同人用語の基礎知識

SS/ ショートストーリー

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できの良いショートショートストーリーから単なる妄想まで… 「SS」

 「SS」 とは、「ショートストーリー」(Short Story) もしくは 「小説のように文字で書いたり読んだりする創作要素のある短い同人作品全般」 の意味です。 多くの場合、アニメマンガライトノベルゲーム などの 元ネタ がある 二次創作 で、原作の 設定 などを使って パロディ要素 を加えたり カップリング などを加えた内容で、「原作を補足、補完するような物語」、ファン による 外伝 のようなものとなっています。

 「ショートストーリー」 という言葉自体は、元々は小説などの世界で 「ショートショート」 と呼ばれる カテゴリ があり、これが転用されるような感じで使われていました。 しかし分量・内容的に 「ショートショート」 の範疇に入らない作品も多いこと、後に 「SS」 と略されたこともあり、意味も 拡散。 「サイドストーリー」「サブストーリー」「セカンドストーリー」 といった意味を持ったり、「小説 = Syou Setsu = SS」 の意味で使っている人や、本来のショートショートの意味で使っている人もいますが、同人 の世界で指すものはだいたい同じです。

 二次創作ではない オリジナル のものもあり、合わせて 「文字もの」 と呼ぶこともあります。 またこうした作品を創る人は、絵描き との対比として文章書きとか 字書き と呼ぶこともあります。 ちなみに二次創作関係は英語では 「Fan Fiction Novel」(FFN/ ファンフィクションノベル) と呼び、この略語がそのまま使われるケースもあります。

アメリカの雑誌に掲載された超短編小説に名称のルーツが…

 「ショートショート」 とは、本来は 「ショートショートストーリー」 のことです。 1920年代にアメリカの雑誌、「COSMOPOLITAN」 に掲載されていた非常に短い読み物、一話読みきり完結の超短編小説を指す言葉でした。 小説の長さ (文字数) による分類は様々あり、長編小説、中編小説、短編小説などがありますが (これといった厳密な基準はありません)、ショートショートは一般的に原稿用紙にしてわずか数枚程度の非常に短い読み物 (「掌編小説」 などとも) となります。

 このスタイルの小説は、「登場人物の心理描写をじっくり重ねて物語に引き込む」 なんてストーリーの描き方が原則できないので、いかに短い間に 読者 をこっちの世界に引き込むかが重要で、余計な要素や物語に必要のない描写は大胆に切り捨て、しばしば 「独創的なアイデア」「魅力的で斬新な設定や シチュエーション」 を提示し、猛スピードでぐいぐい展開して、最後に 「どんでん返しの結末」 で読者をあっと言わせるような内容のものが多いものです。 ここらは短編小説も似た傾向が当然ありますが、マンガなどでの 「四コママンガ」「1コママンガ」 にも近い表現とも云えます。

 こうした傾向から、「SF」(サイエンスフィクション) やナンセンスコメディ、「ちょっと怖い話」 のようなホラー、謎解きを楽しむミステリーに向いている表現方法となっていて、多くの独創的な作品がプロ作家だけでなく、プロ予備軍や文学好きな人の趣味として書かれて来ました。 ただし中・長編を書く気力や 根性 のない人が、自虐的 に 「一発ネタ」 として扱う場合もあります。

ガリ版印刷と、パソコン通信の時代

 これが日本の同人の世界で一大勢力となる訳ですが、初期の コミケ などが 「SF」 と無縁ではなかったこと (コミケ発祥の母体のひとつが 日本SF大会 (主にディーラーズルーム)、海外の良質なSF短編が多数紹介されたり、日本のSF作家にショートショートの達人が多かった点が大きく影響していました。

 こうしたファン小説やオリジナルのショートショートの発表は、1939年から始まったアメリカの世界SF大会 (ワールドコン/ The World Science Fiction Convention) でも存在していましたから、その影響もあったのでしょう (ワールドコンでの 「ショートショート」 は、英単語で 7,500語未満の短編となっています)。

 さらに初期の同人の世界では批評や研究系がメインで文章による 同人誌 が多かったこと、当時は素人が気軽にマンガ本などを印刷する方法がほとんどなかったこともあり、「初期の二次創作=ショートショート」 のような感じもありました。 国内外のSF小説やファンタジー作品のもじり、逆シチュエーション ものや、アニメでは 「宇宙戦艦ヤマト」 や 「機動戦士ガンダム」 あたりのギャグパロ小説や軽い ノリ の仮想戦記がおなじみです。

女性による少女漫画モチーフの 「SS」 が台頭

 同じ頃、若い女性らの手による 「SS」 も台頭。 多くは少女漫画の キャラクター を借りた 「サブストーリー」「サイドストーリー」 のような体裁で、ちょっとした挿絵を描く場合もあったものの、配布 (他の FC同人サークル との交換など) を前提とした 「同人誌」 の場合、図案の印刷方法がほとんどありませんでしたから、やっぱり読み物系がその多くを占めていました。 当時は 「パロディ小説」「パロ小説」、あるいは 「ファン小説」「ファンストーリー」 などとも呼ばれていましたが、「SS」 という名称が後に ネット を中心に広まったのは、むしろこうした女性同人ファンの世界からでしょう。

 その後1980年代になり パソコン通信 の時代が始まりますが、パソ通も基本は文章 (テキスト) が中心で、ノベルや創作系のシグやフォーラムでは、さかんにショートショート (SS) が書かれ、また発表されるようになりました。

 情報やデータをテキストベースでやり取りする 「パソ通」 には 「物書き」 が非常に多く集まっていましたし (後には、ワープロ専用機などでもパソ通ができた)、新しい作品だけでなく、作品のスタイルや ジャンル を作るような動きも盛んで、例えば 「ライトノベル」 という名称とジャンルを作ったのが NiftY-Serve の会議室だったように (それ以前は、作品によっては 「ジュブナイル」 などと呼ばれていた)、様々な表現方法が模索され開発されていた時期でもあります。

 なお 「SS」 とは直接関係がありませんが、この頃の特筆すべき出来事としては、テーブルトークRPG の人気と、そのプレイ内容を物語としたプレイ日記 「リプレイ」 の登場などがあります。 これは ファンタジー やライトノベルはもとより、小説や オタク 的な物書きの世界に、たいへん大きな影響を与え続けることになります。

「ショートショート」 と 「ショートストーリー」 と 「サブストーリー」

 この頃から、後の 「ドリーム小説」「夢小説」「名前変換小説」 や、「妄想」「架空対談」(対話風フリートーク) なども盛り上がりを見せますが、超短編小説を書いたり読んだりのファン層が広がるとともに、「SS」 の略称としての意味も拡散、人によっては 「おたく、もしくは腐女子っぽい妄想物語」 を示す記号のような扱いにもなってきました。

 当時こうした言葉をことさらに略する必要があったのは、掲示板 などの レス に、例えば 【SS】 とか 「SS注意」 といった見出しをつけることが普及していたからで (SSに興味のない人に対する注意喚起)、「一話完結でもない」(キャラや状況の説明は、「二次創作」 の場合、原作・元ネタがやります)、場合によっては超短編や短編の範疇に入らない長さになる、さらに 「オチ らしいオチがない」 などのこれらの文章を、「ショートショート」 と称するのはおかしいなどもあり、「ショートストーリー」 とか、あるいは単に 「もうSSが正式名称」(それぞれがショートなりサブなりサイドなり自分なりの意味をつけてくれ) みたいな扱いをされるようにもなってきました。

 インターネット の時代となり、オンライン専門 で作品を発表する作家が多数登場したり、それらの作品を集積するポータルサイトなども出現。 「SS」 はもっとも古くて新しい、様々な 概念 を含んだ同人 界隈 で使われる人気のジャンルとなっています。

 とりわけ 「セーラームーン」「新世紀エヴァンゲリオン」 から 「葉鍵」(「leaf,key掲示板」 に由来) 系の美少女ゲームの 「SS」 では、長らく女性が多かった 「SS」 の世界に男性作家、ファンが多数流入し、初期の同人系のみならずインターネット全体をも席巻するほどの盛り上がりを見せていました。 とくにパソ通末期からインターネット初期 (1996年〜) の 「エヴァ」 系はすごかったですね…友人が何人そっちの世界に逝ったことか

「SS」 以前に、ある種の属性の人は小説モドキを必ず書くものだったり…

 そもそもの前提として、同人に興味を持ったり、漫画家や小説家に憧れを持つような人は、小学生高学年や中学生くらいになると、大学ノートを買ってきて小説モドキやシナリオモドキをせっせと書き始めるものです。 昔はそれを発表する方法や場がなかったのですが、コミケが誕生しネットが普及すると、誰でもが自分の書いた読み物を発表することができるようになります。 思えばすごい時代になったものです。

 まぁ同じような道を歩いている 筆者 からすると、自分の小中学生の頃の小説モドキなどは即死効果のある 黒歴史 そのものなので (世界観 とか オリキャラ とか 邪気眼 な設定まるだしです…)、いきなりそれをネットなどで発表するのは勇気があるな…って感じもしますが… (^-^;)。 でもまぁ、今書いている文章もたいしたもんじゃないのでw、勇気を出して 「えいやっ」 と世に問うた人の勝ちなのかも知れませんね。

 他人からの批評にめげて筆を折るようなことになると残念ですが、建設的な批評に対して謙虚な姿勢で取り組む若いSS作家さんは、同人・商業 問わず、きっと将来素晴らしい作品を書いてくれるに違いないと思います。 読み手としても、縁あって他人の文章を読む機会を得たわけですし、そういった視線で 「褒めて伸ばす」 ような付き合い方ができると素敵ですね。

そのほかの 「SS」

 略語としての 「SS」 は、他にもいくつかあります。 「同人」 界隈でよく使われるものでは、この他に 「スクリーンショット」(スクショ/ パソコンのデスクトップ画面をスクリーンキャプチャすること)、「SS級」(A級の上のS級のさらに上、最上のランクのこと) の略だったり、耽美系でナチスの親衛隊 「Schutzstaffel」(シュッツ・シュタッフェル) の略号などがあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2001年6月28日)
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