ザッザッザッ…軍隊が行進する靴の響き 「軍靴の音」
「軍靴の音」(ぐんかのおと) とは、戦争や軍国主義、軍隊などを象徴するもののひとつです。 「軍靴の音が聞こえてくる」「軍靴の足音がする」 あるいは 「軍靴の響き」 といった使い方をします。
この言葉は、直接的には陸軍兵士が履く兵装品の靴の足音が鳴り響くさま、ザッザッザっと兵士が隊列を組んで歩くさま、軍隊が行進する時の足音を指しています。
「軍靴」 といえば、編上げブーツ |
ただし通常は、戦争や 侵略、軍国主義や軍隊そのものを直接表現するために使うことは稀で、それらとは全く関係がないにもかかわらず、一部の人が 「これはいずれ戦争や軍国主義につながってしまう危険な考えや動き、あるいはその兆候だ」 と考えるものに当てはめて象徴的・比喩的に使われる言葉、もしくは単なる 定番 の成句・常套句として使われるものとなっています。
こうした言葉を好んで使うのは朝日新聞や毎日新聞、その系列のテレビや雑誌、これらと同じ傾向を持つ文化人や学者、平和団体・人権団体や、新聞や雑誌などの読者投稿欄の投稿者らなどが多いとされます。
非常に似た言葉として、「いつか来た道」「戦前 に回帰」「右傾化」「過ちを繰り返すな」「騙されないで」「子供を戦場に送るな」 などがありますが、意味はほぼ同じです。
その主張には一定の根拠が伴っている場合もありますが、違う立場の人には理解できない単なるこじつけ、あまりに飛躍しすぎた曲解、単なる歪曲による強引な結びつけと感じられる場合もあります。 その場合、揶揄の ニュアンス を込め、「軍靴」 をあえて 誤読 し、「ぐんくつ」「ぐんぐつ」 などとひらがなで表記する場合もあります。
イメージで語れる便利なフレーズ 「軍靴の音」
使い方としては、例えば憲法9条を中心とした改憲問題では、「平和憲法を壊そうとしている」 → 「日本を戦争ができる国にしようとしている」 との論調で、改憲に反対する意見の中に 「軍靴の音が聞こえてくるのは、私だけでしょうか」 といった表現を加えます。
具体的にどう戦争ができる体制へと至るのかといった根拠を伴う筋道の通った説明をせずとも、「軍靴の音が〜」 とするだけで、何となくイメージで決めつけ誘導できるのが便利な言葉だと云えます。
なお改憲問題以外にも、日米安保条約、国の軍事費や 装備品、自衛隊の災害救助を含めたあらゆる活動についてや、さらには国旗国歌 (日の丸・君が代) や歴史問題、教科書問題、靖国参拝問題、どう考えてもそれらと全く関係がない アニメ や マンガ の些細な表現などなど、ありとあらゆるものに 「その危険な兆候」 を感じ取り、「軍靴の音が聞こえる」(戦争を賛美している、日本を軍国主義・戦争の道へと導いている) との表現で、批判を行ったりします。
「軍靴幻聴」 という揶揄も
一方、こうした表現を行う人たちを冷ややかに見る人は、「軍靴の音」 を揶揄・罵倒の意味で使うケースもあります。 その場合はとくに、ネットスラング で 軍靴幻聴 (軍靴幻聴病/ 軍靴幻聴症) と呼んだりもします。
これは、軍靴の音が聞こえる理由が 「こじつけ」 にしか聞こえないという意味や、為にする議論になっているとの批判もありますが、もう一つの理由としては、日本が対象ならばどんな些細なことでも 「軍靴の音が聞こえる」 のに、中国や韓国、北朝鮮といった 特定アジア の国々が対象となると、これらの国が軍事費を激増させたり、「東京を火の海にする」 とまでいっても、なぜか一切軍靴の音が聞こえてこない特異体質を、「別の意図があるのではないか」「ダブルスタンダード ではないか」 と批判・揶揄する意味があります。