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侵略

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侵略というとやっぱり戦車
侵略というとやっぱり戦車

 「侵略」(しんりゃく) とは、他の国や勢力に武力で介入し、一方的に主権や領土を侵し、領土や主権、財産を蹂躙・強奪することです。

 第29回国連総会で1974年12月14日に議決された決議3314 (後述します) によって、国際法上の侵略 (Aggression) は、国や武装勢力が他の国や武装勢力に対し、自衛ではなく一方的に介入し、相手の主権、領土、独立を奪うこととなっています。

 そのための実力の行使、すなわち軍事力による侵略行為を 「侵略戦争」(War of aggression) と呼びますが、単に相手国や武装政治勢力に 限定的 な打撃を与えるためだけに攻め込む行為である 「侵攻」(Invasion) とは、概念 が異なります。

 ただし情勢によっては全く区別なく同じような意味で使う場合もありますし、最初は 「侵攻」 だったのが、結果的に 「侵略」 になる場合もあり、厳格な区別は困難な場合も少なくありません (ある側面では侵略だったが別の側面では侵攻だった、などと表現する場合もあります)。

 その定義は、国際法によって定められた後もはなはだあいまいです。

「侵略」「侵攻」「進出」…難しいその定義

 この 「侵略」 という行為は、現在でこそ 「相手を蹂躙する許されざる行為」 になってはいるものの、帝国主義の時代 (およそ19世紀中期から20世紀中期くらいまで) には、勝算があり大義名分さえ立てば、むしろ自国の存立のために積極的に打って出るべきなどという状況もありましたし、「自衛」 と 「侵略」 などは、その時々の状況や個別の前提条件に大きな幅があり、一概には決めらないことだったりします。

 例えばA国とB国の2か国があったとして、AがBに一方的に攻めこみ主権を犯したら侵略に該当しますが、A国が 「B国は元々は我々A国の一部だった」「それを無理やり分離させただけなのだ」 と主張すれば、これは侵略ではなく、失地 回復 の戦争、奪われた土地や権利を取り戻すための自衛的な戦争になってしまいます。

 またB国がA国を仮想敵国とし猛烈な軍拡を続けていたり、B国にあるA国の国民や財産が危険に脅かされていたら、これも 「防衛的な先制攻撃」 となってしまいます。 両国が接する中立地帯でB国から先制攻撃を受け、その後その部隊がB国内に逃げ込んでしまったら (いずれまた出てくる可能性がある)、A国は防衛と報復のため、B国内に入る場合もあるでしょう。

 あらゆる戦争は自衛を理由に開始されると良く云われます。 直接利害を持つ人たちがいなくなり、公平な判断が可能となる後世の歴史家にその判断はしばしば任せられるのでしょうが、はるか紀元前の戦争でも定まった評価がないことも少なくありませんし、さらに歴史に学べば、所詮は 「勝てば官軍」 だったりするのが難しいです。

人権を守るために人を殺す…複雑な国際社会

 現代にあっても、ある国や地域で支配勢力が非人道的な行為 (虐殺や民族浄化など) を繰り返している際に、他国がそこに軍事的に介入し、その支配勢力を排除する場合などは、判断が非常に難しくなります。 攻め込む方は 「人権」 を理由としますが、攻め込まれる方からしたら 「内政干渉」 であり 「自存自衛」 を脅かす外敵からの 「侵略そのもの」 です。

 こちらは国連の場で非難決議を行ったり経済的な制裁を行ったりして状況の改善を促しますが、それでも改善しない場合には、最終的には武力行使議決を行い、「人道のための平和維持活動だ」 として国連軍として攻め込むことになります。 この場合、きちんとした手続きを踏まえ国連のお墨付きがある限りは 「侵略戦争ではない」 とされますが、それが本当に人権を守るためなのか、人権を理由に国連で大きな発言権を持つ大国が国連の名を借りて権益を得るのが目的ではないのかとの疑念は、あらゆる個別の軍事制裁、平和維持活動で議論されるところです。

 言葉としての 「侵略」 には単なる強奪者の意味しかないので、前述した 「侵攻」 とか 「進出」(Advancement)、「介入」 などと言い換える取り組みは、多くの戦争や武力行使で行われています。 昔も今も、誰だって不名誉な 「侵略者」(Invader) などとは呼ばれたくないのです。 しかし言葉を変えたところで、歴史的事実が変わるわけではありません。

 なお一方で、先進国や巨大企業がその強大な経済力・資本力に物を言わせ、発展途上国に経済的に進出することを、「経済侵略だ」 と批判のために表現する場合もあります。 武力にせよ経済力にせよ、力のあるものがその力にものを云わせて他国や他勢力の領土や主権を脅かせば、それが武力によるものでなくとも侵略と同じであるとの意見は、実体を見れば一定以上の説得力を持ちますが、原理原則を突き詰めてしまうと、戦争はもちろん自由な経済活動もできなくなってしまいます。

 どこで折り合いを付けるのか、共通のルールをどう作るのか、その答えはまだありません。

おたく界隈の 「侵略」、天下を獲らなイカ? 侵略するでゲソ

 ところで 同人 の世界では、特定の アニメマンガ、小説や ラノベゲーム、あるいはそれらに登場する キャラクター やその カップリング などの熱心な ファン が、他の作品などに 転ぶ ような状態、あるいは転んだまま 帰ってこない なんて状況を、「あいつは○○に侵略された」「浸食された」 などと表現するケースがあります。

 あるいは特定の ジャンル同人イベント などで、他のジャンルに食われて勢力を落とす状況や、サークルスペース で、自分と隣り合った別の サークル が、こちらのエリアまではみ出して机を占領している状態を、こう呼ぶ場合もあります。

 「侵略」 という、ともすれば数百万もの人命が失われる災禍を表わす言葉の使い方としては、かなり不謹慎で不適切な感じもしなくはありませんが、逆に 「侵略」 が、その程度の意味の言葉になっている日本は、平和で素敵な国だとも云えますね。

国際連合総会決議3314 の主な条文

第一条(侵略の定義)

侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であ って、この定義に述べられているものをいう。

第三条(侵略行為)

次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無に関わりなく、二条の規定に従うことを条件として、侵略行為とされる。

(a) 一国の軍隊による他国の領域に対する侵略若しくは、攻撃、一時的なものであってもかかる侵入若しくは攻撃の結果もたらせられる軍事占領、又は武力の行使による他国の全部若しくは一部の併合

(b) 一国の軍隊による他国の領域に対する砲爆撃、又は国に一国による他国の領域に対する兵器の使用

(c) 一国の軍隊による他国の港又は沿岸の封鎖

(d) 一国の軍隊による他国の陸軍、海軍若しくは空軍又は船隊若しくは航空隊に関する攻撃

(e) 受入国との合意にもとづきその国の領域内にある軍隊の当該合意において定められている条件に反する使用、又は、当該合意の終了後のかかる領域内における当該軍隊の駐留の継続

(f) 他国の使用に供した領域を、当該他国が第三国に対する侵略行為を行うために使用することを許容する国家の行為

(g) 上記の諸行為い相当する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装した集団、団体、不正規兵又は傭兵の国家による若しくは国家のための派遣、又はかかる行為に対する国家の実質的関与

United Nations General Assembly Resolution 3314 on the Definition of Aggression
ミネソタ大学人権センター/ 侵略の定義に関する決議 による和訳より

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年2月6日)
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