同人用語の基礎知識

パロディ/ Parody

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ファンだから…世界観を借りて作れるから…売れるから…パロディ本

 「パロディ」(Parody) とは、アニメマンガゲーム、小説や ラノベ など既存の キャラクター や物語・設定世界観 を借りて、自分なりの別の作品を作り上げることです。

パロディっていったいなんぞ?

 もともとはこれらの特徴に加え、風刺、批判、あるいは笑いの要素や リスペクト (尊敬や経緯) を含んだ作品をそう呼んでいました。 「パロ」 あるいは 「版権もの」 とも呼びます。 「パロディ」 にすることは、「パロる」「パロッた」 などと呼びます。 また他の作品や作家の特徴や世界観を真似たり下敷きとして作る作品そのものは、「パスティーシュ」(Pastiche) と呼びます。

 略語の 「パロ」 は接尾語として使われるケースも多く、アニメのパロディなら 「アニパロ」、ゲームなら 「ゲーパロ」、18禁 な内容を含むエッチなものは 「エロパロ」、エッチな要素のない 健全 なものは 「健全パロ」、さらに実在の人物や歴史的事実を扱った作品もなども広く 「政界パロディ」「歴史パロ」 などと呼ぶ場合もあります。

本来は 「風刺のための模倣」、しかしダブルパロディなど、独特な使い方も

 現状、同人イベント などで人気があるのは、こうした 元ネタ (原著作物) ありの 「パロディ本」 と呼ばれる 同人誌 で、元ネタがなく、全てを1から自分で作った作品は オリジナル と呼びます。 またパロディ同人誌に対して元ネタとなった作品を 「オリジナル」 と呼ぶ場合もあります。

 本来の言葉で云えば、「パロディ」 と 「パスティーシュ」、あるいは 「オマージュ」 やら 「リスペクト」 やらとはそれぞれ定義が重なりつつも分ける必要があるのですが、言葉として一般慣用句化したのは 「パロディ」 が最初でしたので、日本の 同人 の世界では、パロディ (「もじり」 などとも呼びますが、これも本来は別の意味) を便利な言葉として独自に拡大 解釈 して使っているケースが多いですね。 原語本来の意味は風刺や笑いのある作品こそが 「パロディ」 ですが、ほぼ 二次創作、元ネタあり作品 全般を指す言葉となっているといってよいでしょう。 さらに時代を下ると ファンアート (ファンア/ FA) といった呼び方も増えてきました。

 なお、ある作品の 「パロディ」 と別のある作品の 「パロディ」 とを掛け合わせて行う、「複合パロディ」 のことは、ダブルパロディ (Wパロ) と呼びます。

著作権や法的な取り扱いとパロディ

 元ネタ (原著作物) となったアニメやマンガ、ゲームなどには原作者や版権所有者がいて、作品に対する権利は 著作権 で守られています。 著作権侵害は親告罪であるため、原作者が訴え出ない限り罪には問われませんが、違法性がないとまでは云えず、著作者黙認によるグレーゾーンの存在となっています。 過去にフランスやアメリカ、日本などでも、いわゆる 「パロディ裁判」 とも呼べる裁判があり、おおむねパロディ側に好意的な判断が下されています。

 日本の著作権法には 「パロディ」 の項目がないため、1971年のマッド・アマノ氏のフォトモンタージュ (コラ) をめぐる裁判では、「引用権」 を焦点に争われ、訴え出た写真家の白川義員氏の主張も取り入れられ和解が成立しましたが、こちらでも、おおむねパロディ表現に好意的な判断となっています。

 ただしこれらは本来的な意味での 「パロディ」 であって、いわゆる同人の世界でやっているような、既存アニメキャラを使った単なるエロマンガが、「パロディ」 の要件を満たし、表現として尊重されるかと云えば、ほとんどその可能性は少ないとみるべき状況でしょう (通常のギャグパロディは、パロディの判断がされる可能性が高いとは思いますが)。

 なお最大の同人イベントとなっている コミケ でも、初期の頃は批評や純粋なファンジンがメインで、後に主流になる 「二次創作」 などはほとんどありませんでした (影で隠れて個人的にやり取りする人はいたかも知れませんが)。 初期の頃は原則として、サークルスペース に並べられるのは、正当な引用が認められる内容を除けば原作者公認の FC の作品のみ…なんて時期、ケースもあったようです。

同人における 「パロディ」 への、権利者の取り組み

 「コミケ」 など 「同人誌即売会」 の人気や規模の拡大、同人の盛り上がりを見て、一定の条件をつけて自作品の二次創作を認める発表を行っている美少女ゲームのソフトハウスや、自社が版権を持つアニメなどの作品の二次創作を認めようと話し合っているアニメ制作プロや、プロジェクトチームなどもあります。

 同人の世界は無視できないほど大きくなっていますし、そこに集う人々は、アニメマンガ、ゲームのコアなユーザーと完全に同じものです。 このまま行けば、いずれ深刻な衝突は避けられないと思いますが、関わる人全てが知恵を出し合って、みんなにメリットのある着地点を見つけられたら良いですね。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 1999年11月20日)
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