作品における可憐な華… 「ヒロイン」
「ヒロイン」(Heroine) とは、物語を描いた エンタメ や コンテンツ において、善良かつ一途で健気、好ましい性格や正義感・倫理観・勇気を持つ、重要な女性の キャラクター・登場人物のことです。 対の 概念 は主に男性キャラクターを指すことが多い 「ヒーロー」(Hero) で、似た言葉に 「マドンナ」(淑女、美女といった意味) があります。
作品における立場は 主人公 かそれに準じるもので、物語の核心部分に密接に関わるか、作品のメッセージそのものの体現者として表現されることが多いでしょう。 作品内に登場するヒロインの数に定義はなく、複数ヒロインものや群像劇では大勢のヒロインが登場することもありますし、単に容姿に優れた女性キャラ、美女・美少女は全てヒロインだとの広い意味で捉えられることもあります。 とはいえ中心となるキャラはおおむね1人か2人程度に絞られることが多くなるでしょう。
なお語源となったギリシャ神話におけるヒロインは超人的で気高く正義の側に立ち、ヒーローの手引きや人助けなど様々な善行を行う半裸の若い女性の姿をしています。 現在の創作物におけるヒロインも、一般に容姿に優れた若い女性や少女が多い傾向があります。 しかし魔法や 呪い によって老婆などに姿を変えられていたり、コンテンツの多様性が広がる中、年齢や容姿にこだわらないヒロイン像も近年増えています。
アニメ や マンガ、ゲーム・ドラマといったコンテンツの 商業的 な観点で云えば重要なアイキャッチ要素でもあり、しばしばその時が旬の人気女優や売り出し中の若手女優・アイドル・声優などが役者として起用されます。 また視聴者の 感情移入 や共感、憧れ、願望を担う存在としてクローズアップされ、男性主人公より目立つ 脇役 のヒロインも珍しくありません。 とりわけ美少女ゲームやエロゲーなどは、ヒロインの視覚的・性格的な造形こそが最大の売り物ですから、作品そのものの評価やビジネスとしての成功を左右しうるものとなります。
ヒーローとヒロインとマドンナ
対概念の 「ヒーロー」 本来の意味は英雄や勇士であり、男性だけでなく女性も指して使われる言葉です。 しかししばしばヒーローは男性を指し、女性はヒロインと呼んで、「ヒーローとヒロイン」 といった組み合わせで認識されることが多いかも知れません。
一方、創作物の世界で 「ヒーローもの」 と云うと原義的には 「英雄譚」 といった意味になるのでしょうが、日本の場合、特撮などの変身ヒーローものの印象があまりに強く、慣用句として 「時代のヒーロー」 といった使い方はしても、コンテンツの ジャンル としての 認知 には乏しい印象があります。 すなわち 「ヒーローはヒーロー、英雄は英雄で、別物だ」 という考え方です。
これに比べるとヒロインは、はるかに言葉としての汎用性が広いものとも云えます。 特撮のヒロインものはもちろん、媒体やジャンルを問わず、あらゆる創作物に登場する主役もしくは準主役の重要女性キャラは全てヒロインと呼ばれます。 これは映画産業などで女性の主役や主演女優をヒロインと呼ぶことが定着していたからだと思いますが、マドンナという言葉が日本では徐々に使われなくなり、ヒロインという言葉にあらゆる概念が統一されたような感もあります。
ヒロインの派生語いろいろ
ヒロインに関する派生語は一般に使われるものから おたく用語・ネットスラング まで様々なものがあります。 代表的なものとしては、主役や準主役が複数いる場合の 「ダブルヒロイン」「トリプルヒロイン」 あるいは 「メインヒロイン」(正ヒロイン)「サブヒロイン」(副ヒロイン) といった云い方でしょう。
またヒロインが物語中で 不幸 に遭遇すること、とりわけ恋人との死別などに遭う場合は 「悲劇のヒロイン」 と呼びますし、ラブコメなどで複数のヒロインと主人公との恋愛模様が描かれる作品では、メインヒロインに対する 「ライバルヒロイン」、めでたく主人公と結ばれるヒロインは 「勝ちヒロイン」、結ばれなかった方は 「負けヒロイン」 と呼んだりします。
特撮で変身するなら 「変身ヒロイン」、戦隊ものなら 「戦隊ヒロイン」 あるいは戦隊の登場人物一人一人にイメージカラーが設定されていることから 「カラーヒロイン」 といった云い方もされます。 正義のために戦うヒロインは 「バトルヒロイン」 ですし、正義ではなく悪のヒロイン、あるいは悪の組織の女幹部なら 「ダークヒロイン」 です。
さらに おたく や 腐女子 の世界特有の言い回しとしては、男性だけれど女性的な見た目 (例えば 男の娘) やステレオタイプな女性的性格・役回り、あるいは立場 (受け) を持つ 女子力? の高い男性キャラを親しみや揶揄の意味でヒロインと呼んだりもします。 ヒロインが期待外れだった場合は 「ヒロイン不在」 や 「ヒロイン詐欺」、性格がちょろいヒロインは 「ちょろイン」、男性キャラに鉄拳制裁するなら 「暴力ヒロイン」 と呼ぶこともあります。
このあたりはジャンルや カテゴリ ごと、作品ごとに様々な言葉がありますが、よほど特殊なものでない限り、「〇〇ヒロイン」 = 「〇〇な女性キャラ」 と理解できますから、初見の用語でもあまり迷うことはないでしょう。
ヒロインを巡るあれこれ
ヒーローやヒロインが苦境・ピンチに立たされ苦しむ状態、あるいは拷問を受けたりそのまま命を奪われるといった過酷な シチュエーション に興奮し オナニー をしてしまう性的嗜好を持つ人は 「リョナ」(猟奇的なオナニーの略) と呼びます。 これが転じてヒーロー・ヒロインのそのようなシーンやジャンルをリョナと呼ぶこともあります。 これはピンチを接尾した 「ヒーローピンチ」 や 「ヒロインピンチ」(略語で 「ヒロピン」) とおおむね同じような意味となり、ヒーロー・ヒロインに対する シチュ萌え となります。
ちなみにヒロインが非処女、あるいは過去に男性と付き合った経験を持つ場合には、ネガティブ な意味で悪しざまに 中古 と呼ばれることもあります。 これはヒロインに対する、ほぼ最上級の罵倒表現のひとつとなっています。