テレビゲームの 「RPG」 を、全部人間がやるゲームです
「テーブルトークRPG」(TRPG) とは、ゲームブック (もしくは ルールブック) と呼ばれる大雑把なシナリオを書き留めた本を進行のベースとし、あらかじめ定められたルールに則って、複数人 (ゲーム進行役の ゲームマスター (GM) と プレイヤー) で物語を作りながら遊び進めてゆく特殊なボードゲームの一種です。
「ボードRPG」 とも呼びます。
ドラクエ や FF などの RPG の原型 「TRPG」
中世に思いをはせる… |
実際に遊んだことがない人には、ちょっとわかりづらいのが 「テーブルトークRPG」 です。 コンピュータゲームの 「ドラクエ」 や 「FF」 のようなRPGを、シナリオの書かれた本やマップ、カード、サイコロ、何より仲間との会話で進めてゆくようなもので、テレビゲームのRPGのルーツと云えば理解できますでしょうか。
というか、テーブルトークRPGのゲームマスターをコンピュータプログラムに置き換えたのが、「ウィザードリィ/ Wizardry」 や 「ドラクエ」 などのテレビゲームのRPGだと云う方が分かり易いかも知れません。 もしくは後年発達した 「ネトゲ」(MMOなどのネットワークゲーム) で、「キャラクター への なりきり プレイ」 なんて感じが、かなり近い感じでしょうかね。
ネトゲの RPG に関しては、TRPG というより、手紙 (郵政メール) を利用した遠隔通信ゲーム、いわゆるプレイバイメール (PBM) により原型があるのでしょうが、コンピュータゲームがゲームの歴史上でも特異と思われるほど爆発的に発展・普及し、TRPG にせよ PBM にせよ、比較するのが困難なくらい規模に差がでましたから、ゲームを作るクリエーターはともかく、プレイヤーにこうした部分の伝統や文化の引継ぎが、あまりなされていない印象もあります (色濃く反映している部分も少なく有りませんが)。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」 の登場と、爆発的ヒット
さて、元々はアメリカなどの大学生がやり始めたスタイルのゲームが TRPG ですが、その後J・R・R・トールキン の小説 「指輪物語」 を モチーフ とした 「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(Dungeons & Dragons/ D&D/ 1974年) が発売されると、ファンタジー の要素を持ち、魅力的なキャラクター 設定 が可能なこともあり大ヒット。
日本ではホビージャパンが熱心に紹介し、おたく と呼ばれるような人たちに多くの ファン が生まれました。 当初は英語版のみでしたが、後に日本語訳版も発売され、1985年あたりから90年代にかけて、多くの TRPG をプレイするゲームサークルが作られ、広まっていました。
剣と魔法、勇者と冒険 |
その後、そのルールと 世界観 から派生した 「ロードス島戦記」(1986年/ グループ SNE/ コンプティーク) の大ヒットなどの影響もあり (「ハイエルフ」 の少女、ディードリットの直接的な人気もありますが w)、日本では発祥の地アメリカとはまったく違うかなり独自な展開を遂げてゆきます。
また特定のゲームタイトルができると、そのルールに則った 攻略 研究なども盛んになりますが、日本の場合には、プレイ記録を面白くまとめた 「リプレイ」 が、有名作家や知る人ぞ知る 趣味人 を巻き込んで発表され (「ロードス島戦記」 も、元々は 「D&D」 の紹介やリプレイ)、これを基にした読み物や創作物も次々に登場。 パソコン通信 が徐々に浸透している時代だったこともあり、一般のファンの間にも、SS のような形で作品が多数作られるようになりました。
1980年代中ごろには一人で遊べる 「ゲームブック」 のブームなどもあり、これらが後の、あるいは同時進行していたコンピュータゲームに与えた影響は大変強く圧倒的で、無視できないものがあります。
プレイ日記 「リプレイ」 で、創作活動が活発に
「テーブルトークRPG」 で何といっても楽しいのは、ゲーム本来の謎解きや冒険もさることながら、自分を含め関わるプレイヤーがみな 「別人格」 となり、刺激的な世界観や人間関係をわいわい騒ぎながら作り上げて行く過程の喜びでしょうか。
友人が作ったキャラに萌えたり、そのキャラを 同人 の仲間内で回している 肉筆回覧誌 (交換ノートのような肉筆の回覧用の 同人誌) で イラスト にしたり、物語を補完したり…。 時には友人の作った 「キャラ」 に 「裏切られ」 て途方にくれたり…。 小憎らしいほど魅力的なキャラ造形をする友人プレイヤーに、「そうくるか!」 と知的な興奮を覚えたり、ダイスによる偶然があるにせよ、絶妙のタイミングで登場したりのストーリーの起伏も、他の ゲーム にはない楽しみです。
はたから見てると 「確かに可愛いエルフの美少女キャラだけど、演じているのは自分と同じ、男のキモヲタじゃん!」 なんて云われそうです
マンガ やゲーム、アニメ などの作者やそれを志す人、あるいは同人関係の人間などは、自分のキャラクターを作って性格を設定し、それに沿った物語などを作って楽しめる人が多いですし、気心の知れた友人らとお菓子などをつまみながらやる 「テーブルトークRPG」 はとても楽しく、また創作的な刺激も受けるものでした。
ネトゲの世界でも、自分が操作するキャラを別の人のキャラと 結婚 させたり、姉妹や兄弟という設定にしたり、キーボードで打ち込むセリフをそれに沿ったものにしたりの 「なりきり」 が人気ですが (ネトゲは好きだけど、こういうのは キモい …って人もかなりいます
なお複数のプレイを物語の連続性や舞台、世界観などを継承しながらずっと続けることは、「キャンペーン」 と呼ばれます。 1980年代に高校生や大学生で、D&D にハマッてその後 20年以上キャンペーンを繰り広げているなんて熱心なファンは、リアル社会では会社や役所の管理職なんかをやっている年代になりますが、その 「どっから見ても完全に恰幅の良いオッサン」 が、長年愛用している 中二病 設定のキャラを嬉々として演じている様は、はたから見ていると微笑ましくもあり、結構面白いものですw
ちなみに 筆者 も、そうしたキャラが3人ばかりいます。 全部うら若い女性なんですが、筆者が生きているうちに、しかるべき信頼できるキャラに、嫁がせたいものです。
「電源不要」 の代名詞に
なお、時代を経てコンピュータゲームのRPGの人気が高まると、それと区別するためにこうした 「非コンピュータゲーム」 のことを 電源不要 などと呼ぶようになりました。 1990年代中頃から、「トレーディングカードゲーム」 が人気になりますが、それまではこの TRPG が、「非電源」 ゲームの代名詞のようになっていました。