震災と原発事故…日本中が危機にあった時に流れた 「ぽぽぽぽーん」
「ぽぽぽぽーん」(ポポポポ〜ン) とは、良くないこと、悪いことが連鎖的に発生すること、次から次へと トラブル が生じて事態が深刻になること、次第に状況が悪化してゆくさまを指す言葉です。 本来は全く違う意味で使われる言葉、歌の歌詞の一部だったのですが、流行し始めた頃の社会情勢によって、主に ネット の 掲示板 の世界などで ネガティブ な ネットスラング として流行。 そのまま定着することになりました。
/|| |/ 川 . /|| ( ) |/ __ _ ( ) __ ハーイ>ヽ| l l│ | l l│ |l l ;│ .┷┷┷ ┷┷┷ ┷┷┷ ┷┷┷ 1号機 2号機 3号機 4号機 |
次々に爆発した福島第一原発の原子炉建屋を あらわすAA (ヘーベルハウスのハーイちゃんの CMの改変) |
ありがとウラン ごきげんヨウ素 お騒がセシウム ごめんな再臨界 ‐-、 ィ-‐、 ハノ\ | ‐-⊂⊃-‐ }⌒ヽ_ノ|r、 / >─、 >´ ̄ ̄ヽー'、__ノ \二ニ─‐ニ´__/ /_____ ヽ <´____ノ、 ヽ l r-、 r-、\_r-| / r-、 r-、\r-} | ⌒ ) l ⌒ ) \(´ ̄ ̄⊃ 厂 \ (´ ̄ ̄フ ノ´ >二二<´ >⊂ロ⊃< 〈_,ィ o ト、〉、 <_,ィ o ト、_> / / ノ o ( '、ヽ / / |_o_| | | mn∠___\ nm レm(_r-,_) レm \‐∨‐/ \ ∨ / ⊂-┴-⊃ ⊂-┴-⊃ 土 | 干 二、 /)⌒) ⌒ゝ丶/ | ‐┼`` ‐─ァ`` rノ、 l rノ、 _ノ .レ ノ 、_ (__ .l rノ、 (_ た〜のし〜い な〜かま〜が ポ ポ ポ ポーン♪ ∵∴ ∵∴ ∵∴ ∵∴ ∴∵ ∴∵ ∴∵ ∴∵ ┷┷ ┷┷ ┷┷ ┷┷ 1号機 2号機 3号機 4号機 |
あいさつの魔法の改変AA |
この スレ ーズが猛烈な勢いで使われ出したのは 2011年3月11日からで、甚大な被害が生じた東日本大震災の発生と福島第一原子力発電所事故、それに伴うテレビ・ラジオ放送のコマーシャル (CM) の放送自粛による差替え・放送 枠 の穴埋めの公共広告、「あいさつの魔法」 の放映開始からです。
東日本大震災によるCM自粛により 「ぽぽぽぽーん」 が大量放映
「ぽぽぽぽーん」 の 元ネタ ですが、ACジャパン (旧 公共広告機構) が制作した公共広告、「あいさつの魔法」 の中の歌のフレーズ、「ポポポポ〜ン」 からとなります。
この広告では、「あいさつの大切さ」 が男の子と女の子、および動物たちの アニメ と歌によって伝えられる内容となっています。 歌詞は様々な挨拶言葉と動物の鳴き声や名前をかけ合わせたダジャレで構成されていて、例えば犬がでてきて 「こんにちワン」、ウサギが出てきて 「ありがとウサギ」 などと続けた後、「挨拶をすると仲間、友達がどんどん増えるよ」 と訴えます。
アニメでは 「たのしいなかま」 が増える際、手品のように小さくポンと爆発が起こり、煙の中からかわいらしい動物たちが次々に登場していく演出となっていました。 「ポポポポ〜ン」 はこの部分にかかるフレーズとなります。
軽妙な音楽とともに流れるこのCMは可愛らしく微笑ましい内容のCMでした。 しかし震災による被害があまりに大きく、ほとんど全ての企業がCMを自粛し公共広告に差し替える中、一日中流れっぱなしに近いくらいの頻度で繰り返し繰り返し流れたため、フレーズの 「ポポポポ〜ン」 も中毒になると話題に。
当時放映されていた公共広告は他にも乳がんへの意識向上CMや老人保護のCMなどもありましたが、中でもインパクトのあった 「あいさつの魔法」 と 「ポポポポ〜ン」 が、流行語のように広まったのでした。
企業側の CM 自粛やテレビ局による CM 枠中止など、様々な対応が
ACジャパンへの広告差し替えは、すでに CM の枠を購入し出稿しているスポンサー (企業側) の自己都合による自粛の形で行われます。 この場合、テレビ局などから放送枠の代金が返金されたり補償されることも通常はありません。 企業が不祥事を起こすなどしてその企業の広告のみを自粛するパターンもありますが、激甚災害などが起こって世の中が自粛ムードとなる中、能天気な広告を流すとむしろ企業イメージを棄損する恐れがある場合、各社こぞって CM 枠を ACジャパン CM に差し替えます。 苦労して作った CM が流せない上に広告料も戻らないという厳しい判断を、苦渋の選択として行うことが多いでしょう。
一方でテレビ局側の判断で CM 枠自体を取りやめる場合もあります (特別番組がひたすら続行して CM の時間がない)。 この場合は放送局側の都合による自粛のため、基本的には企業側へ CM 放送枠分の料金の補填がされることになります。 このような極端な対応は滅多にありませんが、過去には昭和天皇崩御 (1989年) やオウム真理教による地下鉄サリン事件 (1995年) など、大事件や大災害が生じて CM なしの特番が連続するようなケースはごくまれに生じます。
とりわけ1989年1月7日の昭和天皇崩御の際は、丸2日間以上に渡って全局が通常番組の全てを中止するとともに CM 枠の撤廃を行い、ほぼ同一の特別番組を流し続ける極めて特殊な対応を行ったこともあります (その後 CM 枠は戻ったものの、相当期間に渡って実質的に全ての企業が CM を自粛しています)。
福島第一原発事故で、次々に原子炉建屋が爆発…不謹慎ネタとしての 「ぽぽぽぽーん」
保安院ではなく不安院? あまりにずさんな原子力安全・保安院の業務や 会見の内容に、むしろ不安感が増大 |
爆発する福島第一原発 事故の詳しい情報は、海外メディアの方が速く 詳しいありさまに (BBC/ 2011年3月12日) |
一方その頃、東京電力の福島第一原子力発電所で震災と津波、および杜撰で無責任な東京電力の長年にわたる原発安全対策の手抜きなどにより原子炉事故が発生。
充満し引火した水素ガスにより原子炉建屋が次々に連鎖的に爆発 (爆発的事象と説明) し、高い放射線と大量の放射性物質が施設外に漏れるなど、極めて深刻な事態を迎えていました。
この原子炉建屋の連鎖的な爆発を、不謹慎な ネタ として 「爆発した原子炉 (建屋) の仲間が増えるよ」 との意味で 「ぽぽぽぽーん」 と表現することが、掲示板 2ちゃんねる への 書き込み や アスキーアート によって広まり、ネタとして発展することに (AA右上)。
確かに笑えないあまりに不謹慎すぎるネタですが、刻々と事態が悪化しながら政府や東京電力はきちんとした情報を出さず、記者会見では 「直ちに健康には影響がない」 を繰り返すだけ。
マスコミ報道もお粗末なもので、福島だけでなく東日本全体、ひいては日本中が異常な緊張感を持っているだけに、掲示板ではギャグでもいってなければ、気分的にやっていられない状況もあったのかも知れません。
なおテレビCMの公共広告への差替えは日本中で行われていましたが、「あいさつの魔法」 については東日本での放映が多く、関西方面ではほとんど放送されなかった局や地域もありました。
これは関西地域では、車椅子の寄付を通じてボランティアを呼びかけるCM、「ボランティアは生涯現役」 が多かったからとなります (出演者が関西にゆかりのある阪神タイガースの赤星憲広選手だったため)。 震災自体も東日本で起こっており、良くも悪くもこの 「ぽぽぽぽーん」 に対する印象は、東高西低となっているようです。
震災と3月11日と 「ぽぽぽぽーん」
このACによる差し替えの公共広告については放送される仕組みがわからず、「なぜ同じCMばかり流し続けるのだ」「不快だ」 との一部視聴者からの批判も強かったようです。 テレビ局などには苦情が殺到し、CM最後の 「AC」 と告げる部分 (リズムに乗った女声でエーシーと告げる) の音声が自粛でカットされるなどの騒動もありました。
しかし一方で、不安な中、明るく歌うこの広告に慰められた、怖がっていた子供がこのCMになると明るく笑ったなどの声もあります (筆者 も救われた方です)。 直接被害に遭われた方々はともかく、テレビで震災や原発事故を見守った人たちにとっては、後年この楽曲を聴くたびに、震災時の緊張した空気を思い出すことになるのかも知れません
なお当然のようにネット利用者らによってこのCMを元にした MAD動画 なども作られ、中には手書きのアニメによる手の込んだ力作 「グレートありがとウサギ」 を発端とする変形ロボシリーズも登場。 大きな話題となりました。 それ以外には、逆再生ものも話題に。 逆再生では当然ながら 「なかまがふえる」 のではなく、「なかまが減ってゆく、消えてゆく」 内容となり、その寂しさが一部で受けていたようです。