嘘を嘘と見抜けない人は…「アサヒる」
「アサヒる」 とは、嘘をつくこと、ありもしない事実無根なことを実在するかのようにもっともらしく捏造して伝えること、デッチ上げ、あるいは曲解で無から何かを作り出し事実だと主張することです。 「アサヒった」「アサヒるな」 などのようにして使います。
2007年9月末から急激に流行し、2007年12月14日の 「ネット流行語大賞」 では 「アサヒる」 が流行語大賞金賞を受賞、「現代用語の基礎知識 2008」 にも 「アサヒる」 は収録されています。 後に 「アサヒる問題」 などとも呼ばれています。
安倍総理辞任を受けた朝日新聞のコラムから…
「アサヒる」 誕生の経緯ですが、2007年8月27日、安倍晋三総理大臣の辞任を受けて掲載された 9月24日掲載の朝日新聞のコラム記事 「青白い顔、張りない声 おわびで幕 安倍首相会見」 でコラムニストの石原壮一郎さんが 「アタシ、もうアベしちゃおうかな」(突然辞任した安倍総理のアベを取って、無責任に仕事を放り投げるさま、その心情を吐露した言葉) を、あちこちで聞こえる 「流行語」 として紹介しているのを引用 (記事自体は朝日の記者のもの) したことから始まります。
アサヒる」 発端となった 「青白い顔、張りない声 おわびで幕 安倍首相会見」 記事 |
掲示板 2ちゃんねる の 「ニュース速報板」(ν速) では、この記事が朝日新聞のニュースサイト 「asahi.com」 に掲載 (9月25日) されると、これを元にした スレッド (『アタシ、もうアベしちゃおうかな』 病人叩いてアカヒがホルホル) が同日に立ちました (asahi.com に掲載されてから40分後)。
多くのスレッド利用者が早速 ネット の検索サイトで 「アベしちゃおう」「アベする」「アベっちゃう」 などでキーワード検索を試みたところぜんぜん引っかからず、「いったいどこで流行ってる流行語なんだ?」「まさか Available するって意味のアベと勘違い?」「また朝日が捏造かよ!」 と 祭り に。
その後他のスレッド (スレ) や継続スレが立ち上がり始めてやっと検索にかかるようになってきましたが、Google、Yahoo!ともに、検索結果に表示されるのは朝日の記事やそれを元にした 「2ちゃんねる」 のスレ、ブログ などのエントリーばかり (そうでないのもいくつかはある)。 あ〜あ、また詐っちまいましたか、朝日さん…という訳で、上記スレの16番目の 書き込み に登場した 「アサヒすんのやめろよ」 を受ける形で 「アサヒる」「アサヒった」 などが使われるようになりました。
また同日にこの 「事件」 を取り上げた 「日本文化チャンネル桜」 番組中で、キャスターの桜林美佐氏が 「アサヒしちゃってるんですよ」 と発言。 動画サイト 「YouTube」 などに転載され話題に。 さっそく ネット住民 の間では、「いっそアサヒっちゃおうを流行らせよう」 といった流れになって、まとめサイト なども次々に登場。 その日のうちには 「朝日新聞が捏造すること」 を 「アサヒる」 といった言葉で表現することが一気にネットに広がることになりました (同日中に Google では検索結果1万件を突破)。
ガイドラインが話し合われ、「アサヒる」 の定義なども
なおガイドラインなども話し合われ、当初は 「アサヒる」 の定義に関して、いろんな要素がどんどん詰め込まれて (例えば左翼だとか反日とか売国とか) 行きましたが、それらがすぐにどんどんそぎ落とされて、「嘘つき」「捏造すること」「自分を棚に上げて他人ばかり責めること」 のような一般的に良く使う言葉の内容に自然と収斂したのは見事でした。
左翼だとか反日だとか売国だとかの ニュアンス が入ると政治やら外交やらマスコミ論やらの会話でしか使えなくなりますし、それですと 「専門用語」 のような扱いで一般に広まりにくくなります。 そもそもそれらの話題を好む層は朝日のスタンスは好意的であれ批判的であれ分かっている訳で、「嘘つき」 などといったシンプルな意味ですと、独特のドン臭い語感もあって、うまくしたら子供たちにも流行らせることができそうな発展性を感じさせます。
ネットでしばしば話題となる朝日新聞社屋 |
結果的に 「アベする」 もセットで使われ、朝日新聞のいうように 「アベする」 が流行語になった…とも云えますが、引用元のコラムニストの石原壮一郎さんの 「流行語と判断した理由」 との意見もその後二転三転し (名前は忘れたが雑誌で見た、知人が使っているのを聞いた…など)、「マスコミがどうやってインチキ流行語をデッチ上げる」 のか、その手法が垣間見える独特の騒ぎとなっていましたね。
検証義務を果たさずコラムニストの怪しげな話をそのまま載せたのは批判されても仕方ない状況だったでしょう。
まぁ 「朝日社内」 では、ひょっとしたら流行っていたのかも知れませんが… (^-^;)。
検証不可能、実証責任放棄の 「イメージ操作記事」 の問題
ところでこのコラムに限らず、朝日の記事などでよく見かけるこの手の手法、「○○という流行語がある」「○○という声が聞こえる」「○○という意見が多く出ている」 などは、本当に責任放棄した卑劣な記事だと思いますね。
読者 が検証不可能な 「誰かが言ってる、どこかで流行ってる」 という話を根拠に、けれど自らは一度その話を 「しかしそれは短絡的だ」「子供じみた反応だ」 とたしなめて自分を一段上に持ち上げた上で、「されども○○のような話がでること自体、○○にも問題があるからではないだろうか」「こんな子供じみた話がでるとは情けない」 と締めくくる。 自分をあたかも公平な第三者かのような立場、メタポジション に置いて、上から目線で片方だけを徹底的に批判する。
今回のコラムもモロにそういう構造になってますが、調査方法が明示されない検証不可能な 「世論調査」、匿名モザイクの自称 「元関係者の証言」 ともども、これが言葉を大切にし、ネットの匿名性を批判するジャーナリストやコラムニストがやるべき仕事なんでしょうかって思います。 いやそれ以前に、本当に 病気 で仕事を辞めざるを得ない人に対する罵倒語としてこんな言葉を作るのは、人権上問題はないんでしょうかね。
まあ朝日は藪をつついて蛇を出してしまったって感じでしょうか。 発端は自分らが 「アサヒった」 せいだから、どうにもなりませんが…。 なおネット上の発言や レス は、もちろん捏造もできますが、基本的には検索したら出てくる類のものです。 「人から聞いた」 などは、それが出来ません。 それを、自らが公器と称して憚らないマスコミが当然のように何度も行うから問題なのです。
2007年10月29日、中日新聞(東京新聞) で新たな燃料が…
東京新聞 10月29日付の紙面 「一筆両談」 にて、中日新聞 (東京新聞) 編集委員 川北隆雄さんによるコラム、『「流行語大賞』 はこれだ』 が掲載。 「最近、人名の後に 「する」 とか 「る」 を付けて動詞化することが、はやっている」 とした上で、「最も流行したのは、やはり 「アベする」 だろう」 とし、もうひとつの動詞化として沢尻エリカさんの映画キャンペーンの時の不遜な態度を揶揄した 「サワジる」 も紹介。 こちらも言葉として面白いとした上で、「アベする」 を流行語大賞に、「サワジる」 をトップ10 圏内にと推す内容でした。
アベする」 と 「アサヒる」 Google キーワードトレンドヒストリー |
前述した朝日新聞の政治記事に紹介されたコラムニスト石原壮一郎さんの 「アタシ、もうアベしちゃおうかな」 との 「アベする流行語捏造疑惑」 に端を発する 「アベする」 ですが、2ヶ月経って思わぬところから 「アサヒる」 に幼稚な反撃が加えられた格好です。
まず 「固有名詞が動詞化することが流行ってる」 という書き出しからおかしいですね。 川北隆雄さんは 「アベ」 と 「サワジリ」 をあげていますが、ではそれ以外に何があったんでしょうか?
第二に、アベするの意味は 「仕事や役割を無責任に投げ出すこと」 だったはずなのに、今回のコラムでは、いつのまにか 「総理の座には固執しないが議員の座には執着すること」 になっています。 おそらくこれがこの記者の云いたかったことなんでしょうが、総理を辞任しただけではまだ足りず、議員を辞めろ、政治の世界から完全に消え失せろってことなんでしょうか。
これが言論の徒である新聞記者の書く文章なのか…と話題に
矛盾やデタラメはまだまだ続き、「アベする」 の流行語としての根拠がなんら示されず、「コラムニストが紹介する以前に公の場で使われていることは明らかなので、捏造ではない」 という一言 (本当にこれだけです) で何の説明もなく 「流行語だった」 と結論しています。 さらにそれを根拠に 「アベするは捏造という意見こそ捏造」 と筋道の通らない反論を試みていますが、何の根拠も実証も伴わないので読者は全く意味不明です。 ちなみにこの日までの Google キーワードトレンドヒストリーの結果は右の図の通りです。
「公の場」 とは 「どこの場のこと」 なのか? 「明らか」 とは、「どう明らか」 なのか。 「公の場でどのくらいの頻度で使われたら流行語」 となるのか。 基準があるとして、ではそれを決めたのは誰で、どう正当性があるのか。 なんでこれら当たり前の説明が一切ない、あるいはできないんでしょうか。 小学生ですら知ってる 5W1H が全くない文章しか書けない記者が編集委員になれるんですから、東京新聞は素晴らしい新聞社ですね。
さらに自分が聞いたという体験談とネット検索数を根拠として 「サワジる」 を流行語にあげていますが、記事発表後の検索数はわずか数百であり、「固有名詞の動詞化」 で最大の検索結果となっているであろう 「アサヒる」 を無視しています。 「アベする」 捏造説に触れている以上、「アサヒる」 が目に入らないわけがない訳で、明らかに偏向したスタンスでのコラムと評して差し支えないでしょう。 また 「ネット検索数」 を一方で自説の根拠としながら、一方では無視して論を組み立てる矛盾、そして全体に流れているのは (これが一番重要)、「ネガティブ な用語、ネガティブな動詞を固有名詞の動詞化で作ること」 への 「無批判の同調」 あるいは 「肯定」。
しばしばこれらの 「固有名詞の動詞化」 は差別やレッテル貼り、学校での 「いじめ」 などと直結する行為です。 とくに人名の動詞化は、人の名前に出自や民族性が色濃く出ることから、差別行為の最たるものの一つとして忌避されるべきものでしょう。 「差別をなくし人権を大切にする」「言葉を大切にする」 べき新聞記者に、あるまじきものと思わないんでしょうか? 公人とは云え病人の名前を動詞化して笑いものにするなんて、どんだけ血祭りに上げれば気が済むのか、まともな神経と報道人としてのモラルや理性の健在を強く疑います。 これを受けて、掲示板 などでは 「カワキタる」 などといった言葉も生まれているようです。
ちなみにその後この記者は、このコラムについて説明を求められた際に、「勘弁してくれ」 と述べて回答をせずにいます。 まさに マスゴミ に生きる人の面目躍如の体があります。
2007年11月15日、「おもいッきりイイ!!テレビ」 でも歪曲が…
日テレ系のみのもんた氏が 司会 のお昼の番組、「おもいッきりイイ!!テレビ」で、ネット発の新語紹介コーナー 「きのう流行った言葉たち」 で 「アサヒる」 の紹介。 しかし紹介の内容は、「朝日新聞が政治などに対して厳しい見解を示す記事が多いことから、執拗に責め立てること」 とサラリと紹介。 見方によっては、「悪をしぶとく追求する」 のような、報道機関として 「良い意味」 の言葉にも感じられますね。 そのすぐ後に今度は 「アベする」 を取り上げ、こちらは以前朝日新聞が捏造した言葉の通り、「仕事を無責任に途中で放り投げること」 と説明。
アサヒるとアベするを一緒に取り上げている以上、「ことの顛末を知らない訳がない」 はずですが、ここまでやっちゃいますかw さっそくネット 界隈 では 「日テレがアサヒった」「アサヒるをアサヒった」 と話題になっているようですが、mixi のキーワードランキングを紹介するコーナーでの一幕で、「アサヒる」 は1位の 「浦和レッズ」、2位の 「ボジョレー」 に次ぐ3番目で、「アベする」 は実は圏外。
浦和レッズの説明でもボジョレーの説明でもいいのに、わざわざ3位のアサヒるを選んでいるって点で、それなりの意図 (朝日への皮肉…なのか、はたまたネット住民へのおちょくり) はあるんでしょうが、目的が見えずに不思議な感じでした。 スタッフ内で意見の衝突でもあったのでしょうか。
なお報道関係ではこのほか、雑誌 「週刊新潮」 の10月11日号(2007年10月4日発売) で 「アサヒる」 がネット上で話題になっていると触れたほか、同年12月2日に NHK の番組、「未来観測 つながるテレビ@ヒューマン」 の中でも解説抜きで流行語として触れられています (保守系と思われる新聞雑誌テレビは、かなりの数が報じていました)。
2010年6月16日、「検索して出てこなかったら流行語じゃないなど笑止千万」 と再反論
首相交代記念! 今だから語れる事件の真相 あの「アベする」騒動を振り返る ブログの炎上を体験して実感した大人のマナー |
「アベする」、ひいては 「アサヒる」 の生みの親とも云えるコラムニスト石原壮一郎さんは、その後2010年4月7日から、DIAMOND online にて、「石原壮一郎 「大人のネットマナー教室」 を連載。
「ネットでも空気を読めないのはビジネスマンとしてNG?」 とのキャッチがついたこの記事では、流行しているミニブログ ツイッター の利用法や、ビジネスにおける メール の注意点や活用法などを紹介しています。
その後この教室は、6月2日の第8回からはブログを取り巻く話題に。 同月16日の第10回では、同月の鳩山首相から管首相への首相交代を意識してか、「首相交代記念! 今だから語れる事件の真相 あの「アベする」騒動を振り返る ブログの炎上を体験して実感した大人のマナー」 を取り上げています。
この中で石原さんは、大ざっぱな事件のあらましを述べたあと、「自分の周りのスタッフが使っていたのは間違いない」「ネットで検索して出てこないから流行語ではないなどと非難するのは笑止千万」「(流行語とは) タレントが使う言葉ばかりじゃない、それを「流行語」と言って何が悪い!」「非難ではなく罵詈雑言ばかりだった」 と、繰り返し述べています。
ネット上では、タレントがしゃべった言葉をそのまま素直に受け取って 「流行語だ」 などと主張する人は、実はあまりいません (全くいないわけではありませんが)。 むしろ、「タレント事務所や広告代理店からの指示で流行らそうとして必死に使ってるのはわかるが、それ、全然流行ってませんから」 などと、その姿を嗤う姿勢の人の方が、よほど多いような気がします。
流行語の定義にも触れていますが、石原さんの周りのスタッフや友人のみが使っていたのなら、それは流行語ではなく、「身内の言葉」「ローカル用語」、あるいはせいぜい 「仲間内の流行語」 でしょう。 石原さんが一般人なら、「○○は (俺たちの中では) 流行語」 と個人的に述べるのは問題がありません。 問題は、マスコミを通じて世間に広まることが十分に予想される状況 (取材) で、前提条件を付けずに 「流行語だ」 とした点にあるのではないでしょうか。
なお記事中で石原さんは、「おいおい、石原。流行語呼ばわりはちょっと大げさだったんじゃないの」 と思っていた方も多かったかもしれません」 とした上で、そうした人には 「えー、そうですか。 うーん、そうかなあ。 まあいいんじゃないですかね。 エヘヘ」 と返答すると述べています。 朝日新聞は安倍政権にきわめて批判的でしたから、朝日からの取材を受けた石原さんは、ちょっとサービス精神を発揮しすぎた…なんて感じなのでしょうか。
この記事ではネットマナーとして、「誰も反論できない正義をかさにきて、匿名で他人を批判するのは良くない」「面と向かって言えないことは、ネット上でも言うべきではない」「それが大人のマナーです」 とまとめていますが、正直これは、少々読んでいて辛いです。 「炎上」 を テーマ とするマナーなら、「自分の身の回りの事象を、さも普遍的で一般的なことであるかのように扱って正当化しない」(いわゆる 主語を大きく しない)、「自分の書いたり喋った言葉が、相手にどう伝わるかを考えて慎重に書いたり発言する」 ってものの方が、マナー、もしくは自分の身を守るためには大切なことなのではと思います。
石原さんのネットマナー教室を読んで、ネット初心者のネットスキル、ネットマナーがどのくらい上がるのか、とても興味がありますね。 ところで今回の石原さんの周りには、「アタシ、ハトヤマしちゃおうかな」 って流行語は、あちこちで聞こえてこなかったのでしょうか。
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