哀れでますますイカレた首相…「ルーピー」
「ルーピー」(Loopy) とは、頭がおかしい、イカレている、愚か者、バカ、クルクルパーだ、との意味の英語のスラングが元になる罵倒語、侮蔑語のひとつです。
「Loopy」 とは 「Loop」(ループ) が形容詞化したもので、ループ、すなわち同じところをクルクルと回る、堂々巡りでちっとも先に進まないとの意が転じ、「ちょっと変わった」「風変わりな」 との意味でも使われるスラングとなっています。 元々英語にある表現ですが、それが2010年になり、日本でもブレイク。 「愚者」「狂ってる」 の意味がアメリカよりかなり強調される形で、掲示板 などで広く使われる ネットスラング として広まりつつあります。
「核サミット」 における鳩山首相の存在について米紙の辛辣な論評が…
元ネタとなったワシントン・ポスト記事 Al Kamen - 「Among leaders at summit, Hu's first」 |
日本でこれを報じた 「哀れでますますいかれた鳩山首相」 …米紙酷評 (読売新聞) |
日本で流行りはじめた発端ですが、アメリカでの鳩山総理報道が 元ネタ となります。
2010年4月12日〜13日にアメリカ、ワシントンで開かれた核サミット (核安全保障サミット) において、日本より参加した鳩山首相の存在感のなさ、とりわけアメリカ大統領との 公式 会談が組まれず食事前10分弱の立ち話のような非公式会談のみだったのを、アメリカの米民主党寄りとされるリベラル紙 「ワシントン・ポスト」 14日版に掲載されたアル・カーメン氏 (ケイメン/ Al Kamen) の人気コラムにおいて、
「By far the biggest loser of the extravaganza was the hapless and (in the opinion of some Obama administration officials) increasingly loopy Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama.」
と皮肉交じりのジョークながら酷評。
これが日本のメディアで、「このショーの最大の敗北者は断然、哀れでますますいかれた日本の鳩山由紀夫首相だった」(4月15日読売新聞) などと訳され紹介され、その中で、アメリカ・オバマ政権高官らの間で使われているとの 「increasingly loopy」(ますます、日に日におかしくなっている) がクローズアップ。
とりわけ同日15日のFNN系の報道番組 「FNNスーパーニュース」 中の 「木村太論」 コーナー 「LOOPYとは」 で、木村太郎氏が 「loopy」 を 「これ本当に悪い、ただ愚かなんて意味を通り越して、パーじゃないの?ってぐらいの言葉なんですよね」 と伝えたことから、かねてから民主党政権や鳩山首相に批判的な意見を持っていた人たちが、面白がってこぞって使うようになったのでした。
ネット上の政治談議で論争相手を罵倒するレッテルとして多用
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可愛い鳩山由紀夫AA |
元からこうした 「下品なスラング」 は、アメリカの若者音楽の歌詞や映画のセリフなどで出ていましたし、英語事情に詳しい人たちにはおなじみの表現ではありました。
また鳩山総理に関しては、かつてフランスの 「AFP通信」 から、「Lofty」(高貴な、高邁な、転じて浮世離れしている、現実が見えていない) と皮肉られたこともありました。
しかしワシントン・ポストの記事が話題になって以降は 「ルーピー鳩山」(鳩山首相の皮肉った愛称)、「ルーピーズ」(民主党支持者)、「ネトルピ」(ネット 上で民主党を擁護する 書き込み をする人) などと新しい表現も生まれ、論戦相手を罵倒するレッテルとしても使われるようになっています。
通常、民主的な手続きで選ばれた一国の首相、それも同盟国のトップを外国メディアがここまでストレートな言葉で愚弄するのは珍しいものです。 報道が伝わると4月15日に平野博文官房長官や藤崎一郎駐米大使が 「一国の首相に失礼だ」 とそれぞれ記者会見で公式に不快感を示すなど波紋を広げました。 また一部には 「アメリカ大統領に邪険に扱われた」「外国メディアにここまで言わた」 ことにつき、「なぜ日本人は怒らないのか」 との論調もあります。
しかし伝統的に反日といわれるアメリカ民主党の大統領でありながら、オバマ大統領は比較的親日的な態度をとり続けていたこと (就任後アジアでは日本に最初に訪れ、訪日した際は、母国メディアで 「卑屈すぎる」 と批判されるほどの最敬礼を天皇陛下に行い、国務長官の初外遊は日本で、重視を明確にしていた)、かねてから日本マスコミがオバマ氏を持ち上げる報道を繰り返していて人気があること、何よりアメリカに対して嘘を連発している鳩山総理の不誠実な態度などから、むしろ 「日本人として恥ずかしい」「日本メディアが民主党に遠慮して言えないことを、よく言ってくれた」 との意見も少なくない状況となっています。
各国メディアも報道、さらに続報も…
こちらは上記コラムが日本で話題と なったのを受け、同じコラムニストが 再度ルーピー関連の話題を書いた 「'Loopy' takes Japan by storm」 |
一貫した政策を持ちえず、2度にわたり首脳同士の会談で行った 「約束」 を反故にした鳩山総理や日本民主党政権に対し、親日的とされるウォールストリートジャーナルでさえも 「冷え込む米日関係 - ジャパン・バッシングならぬ 「ジャパン・ディッシング(日本切り捨て)」(マイケル・オースリン/ 4月22日) と鳩山政権を酷評。
前後して他のアメリカメディアも、こぞって批判のトーンを高め、鳩山民主党が友好善隣ムードを盛り立てていた中国や韓国、あるいは台湾のメディアでさえも、「米紙が鳩山首相を「愚か」と酷評」(聯合報/ 中国網/ 4月16日)、「(国会での4月21日鳩山総理の答弁 (後述) を踏まえ) 愚かを愚直と言い直しても無駄だ」(やるせなく墜落する鳩山政権/ 中央日報/ 4月25日) と報じるなど、散々な状態となっています。
なお 「ルーピー騒ぎ」 の発端となったアル・カーメン氏はその後の展開を経て4月28日にワシントン・ポストで 「日本でもルーピーが大きな話題となっているようだ」 と日本でのルーピー騒ぎを紹介する形で再度この話に触れています。
その中で、「愚か」 とか 「変わり者」 ではなく、「現実から変に遊離した人」 という意味でルーピーを使った」 と、多少鳩山首相に配慮? したかのような、しかし見ようによっては皮肉が効いてさらに酷くなる フォロー を入れています。 またルーピー鳩山Tシャツがアマゾンで売られている事などにも触れ、自らのコラムの巻き起こした波紋に、少々得意げな内容のコラムともなっていました。
日刊ゲンダイ、毎日新聞は鳩山総理を擁護
いかれた鳩山首相」は“誤訳”だった 悪意丸出し 読売新聞」(日刊ゲンダイ) |
木語:宇宙人ルーピー=金子秀敏 (毎日新聞) |
ちなみに上記のアル・カーメン氏の2度目のコラムを受け、国内メディアでは、かねてから民主党の礼賛記事を繰り返し配信しているタブロイド紙 日刊ゲンダイ (株式会社日刊現代) が、5月4日に 「いかれた鳩山首相」は “誤訳” だった」 とする擁護記事を掲載。
ルーピーとは、「現実離れしている」 といった程度の軽い意味であり、読売新聞の翻訳を 「悪意に満ちた誤訳だった」 として厳しく批判しています。 民主党に批判的な立場の人たちからは、「日韓ヒュンダイ」 とも揶揄される日刊ゲンダイですが、面目躍如といったところでしょうか。
さらに5月13日には、毎日新聞のコラム 「木語」 において、「宇宙人ルーピー=金子秀敏」 が登場。 こちらでは、かねてから鳩山首相が自ら 「宇宙人」 を自認していたこと (そうした内容のキャラクターグッズなどもかつて発売していた) などを踏まえ、鳩山総理をめぐるこうした 「宇宙人」 という表現がアメリカ側でも知られていたはずで、今回の政府高官の話はこれを言い表しただけではないか、「愚か」「クレージー」 などといった紹介の仕方は 「誤訳」 ではないかとの説を述べています。
またこうした情報がアメリカに伝わる中で、日本では変人、浮世離れ、現実離れしている人を揶揄して宇宙人などと呼ぶこともあるので、これが誤ってアメリカ政府高官に伝わっただけだったのではないかとし、今回のルーピーも 「宇宙人」 といった程度の意味が本来ふさわしく、それならば 「例のコラムが 「鳩山はますます宇宙人だと米政府高官は言っている」 と 「正確に」 訳されていたら、とくに驚く話ではない」 と、鳩山さんを擁護しています。
ただしこれらの擁護は、その後9月になりワシントン・ポスト紙に 「ルーピー賞」 が創設される (後述) に及んで、空しいものとなってしまいましたが…。
鳩山さん本人も 「ルーピー」 を自認…?
2010年4月21日、国会で行われた自民党谷垣禎一総裁との党首討論では、谷垣総裁から 「ワシントン・ポストに愚かだと酷評された」 ことを指摘され、「私は愚かな総理かもしれない」 と述べています (本人は愚直の意味でそう述べ、山岡賢次国対委員長は 「パーフェクト なお答えであった」 とこれを賞賛)。 鳩山総理は4月7日の国家公務員合同初任研修開講式で 「政治家がばか者の集団では (国は) もたない」「トップの首相が大ばか者であれば、そんな国がもつわけがない」 と繰り返し訓示で述べていましたが、自覚があるのでしょうか。
また5月21日の参院本会議では、鳩山首相が地球温暖化対策基本法案の答弁のため壇上に立ち、話し始めてすぐに、野党女性議員 (自民党の丸川珠代参院議員) が大声で 「ルゥーピィー」 とヤジをかけ、与党議員は 「失礼だ」 との怒声が。 国会本会議場で初の 「ルーピーヤジ」 となっています。
ここで政治的な話をしても仕方がないのであれですが、筆者 などは、「ここまでデタラメな対応されて、よくアメリカも辛抱してるな」 なんて思ったりもしますが…。 別にアメリカの肩を持つつもりもありませんが、アメリカに腹が立つ以前に、その場限りのでまかせ、嘘ばかりついている鳩山さんと、鳩山さんの巨額の不正経理や脱税よりも前首相の漢字の読み間違いの方が悪いかのように叩いていた、常軌を逸した日本のマスコミ報道のあり方にこそ怒りを感じたりもします。
正直、ここまで酷い総理は珍しいと思いますが、これも選挙の結果生まれた総理、降りかかる災禍は日本国民全てが受けるべき民主主義のコストなんでしょうか。 5月13日には 「6月以降も引き続き努力する」 と コメント。 それまで本人が自ら期限として 設定 し、内外に繰り返し約束していた昨年末、3月に続き5月までとの決着も行えずに五月末までとし、それすら 「職を辞する覚悟で臨む」 と言い続けたにもかかわらず、実に4度目の先送りと総理続投宣言を行っています。
高かった支持率も、俗に 下り最速 と揶揄されるほど急落し、その後6月2日には政治と金の問題で批判の高まっていた小沢幹事長と共に辞意表明、4日に辞任しています。
ついにはワシントン・ポスト紙に 「ルーピー賞」 まで創設
ノ´⌒ヽ γ⌒´ \ .// "´ ⌒\ ) i./ ⌒ ⌒ i ) i (・ )` ´( ・) i,/ | (_人_) .| \ `ー´ / / ヽ | レ´)(`V .| ゝ_ノ ゝ_ノ | i | | | | .| | | .し 'iヽJ | ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | 第一回 | |ルーピー賞 | .  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
ルーピー賞AA |
2010年9月21日、ワシントン・ポスト紙が 「ルーピー賞」 を創設。 鳩山首相にちなんで作られた賞で、「この1年間でもっとも間抜けな醜態をさらした人や組織を表彰する」 との趣旨で、またアル・カーメン氏が作った企画と記事でした。 この人、よほど気に入ったんでしょうか、ルーピーが…。
In the Loop Mubarak leads the way . . . sort of ついにはルーピー賞まで… |
ちなみに栄えある第一回の受賞は、エジプトでもっとも発行部数の多い国営の新聞、「Al-Ahram 紙」 となりました。
授賞理由は、同年9月1日にアメリカ・ホワイトハウスで行われたアメリカ・ヨルダン・エジプト・イスラエル・パレスチナ自治政府の首脳会議において、記者団との会見に臨む首脳が赤絨毯を歩いているシーンの改変でした。
このシーンでは、本来はアメリカ・オバマ大統領が中央先頭を歩いていたのですが、「Al-Ahram 紙」 は自国大統領であるホスニー・ムバラク大統領が中央先頭を颯爽と歩いているかのように写真を改ざん。 さらにその改ざんした写真を元に、「我が大統領がパレスチナ問題と中東和平を力強くリードしている」 といった論評を加えていたというものでした。
しかし同国ブロガーらによって改ざん・捏造はあっさり発覚、ちょっとした笑い話にもなっていたものですが、これが 「あまりに間抜けだ」 ということで、ルーピー賞となったのでした。 …まぁ正直ここまで何度も云われると、鳩山が好きでない筆者ですら、「お前のところの歴代大統領だって、それほど褒められたものかよ」 なんて反感を覚えたりもしますが…。
膨大な 「鳩山関連用語」 が…大物の貫録か
鳩山総理の発言をめぐるネット上の流行語はたくさんあります。
有名な 友愛 や 「Trust Me」「どうぞ戦ってください」「鳩山イニシアチブ」 を筆頭に、「あなた方にいわれたくない」、ジミンガー、「私は国というものが何だか良く分からない」「民意です」「決めないことを決めました」「努力は認めて欲しい」「私は大目にみてほしい」「日本列島は日本人だけの所有物ではないんですから」「ゼロベース」「マニフェストが進化した」「鳩山がんばれという思いをいただいた」「腹案がある」「揺らぎは宇宙の真理」「別に法的に決まっているわけではない」「それとこれとは違う」「私の党代表としての発言であって民主党の公約というわけではない」「今日は大変いい天気です」「海兵隊が抑止力と思っていなかった」 など膨大な数となっています。