ジュブナイルから 「ライトノベル」 へ
「ライトノベル」(Light Novel) とは、表紙 や挿絵に アニメ や マンガ のような イラスト が入っている、平易な文章で読みやすい文庫の形で出版される比較的高い年齢層向けのジュニア小説、児童小説の一種のことです。 略して 「ラノベ」 とも呼ばれます。
こうした読み物は、それ以前までは 「ジュブナイル」(Juvenile) と呼ばれていました (1990年代以降はラノベに置き換わってほとんど使われていません)。 対象とする年齢層は、完全な子供向け小説というよりは、子供と大人 (一般向け) の中間くらいの中高生を想定していて、分類方法によっては想定する 読者 を 「ヤングアダルト」(Young Adult) とし、それがそのままジャンル名として使われている場合もあります。
代表的なライトノベル文庫レーベルとしては、A6サイズで刊行される 角川スニーカー文庫 (1988年)、富士見ファンタジア文庫 (1988年)、ソノラマ文庫(1975年)、コバルト文庫 (1976年)、電撃文庫 (1993年) などがそれにあたり、こうした小説レーベルは、「ジュニア文庫」 などとも呼ばれます。 それぞれが母体となるライトノベル雑誌を持っていたり、ゲーム の専門誌を持つなど、様々なメディアを巻き込みながら展開していました。
コバルト文庫などは、恋愛物語を中心とした少女漫画の小説版のような内容を持ち、お伽草子や赤本など、日本に昔からある庶民向け読み物の系譜に連なっている部分もありますが、その他の文庫と同様、1980年代末に 「少女文庫ブーム」 とも呼べる大きな人気を得ながら、その後は急速に収縮。 ボーイズラブ などの人気上昇と共に、独特な展開を遂げてゆきます。
なかでも角川スニーカー文庫と、富士見ファンタジア文庫の影響は大きく、こんにちのライトノベルのおおよその形を創り上げたのは、この両文庫と同時期の パソコン通信 での書き手や読者らのフォーラムや会議室の存在にあったといって良いでしょう。 その後登場した電撃文庫の大ヒットなどもあり、様々な ジャンル のバラエティに富んだ作品や作家が生まれてくることになりました。 ちなみにこれら3つの文庫は、様々な理由やお家騒動による会社分裂など紆余曲折はありましたが、基本的には全部角川です。
中高生を主人公とした、ファンタジーや学園ものが人気に
内容的には、想定読者層と同じ中学生や高校生が登場するSFや ファンタジー、ミステリー、オカルトやホラーのようなジャンルのものが多く、完全に異世界の物語や、学園ものから始まって異世界召喚に続くように作られたものもあれば、学校を舞台として、読者と同じ日常生活の物語を、ちょっと不思議要素を加えてコミカルに描いただけの作品もあります。
作家の多くが、これらライトノベル系文庫や出版社が行っている新人賞などを登竜門としてデビューし、人気のある 絵師、及び文庫編集者との協力関係の元で作品を作り、発表しています。
文庫レーベルごとに作品傾向はかなりハッキリと分かれていて、新しい文庫レーベルが立ち上がるとなると、同時に何冊もが一挙に刊行され、作品傾向を固めてしまいます。 結果、すぐに失速してしまうレーベルも少なくないのですが、名称や作品傾向を変えて別レーベルとして再出発する場合もあります。
ライトノベル作品の人気や売上は、内容そのものの小説部分の面白さが要素としてもっとも大きいのは当然ですが、登場する キャラクター (ヒーロー や ヒロイン) の持つ魅力が人気に直結する部分が多く、その意味で絵師の描く魅力的なキャラクターイラストの部分も決して小さくはありません (イラストが主な要素となっている作品も多い)。
またアニメやマンガ、ゲームなど、複数のメディアを使った マルチメディア な展開を行うケースが多いのもライトノベルの特徴で (アニメやマンガやゲームがラノベ化することもあり、それが中心のレーベルもあります)、こうしたメディアミックスが行われる作品タイトルの中核として位置づけられているのも、ライトノベルの大きな特徴と云えるでしょう。 これは想定される顧客層が同一年代であることも理由ですが、ラノベの黎明期に テーブルトークRPG (TRPG) やその リプレイ が 作者、読者、版元からメディアまで、密接に関係していたことと無関係ではありません。
パソコン通信から生まれた 「ライトノベル」
こうした読み物のジャンルや カテゴリ は昔からありましたが、「ライトノベル」(ラノベ) というキャッチーな名称が生まれたのはかなり後で、パソコン通信時代の、ネット の中ででした。
場所は大手商用ネット、NiftY-Serve の 「SFファンタジーフォーラム」 で、より対象年令が高く、一般向け小説と同じようなジャンルをも扱いはするけれど、一般の小説よりは軽い読み物を 「ライトノベル」 と命名。 1990年12月には、同フォーラム内に 「ライトノベル会議室」 が設置され、この言葉が広がりました。
小説読みや 同人作家 の他、多数のプロ作家が集っていたこのフォーラムでの情報交換、この場所を通じての作品の発表などにより、このジャンルが大きく盛り上がり、やがて日本のSFやファンタジーのみならず、広く小説やノベル全体をも巻き込んだ、大きな潮流が作られることになりました。
代表的なジュニア文庫・ライトノベル文庫レーベル 創刊年表
創刊 | レーベル名 | 出版社 |
1973年 | 秋元文庫 | 秋元書房 |
1975年 | ソノラマ文庫 | 朝日ソノラマ |
1976年5月 | コバルト文庫 | 集英社 |
1982年8月 | アニメージュ文庫 | 徳間書店 |
1988年3月 | 角川スニーカー文庫 | 角川書店 |
1988年5月 | アルゴ文庫 | 光風社出版 |
1988年 | 富士見ファンタジア文庫 | 富士見書房 |
1989年 | エニックス文庫 | エニックス |
1989年7月 | バンダイ・キャラクターノベルズ | バンダイ |
1989年 | いちご文庫 | 双葉社 |
1989年 | MOE文庫 スイートハート | MOE出版 |
1989年 | レモン文庫 | 学習研究社 |
1990年 | パンプキン文庫 | 朝日ソノラマ |
1990年 | 大陸ネオファンタジー文庫 | 大陸書房 |
1991年3月 | スーパーファンタジー文庫 | 集英社 |
1991年 | パレット文庫 | 小学館 |
1991年11月 | ハヤカワ文庫 ハィ!ブックス | 早川書房 |
1992年 | 角川ルビー文庫 | 角川書店 |
1992年6月 | スーパークエスト文庫 | 小学館 |
1993年 | キャンバス文庫 | 小学館 |
1993年 | ログアウト冒険文庫 | アスキー |
1993年6月 | 電撃文庫 | アスキー・メディアワークス |
1996年2月 | ガンマ文庫 | 竹書房 |
1998年7月18日 | ファミ通文庫 | エンターブレイン |
2000年7月14日 | スーパーダッシュ文庫 | 集英社 |
2000年8月 | 徳間デュアル文庫 | 徳間書店 |
2000年11月 | 富士見ミステリー文庫 | 富士見書房 |
2002年7月25日 | MF文庫J | メディアファクトリー |
2004年12月 | メガミ文庫 | 学習研究社 |
2006年1月14日 | GA文庫 | ソフトバンククリエイティブ |
2006年1月20日 | ゼータ文庫 | 竹書房 |
2006年7月1日 | HJ文庫 | ホビージャパン |
2007年 | ルルル文庫 | 小学館 |
2007年5月24日 | ガガガ文庫 | 小学館 |
2007年11月1日 | なごみ文庫 | ハーヴェスト出版 |
2008年5月20日 | 一迅社文庫 | 一迅社 |
2010年3月10日 | スマッシュ文庫 | PHP研究所 |
2010年9月10日 | このライトノベルがすごい!文庫 | 宝島社 |