偉大なる先達に感謝と尊敬を… 「リスペクト」
「リスペクト」(Respect) とは、尊敬や敬意、賞賛のこと、あるいは価値や値打ち、意義や志を高く評価して心服したり信奉すること、強い影響を受けたことなどを複合的に表す言葉です。 「彼をリスペクトしています」 といった使い方の他、人名や作品名などの固有名詞に接尾してしてそれへの敬意や献呈を表す場合もあります。
例えば 「〇〇リスペクト」 と云えば、「素晴らしい〇〇に触発・影響を受けて作られたもの」「〇〇へこの作品を捧げます」 といった意味となります。 名詞や形容動詞などにつなげることもでき、例えば 「マジ リスペクト」 なら 「マジ (本気) で尊敬している」 との意味になります。
対義語は一般に 「ディスリスペクト」(Disrespect) で、否定すること、貶めることという意味となり、日本では 2007年以降からは 「ディスる」 という短縮された動詞としてしばしば使われます。 意味が逆なだけで使い方はリスペクトと同じですが、単なる反意語・対の 概念 ではない微妙な ニュアンス (愛憎的な) が、人によっては含まれる言い回しかも知れません。
Respect 自体は単なる英語ですが、これが日本でカタカナ英語として現在のように頻繁に使われるようになったのは比較的最近で、1980年代から1990年代にかけての頃でしょうか。 もちろん普通の英語表現なのでそれ以前にも似たような使われ方はしているわけですが、芸術やスポーツの世界で先達に対する後進の姿勢を表現する中で、この頃からアーティストやアスリートのインタビューやメディア報道などで盛んに使われるようになったとの印象があります。
類語は様々あれど、それぞれに微妙に使い方や意味が異なる場合も
似た言葉に ファン やシンパ (シンパサイザー/ Sympathizer)、信奉者などがあり、ツイッター など SNS の機能名 (フォロー) から派生した言葉としてもおなじみの フォロワー といった表現もあります。 これらに比べてリスペクトの場合は、単に 「好きです」「尊敬しています」 だけではなく、「自分が尊敬しているのはもちろん、自分以外の人間からも尊重されるべき優れた人・作品だ」「誰もが大切に思うべきものだ」「もっと評価されるべきものだ」 といった、普遍的な価値があるとの強いメッセージやニュアンスが含まれがちとなる点が特徴でしょう。
「リスペクト」 と 「オマージュ」 と 「パロディ」 と 「パクリ」
なおほとんど同じ意味・使い方をする他の言い回しに 「オマージュ」(Hommage) があります。 ただしこちらの場合は、もっぱら創作物において尊敬する既存作品の描写や 設定・セリフなどを引用したり、似せる・匂わせ るなどなど、影響を受けたことを明示するようなケースでのみ使われることが多い言い回しでしょう。 これは言葉としては パロディ にも近い使われ方で、意味や定義をそれぞれがどう把握して使っているかはともかく、おおむねリスペクトとはいくらかニュアンスが異なる言葉として使い分けがされているかもしれません。
なおリスペクトにせよオマージュにせよ、対象に敬意を表す意味が必ずあるべきですが、それが感じられない場合は、単なるパクリ・模倣と呼ばれたりします。 場合によってはパクリや模倣をリスペクトやオマージュと言い繕って免罪されようとしているとしか思えないケースもあり、使う人の姿勢によっては胡散臭い言い回しになってしまう場合もあります。 「リスペクトのないオマージュは単なるパクリ」 という訳です。