 「放射性物質に関する緊急とりまとめ」 において、「緊急を要するために食品健康影響評価を受けずに定めた」(明確な根拠はない) とはっきり説明しています。 こちらの国際基準はおよそ 10 Bq/ kg 程度です。 飲料水も、事故前の 10 Bq/ kg から 300 Bq/ kg (幼児は100 Bq/ kg) に大幅に引き上げられています (Bq/ ベクレル)。

 この数値自体は、「通常の10倍」「20倍」 となってはいるものの、それこそ 「ただちに危険」 な訳ではなく、長期的に見ても短期間、一時的な 摂取 なら、常識的に考えて全く問題は生じないレベルでしょう。 しかしこの場所を生活の場とし、今後ずっと摂取し続けるとなると、その長期的な影響は誰にもわかりません。

児童を含む一般生活者への暫定放射線値
文部科学省(2011年4月20日)
1〜20ミリシーベルト
(= 1,000〜20,000マイクロシーベルト)
1年間で蓄積される放射線量が20ミリシーベルト
(= 20,000マイクロシーベルト)を超えないこと
1日あたり平均 55マイクロシーベルト以下
1時間当たり平均 2.2マイクロシーベルト以下

 また基準 = ものさしを、その時々の事情で勝手にコロコロと変えてしまっては、それまでの根拠とこれからの根拠はなんなのだとの疑念を生み、信頼感も損なうでしょう。 信頼感が損なわれるだけなら良いのですが、こうした疑念は健康に重大な影響を及ぼすストレス (後述します) にも大きな悪影響を与えます。

 史上最悪の事故だったとされるチェルノブイリ原発事故も分からないことが多く、その影響はまだ調査を行っているところですが、現時点でも 「チェルノブイリの教訓」 とも云うべきものが、公式・非公式問わず、いくつかでています。

 放射線そのものは避けるのが難しいけれど、至近距離やホットスポットにでも居住していない限り空間放射線は余り影響を心配しなくても良い、しかし放射性物質を吸い込んだり、土壌汚染とそれにより汚染された食品を経口摂取することによる内部被曝には気をつけるべき、中でも子供の食品には十分気をつけるべきだ…などがその教訓として触れられているものです。 現状を見る限り、日本政府がその教訓を活かした効果的な対応と、その取り組みを過不足なく広く知らせて国民の無用の不安を緩和する行動が行えているのかは、とても不安です。

SPEEDIの予測が発表されたのは1ヶ月後…不信感が増大

放射性物質の拡散を予想する 「SPEEDI」(スピーディ) の予測結果の発表は、事故から25日以上も経過した4月4日になってから 巨費を投じて整備した未来を予想し迅速に対応するための設備が、25日以上も前の終わったデータを発表する事態に批判が集中した
放射性物質の拡散を予想する 「SPEEDI」
(スピーディ) の予測結果の発表は、事故から
25日以上も経過した4月4日になってから
巨費を投じて整備した未来を予想し迅速に対応
するための設備が、25日以上も前の終わった
データを発表する事態に批判が集中した

 4月30日には、放射線安全学の専門家である小佐古敏荘氏が内閣官房参与が極めて異例の記者会見を行い辞任しています。

 その理由として、放射性物質の拡散を予測するSPEEDI (スピーディ/ 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム) による 拡散 測定結果の公表遅れ (情報収集ができず信頼性のある予測ができなかったと説明されている) や、福島県内の小学校校庭などに累積した放射性物質に対する高い被曝線量基準、児童に年間 20ミリシーベルト 許容の措置などが国際的にも非常識だとしています。

 3月16日に任命された小佐古氏は、政府が次々に任命した6人の専門家の一人で東京大学大学院教授。 専門家である自分の意見が政府に全く伝わらず、「官邸および行政機関はその場限りの対応を行っている」「法に則った対応をしていない」 として強く批判。 記者会見では自らの反省も口にし、涙を見せながら絶句していました。

 ただし一方で、この人は原発推進の 御用学者 として反原発の立場の人たちから強く批判されていた人物であり、「単に泥船から逃げ出しただけではないか」「倒閣運動と連動したものではないのか」「非常時にやるべきことではない」 とも批判されています。 さらに5月2日になり、小佐古氏が飲料水の放射性物質濃度を基準値の10倍 (300 Bq → 3000 Bq/ kg) に引き上げるよう提言して厚生労働省から拒否されていたことも伝わり、何が真実か分かりづらい状況ともなっています。

政府発表とマスコミ報道、市井の情報発信者…どれをどう信じるか

枝野官房長官、福島第1原発から20km圏内での行方不明者の捜索を視察
枝野官房長官、福島第1原発から20km
圏内での行方不明者の捜索を視察 (4月17日)

 なお枝野官房長官は、2011年3月21日の記者会見で、放射性物質が検出された野菜類などの摂取制限について、「ただちに健康に影響を及ぼすものではない。 今回の出荷制限措置は、暫定規制値を超える状態が長く継続することは好ましくないため決定することにした」 と説明。

 その後3月23日の会見でも、「万一食用に供されたとしても、人体に影響は及ばないので安心してほしい。 数回摂取しても、将来にわたっても健康への影響が出ることはない。 ただ今後も (放射性物質飛散と検出の) 継続が予想されるので、できるだけ摂取しないことが望ましい」 と同様の説明を述べています。

 また原発から放出された放射性物質全般については、「人体に影響が出ることはないと申されたが?」 との3月25日の記者会見での質問に対し、「その時点で出ているさまざまな状況からは、現時点で (影響が) 出ることではない。 ただし、今後の見通しについて、私は断定的なことはこの間、申し上げてきていない」 と述べています。

 これは、長期的に見たら影響があるかも知れないという意味よりも、現時点での原発の状況なら改善も期待でき問題もないが、「状況がさらに悪化したらその前提条件も変わる」 との意味でしょう。 つまり、「これまでに摂取してしまった分は問題がないが、今後原発が悪化し事態が長期化する場合はどうなるか分からない」 ということで、「今後の状況については、あらゆる可能性を想定」「状況が悪化して必要があれば、そのことについての情報データの公開は常に続ける」 と答弁を続けています。

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ガラッ |┃三        , -''´ ̄`''- 、
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    |┃Ξ   〉__)   ,/  | | \   (__〈 
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    |┃    | |i::::::::::::::::::{{、:∵:,}} :::::::::::::::!| |
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防護服にマスク、ゴーグルを装着した
フルアーマー状態の枝野さん AA

 その後枝野官房長官は、事故から1ヶ月後の4月17日に、避難地域となっている福島第一原発から 20km 圏内での行方不明者の捜索を視察。

 その際、防護服と微細粒子用防護の マスク、浮遊粉塵用ゴーグルを装着した状態で、警視庁特科車両隊の中川隊長に 「放射線量は問題ない?」 と尋ねると、隊長が 「まったく問題はありません。 現時点でも、0.5マイクロシーベルトです」 と答えたものの、その防護服姿が 「フルアーマー状態で問題ないと云われても…」 と話題になり、不安を煽る結果ともなっています (その後、AA 化)。

 筆者 は政府を必要以上に批判するつもりも擁護するつもりもありませんし、必要以上に放射性物質や放射能に怯え、恐怖を煽ってパニックを招くような言論はしたくないと思っています。

 しかしこれら一連の発言の様子や、原子力関係者の情報隠蔽の歴史を見てゆくと、結局のところ、「自分で判断しろ、万が一被害があった時は、恐らく誰も責任を取ってはくれないし、自分の体を守るのは自分だけだ」 というのが結論のような気もします。 国や東京電力は、国民が判断に必要とする情報をきちんと伝えているとは言いがたい部分もあるのですから。

 幸い昔と違って今はネットがありますし、個人の有志が様々な情報を独自に調べて発信しています。 中には恐怖を煽るだけの悪質なデマや明白な勘違い、悪意を持ったプロパガンダもありますが、しっかりと情報を自分なりに調べ、かつ、今の自分にできる範囲での防衛策を粛々と講じるしか方法はなさそうです。 これは放射性物質だけでなく、農薬やら食品添加物やらの、いわゆる 「食の安全」 に関するもの全般に云えることです。

パニックに陥ったり諦めたりするのではなく、出来る範囲で合理的な判断を

全国の放射能濃度一覧 (satoru.net)
全国の放射能濃度一覧 (satoru.net)
文部科学省による都道府県別環境放射能水準
調査結果をまとめ、グラフ化した物
独自調査ではないが、数値が見やすく整理され、
また別調査とのデータ比較も容易なため、
情報の確認や、不正な数値改竄などの
監視にも役立つ
日野ガイガーカウンタ (ナチュラル総研)
日野ガイガーカウンタ (ナチュラル総研)
自宅設置のガイガーカウンターによる数値を
リアルタイム でネット配信している
他サイトのガイガー数値や公的数値との比較、
前後日時の数値との増減を見ることにより
安全性の目安と安心感が得られる
@katukawa 氏による、Google ドキュメントを利用した厚労省の食品放射性検査結果の共有一覧表
@katukawa 氏による、Google ドキュメントを
利用した厚労省の食品放射性検査結果の
共有一覧表 (2011年5月1日)
高い数値などがでると厚労省サイトからの
URL変更によるリンク切れが多発するため、
こうした有志による情報共有が行われている
文部科学省による 放射線モニタリング情報サイト
文部科学省による 放射線モニタリング情報サイト
開設されたのは事故の5ヶ月後となる8月9日

 福島第一原発の放射性物質に関しては、3月11日から15日にかけて様々な 「事象」 が発生し、空間の放射線量の数値も急上昇。 政府の発表は発生した爆発や火災などの追認に終始し、保安院や東電との内容の齟齬もあり、大きく信頼に欠けるものでした。 国民の不安もこの時期にピークに達したと云って良いでしょう。

 しかしその後は徐々に安定し、3月末から4月にかけ、現時点の数値ではパニックになる必要はなく、原発の至近にいる住人、ホットスポットと呼ばれる放射性物質の吹き溜まりとなっている地域を除けば、おおむね健康状態に対し緊急の問題がない水準と筆者は素人なりに判断し行動しています。

 わずかでも危険の可能性があるからといって、無責任に危険性だけを声高に叫ぶことは、福島に対する無用な風評被害を産み、復興の妨げになるばかりか、福島の人たちにいわれのない差別を生む原因にもなります。 冷静な判断と対応が大切なのでしょう。

 しかしこの状況がいつ悪化する方向に変わるのか、そして変わったときに確実に素早く情報が発信されるのかは、現時点では誰にも分かりません。

心構え、冷静な 「静かな備え」

 常に最悪の事態に備えることは重要です。 しかしそれは、仕事を投げ出し遠方に今すぐに逃げるとか、食にかかるコストを度外視し、危険が予想される食品を徹底的に排除・拒絶するという方法しかないわけではありません。

 例えば10年後20年後の白血病やガン、神経障害などの発生率がどのくらい上昇するのか、それが仮に 0.05% とか 0.1% とか 0.5% 程度上昇だとしたら、どうそのリスクを避けるためのコストと今の生活との折り合いをつけるのか。 いわば 「静かな備え」 と云いますか、冷静に判断し心に留め置くことが大切なのでしょう。

 個々人でガン発生率0.5%上昇は気分的に無視できる数値だと思いますが、例えば2,000万人が等しくそのリスクに晒されるとすると、単純計算で10万人が平常時に比べ過剰に発症する可能性に晒されることにもなりえますし、別の言い方をすると、200人に一人がガンになる可能性を生じる計算だとも云えます (実際は、そもそも日本人の半数が元々ガンを発症していますから、その確率が少々増えるだけの話ですし、数学的には誤った考え方なのですが)。

 つまり 「全員が無事ではないが、全員が危険でもない、その差は誤差レベルで、その意味では統計上危険ではない」 といった意味になりましょう。 もちろん国や政府が見るのは、疫学調査統計上の数値だけです。

 自分や家族がガンや白血病などになった時、その原因が原発事故によるもので、その0.5%の中に自分たちが入っているのかどうか、それとも単なる遺伝やその他の原因によるものなのかは、恐らくほとんどの場合で誰にも分かりません。 こうした起こりうる将来像に個々人がどう備えるか。

 場合によってはリスクとしてそれを受け入れ、健康にこれまで以上留意して現在の生活を維持するという判断もありますし、全く意に介さないという立場の人もいるでしょう。 それは他人が押し付けたり、他人から批判されるべきものではありません (まして政府や御用学者が 「気にするな」「風評だ」 と指示したり命令するような話でもありません)。 いずれにせよ、悲しいことですがそういう時代が、2011年の3月から誰の目にもはっきりと分かる形で始まった…そう考え心構えを持つことが大切なのだと思います。

必要以上にストレスを溜めない工夫も必要です

 ちなみにストレスが人体に与える影響の存在は、短期的・長期的共に、かなり明白に検証がされつつあります。 また様々な疾病や事故と直結する寝不足や暴飲暴食の原因にもストレスが無縁ではない点を考えると、ある意味でストレスは、「大きな健康阻害物質のひとつ」 とも呼べる存在となっています。 あまり不安にとり憑かれ思い悩んでばかりでも、かえって健康を害することになるのかも知れません。

 原発事故後、各地で鼻血や下痢、頭痛や、体についたアザなどの報告がネット上で話題になっています。 被曝により鼻血や下痢などになるのは事実ですが、そこに至るまでの被曝量は極端に高い場合のみで、放射線が原因なら数週間から数ヶ月で死亡しているはずのレベルです。

 原発の事故 現場 にいた人で、短時間にミリシーベルト/h 単位の著しく高い被曝をした人ならともかく、離れた場所でわずか数週間〜数ヶ月でそうした症状がでるのは、粘膜を損なう別の病気や体調不良によるものか、あるいはストレス起因によるものでしょう。 現実的にはありえません (そもそも子供は鼻血を出し易いものですし、3月から5月は花粉症の時期で、症状に鼻血があります)。

 繰り返しになりますが、出来る範囲で防衛し、できない部分はどうせできないのですから思い悩まないのが、結局は体に対する様々なリスクを回避する一番良い方法なのかも知れません。 ついでにいうと、ホメオパシーやEM菌、米のとぎ汁乳酸菌などの代替療法 (疑似科学的な民間療法、インチキ療法) は効果が全くないばかりか、むしろ 害悪 ですらあると思います。 そんなもので放射線や放射性物質は防げませんし、体外排出の促進などもできません。

 放射線や放射性物質の恐ろしさを訴える人は多いですが、その同じ口でこれらの代替医療を提案していたら、その人のいう意見は意図的にせよ善意からの結果的にせよ 「デタラメ、デマ」 だと断言して良いと思います。 またきちんとした医療機関にかかることを無意味なことだと云い、訳の分からないサプリメントの案内や紹介、通販などしていたら、もう人の弱みに付け込む卑劣な 「詐欺」 って呼んでも構わないと思います。

 一方で国や東京電力には、国民が自分たちでものごとを判断できる情報、少なくとも正しい数値くらいは、しっかりと迅速に情報開示して欲しいと切に願います。 仮に放射線による発がんが少なくても、情報隠蔽による疑心暗鬼から国民にストレスが生じ、そのストレスが元で健康被害やガンの発症があったら、その責任は国や東電に帰することにもなります。 そうしたことへの対応すらもできないのなら、表舞台から 退場 してもらうしか方法はないでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2011年3月18日)
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